まどろみの間に

リモーネ(くらりふぇ) 2012.09.28 [02:39]

 何時からだろう。
 私は耳障りな雨音を胡乱な視線と共に聞き流しながらで、頬杖をついて朝早くから時間を怠惰に食いつぶしていた。
 この宿に辿り着いたのは一昨日の夜。一泊して翌日の昼、オランに戻ろうと外に出た時、嗅ぎ慣れた雨 の気配を察して宿へと踵を返した。
 案の定、夕方には大雨だ。強行していたなら今頃私は屋根のない岐路で濡れ鼠。
 故に判断は正しいと分かっていても、無駄な金を使ってテンションは右肩下がりだ。元々少なかった仕事の実入りが、これで完全に露と消えた。

「ハァ......」

 溜め息の一つも吐きたくなるだろう。
 そうしている間にも時間は過ぎる。
 私は意図的に意識を外から切り離して、ただ漫然と雨音にたゆたうように身を任せていた。

(......うん?)

 元々テーブルの隅っこに陣取って色々遮断していいたから気付かなかったのだろう。
 軽く見渡せば、食堂は何時しか人でに賑わっていた。
 気付けば、周囲には何やら似た雰囲気の連中が集まっている。
 世間一般では冒険者は隔絶の対象だ。
 そう深刻なモノでないとしても、一般人と一箇所に集まれば、こうして分かれるのも必然か。

>「ああ、わたくし、テオバルトと申します。
> 街道の普請を仰せ付かる者でして。
> 少々お力をお借りしたいことがあるのですよ」

 そして、そのテーブルにやってきて、何やら告げている男がいる。
 どうやら臨時の依頼らしい。更に後から女がやってきて、別の儲け話を話し出した。

>「あー、仕切るようで悪いんだが皆、聞いてくれ。
> ひとまず自己紹介といかないか?」

 誰かがそんなことを言っているのをぼんやりと聞き流す。
 雨はまだ止んでいない。席を立つ理由はない。
 だからずっと私は黙って座っていた。

>「ひとまず、私はオートという魔術師だ。」
>「僕は、エリオと申します。オランに帰る途中の駆け出し冒険者です」
>「んじゃ次は俺。俺はスワローテイルのウード。旅の歌うたいだ」
>「ウードも言ってたけど、わたしの名前はエレアノール。エルでいいよ。」

 暇潰しに、口々に聴こえる言葉を半分眠った思考で咀嚼していく。

(へぇ、冒険者のパーティーか。......あっちの子は、学者の出かしら。いいわね、キラキラしてて)

 ああ、それにしても長いな。何時この雨は止むのだろう......ん?

 もう何度目かも分からない溜め息を吐いた時、不意に周囲が沈黙していることに気付く。
 何故だか、その内の誰かと目があった。はて、当然その顔に見覚えはない。
 知り合いと間違えているのだろうか、なんてことを考えていると、

「............ああ、私も?」

 一拍遅れて、大体の状況を把握した。
 パーティーの三人はともかく、他は単独の冒険者。
 それも込みで依頼人は話しているのだから、その場にいる私も話の内という訳だ。
 正直色々と面倒くさい。けれど、どうせオランについても酒場で依頼を探す羽目になる。
 ならば、今はこの成り行きに任せる方が、まだ効率が良いだろう。

「あー......そうね、リモーネよ。まぁ少し手癖が悪い学者ってところ」

 盗賊だ、と臆面もなく言い放つよりは多少穏やかな表現で告げてみた。

「大して腕が立つ訳じゃないからね。護衛云々の方は遠慮しておくわ」

 元々それなりに身軽な方だ。私はロープ張りとやらで軽く稼がせてもらうとしよう。

―――――――
PLより
思ったより気だるげな冒険者って難しいと悟りました
誰だ死んだ魚の目なんて設定を入れたやつは!

とまぁカクシカ了解でアリマス。
護衛側の方が人気のようなので、自分は人数合わせに回りますネ。