その先へ

GM(Lain) 2012.12.06 [01:55]

「だっ・・・・・・大丈夫なのこれ」

 ひとまずの危険が去ったあと、倒れたまま動かないアシュレイを、キャロラインはまず案じた。

 怪我をしているわけではない。
 どこか打った様子もない。

 だから大丈夫だろうと理屈では解っていても、ひとが倒れている、というのはやはり気になる図のようだ。

「ベンもこのままじゃちょっと、」

 急いで山を降りるのは無理かなあ、と諦め顔だ。

 太陽は中天に差しかかろうとしている――市のはじまりに荷を間に合わせるためには、今日の夕方にはもう本街道を進んでいなくてはならない。
 ラバに怪我があっては大急ぎで山を降りることなどおぼつかない。
 気を失った冒険者を抱えていても同様だ。

 だからウードの奇跡は、彼女を殊の外驚かせ、また喜ばせた。

「お兄さん、あれだよね。
 頼られるタイプだよね、周りから」

※ ※ ※

 一行は半ば走るようにして山を下った。

 休憩を取ることもなく、ただひたすらに歩く。
 やがて草地に潅木が見え始め、木々が徐々にその高さを増していき、人の背丈を超えるものも現れてくる。

 草原から森へと周囲の景色が移り変わる。
 一行を悩ませた風は頭上、梢の先へと去っていった。

 いかな鋭い視力を持つ巨鳥の目でも、樹冠の下を上空から見通せるわけではない。
 そして重なり合う木々の枝は、飛び込んでくる巨鳥に対して充分な障害となるだろう。

 ここまで下れば上空からの脅威は去ったものと考えてよさそうだ。

 巨鳥どもを撃退してから一刻半。

 眼下に、石畳を敷き詰められた街道が見えた。
 おそらく崩落の報は街道のこちら側、ブラードにももう届いていることだろう。

 人通りはない――悪天をついて側道を抜けようという無謀な輩は、どうやら一行だけだったようだ。

「着いたーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 キャロラインが喜びを爆発させる。

 あんたたちよく頑張ったねとラバを労い、

「みんなのおかげだよありがとーーーーーー!」

 冒険者ひとりひとりを抱きしめて礼を言いながら背中を叩いた。

※ ※ ※

 そこからブラードまでの道のりについては、特に語るべきこともない。

 多少の雨が降ろうと森の中であるし、街道沿いには旅人が泊まる宿もある。
 少なくとも、吹き晒しの山の中で寒さに震えるような思いはせずに済む。

 無論、宿に泊まるならば、宿の者には大いに驚かれることだろうし、話をせがまれもするだろう。
 だがそれらは面倒ではあっても、命の危険のあることではない。

 ブラードに着く直前、キャロラインが言った。

「これで鑑札手に入れられそうだわ」

 聞けば彼女は、商人として独立するのに必要な鑑札を得るための資金を貯めていたのだという。

「今までは雇われの運び屋だったんだけどさ」

 自分で仕入れて自分で売って、ができるようになるんだ。

「もう半年かそこらはかかると思ってたんだけどね。
 割増分まで合わせれば手が届くのよ」

 だからありがとね、と彼女はもう一度、冒険者たちに礼を言った。

※ ※ ※

 ブラードには市が始まる前日、市門が閉じられるぎりぎりの時間に到着した。
 商談相手の泊まる宿へ向かい、荷物を引き渡し、依頼人から預かった証文を両替商へ持ち込んで金貨に換える。

「180枚だってさあ」

 なかなか見ないよねえ、と言いながらきっちり半分、90枚を数えて冒険者たちに渡す。

「これ、約束の報酬。
 お陰様で、がっつり稼がせて貰えたわ」

 あとは好きに分けてくれ、というところだろう。

「そのうちオランの方にも行くかもだから――」

 またよろしくね。

 手を振り、傷の癒えたラバたちを連れ、彼女は雑踏の中へ去っていった。
 あっさりとした別れだった。

※ ※ ※

 冒険者たちがその後もブラードに逗留するならば、いくつかの噂を耳にすることがあるかもしれない。

 街道の復旧が予定よりもやや遅れそうであること。
 作業の遅れは妖魔どもが現れたことに関係しているようだということ。
 冒険者たちの山狩りによって、妖魔が撃退されたこと。

 どのあたりまでを冒険者たちが聞いたのかは、定かでない。

 ひょっとしたらあのとき見逃した妖魔どもが、という疑念を誰かが抱くことがあったとしても、それが事実であるか否か、正しく答えてくれるものはない。

 確かなことは、ブラードでの再会を約した仲間が、再会の期日までに現れなかったということだけだ。

 だが、お互いに無事であれば、いずれ会うことはできるだろう。
 それがブラードでのことになるのか、オランでのことになるのかは、ここでは語らずにおくことにしよう。

------------------------------------------
■GMから

 おつかれさまでした!
 先日の宣言のとおり、護衛組はボーナスを得てシナリオを終了であります。

 本編へのGMの書き込みは基本的にこれで〆となりますが、いただいたレスの内容によっては更にレスを重ねることがあるかもしれません。


■報酬と経験点の配布について

 以下のとおり報酬および経験点を配布いたします。

 ・報酬:計4500ガメル
   護衛組の3人の中での分配は任意とします。
   宿泊費・食料費を除く所要経費(購入した装備の代金)については冒険者側の負担としてください。

 ・経験点:各1000点
   スワローテイル所属のエレアノール・ウードには100点が加算されます。
   1ゾロ分は各自自己申告で足しておいてください。


■解放について

 以下の手続が終了し次第、護衛組の参加PCを順次解放いたします。

 ・最低1レスを本編に入れること
 ・自PCが得る報酬および収支を確定させること
 ・経験点および報酬を受領した旨を本編またはPL相談所に記載すること
 ・GMに対して10段階評価によるセッションの評価を行い、これを本編またはPL相談所に記載すること


 以上、よろしくおねがいしまーす!

 ネタバレとか感想は明日以降ぼちぼちと書き込む予定でおりますですー。