救出

GM(Lain) 2012.10.14 [21:17]

> 「よく無事で・・・
>  子供も居るのですか?」

「はい――パウル、パウル、安心しろ、もう大丈夫だ」

 幾分か力の戻った声で馬車の中にそう声をかける。

 声に答えるように、ライナルト似の子供が姿を見せた。
 憔悴しきった様子ではあるが、生命に別条のありそうな様子ではない。
 ただ、片方の腕がひどく腫れ、少々動かすだけでも痛みに顔をしかめて声を漏らしている。

「パウルと申します。
 どなたか存じませんが、ありがとうございます」

 その言葉からは、このような状況でも気丈に振る舞おうとしている様子が窺えた。

※ ※ ※

 怪我を負ったライナルトとパウルのふたりを馬車から引き出すには、引き出す側にも引き出される側にも相応の苦労が必要だった。
 だが、急斜面を怪我人が独力で登ることに較べれば、どうという話ではない。
 何よりも、今少し我慢すれば助かるのだという期待が、親子の心を支えていた。

 そして、オートの奇跡とラキアードの手当がふたりを癒す。
 折れた骨までを再生せしめ、支障なく動かすには至らない。
 だが、怪我のこれ以上の悪化を防ぎ、痛みを軽減するには十二分だと言えるだろう。

 パウルは畏敬の目で冒険者たちを見上げ、ライナルトはそれこそ拝まんばかりの様子で繰り返し感謝の言葉を述べた。

 やがて準備が完了し、まずパウルが、そしてライナルトが、荷馬の力を借りて斜面を引き上げられる。

> 「ゆっくり引っ張るんだよ。いいね?」
> 「それ、引っ張れ!」

 エリオの指示が伝わったものだろう、荷馬は一歩ずつ確かめるように足を踏み出す。
 途中の障害物を避け、引き上げられる怪我人の負担を軽くするために、エリオは幾度か馬を止めねばならなかった。
 それでも四半刻ほどで救出作業は無事終わる。
 崩落現場に着いてからの時間で考えれば半刻ほどだろうか。

 引き上げられた親子も、救出にあたったオートとラキアードも、泥にまみれて汚れてはいる。
 だが、命を失いかねない状況にあったことを考えれば、格段にマシになった筈だ――少なくともいまは全員が安定した街道の上にいて、1刻の時間をかければ屋根のある場所へ行くことができるのだから。

※ ※ ※

 荷馬車に毛布を敷き、親子を呼べば、彼らはエリオの気遣いに感謝しながら勧められるままに荷台に乗る。

 ライナルトはさすがに横になる気にはなれないようだが、パウルは横になるとほどなく寝入ってしまった。
 父が言うには、昨夜はほとんど一睡もできなかったのだそうだから、無理もないことだろうと思われた。

「それでその――シュテファンは――御者は、見当たりませんでしたか」

 半ば以上諦めた表情でそう問い、冒険者たちの返答を聞くとああやはり、と肩を落とす。

「――気の毒なことをしました」

 無論、雨も土砂崩れも彼に責があるわけではなく、彼らが生き残り御者が死んだのは純然たる運によるものだろう。
 だが、そうであってもやはり、己に関わりのある者の突然の死というのは遣り切れないものだ。

 ライナルトは、荷台の片側に寄せられた荷物を見て、なんとはなしに冒険者たちの本来の役回りを察したらしい。

「皆さんにもお役目がおありでしょうに、お手数をかけて申し訳ありません」

 改めて済まなさそうに頭を下げた。

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■GMから

 救出完了でありまーす!
 エリオ君用意いい。ファインプレーでありました。

>みなさま

 とりあえずそのようなわけで、無事全員救出完了であります。
 エリオ君から戻ってはどうかと提案が出ておりますが、今後どうするか決めてやってください。