持ち帰る

パティ(Cocoa) 2012.01.02 [03:47]



「うー、げほっけほっ」

あたしは勢い良く本を抱え込んだもんだから、もろに埃を吸い込んでしまった。
ずっしりとした本の重たさと喉の苦しさに、無事に"いつもの世界"に戻ってきたという実感を覚える。
......はーはー。

「み、皆大丈夫だった? ......うん、あたしも大丈夫だよ、けほっ」

あたし達は遺跡探索を無事終えた――十分な収穫と共に。
あたしにその充実感がやってきたのは、ひとまず水を飲んで落ち着いたあとのことだ。



  * * *  * * *  * * *  * * *  * * *



>「今夜はこちらにお泊りですか」

「うん、そうできれば助かるよっ......うー、外やっぱ寒いっ」

コンラートくんのありがたい申し出に乗っかる事にする。
時間にすれば短い間だったような気もするけど、やはり緊張していたらしい。
後からどっときた疲労感に、あたしはもうくたくただ。


「......学院みたいな書庫が沢山あるところだったよ。
 大体は埋まっちゃってたけどさ、それでも残ってるものはソコソコあってね。
 
 特に、ジャオユンと一緒に行った部屋はそりゃあスゴイ本が沢山だったよ!
 全部持って来たかったんだけど、あたしがなんとか持ってこれたのはこれだけ。
 うう、惜しい事したなあっ」

いつも行き先の違う転送円。あの場所に誰かが行き着くことはもう無いかもしれない。
あたしは新緑色の革表紙をそっと撫でながら、埋もれてしまった沢山のモノに思いを馳せる。
このコの"友達"を一人、置いてきてしまった。


「でも、銀のカード――目録があるから。
 もしどこかに写本が残ってれば、あそこに残してきた本の中身はまだ"生きてる"かもしれないねっ」


書き記すことで、ひとはその身が失われてもその跡を残すことが出来る。
だから、その跡の消失はひとの命が失われることに似ている――とあたしは思う。


「......ほーんと、一体何やってたんだろう、あそこで本読んでた人たちって!」

例えヘンなコトでも、それはそれ、知識は知識、だけどねぇっ。




綺麗な短剣に魔晶石類。埋もれた部屋から見つかったもの、まったく見事な財宝だ。
忙しない遺跡探索だったし、少なからず危険はあったけれど――みんな満足そうに食事の輪をつくる。

>「私、今、とても幸せ、です・・・」

行く前と同じか細い声で、だけど見違えるような笑顔で、アウロラが呟く。

「あはは、ローラはそうして笑ってる方が可愛いねぇ!
 うん、幸せってイイモノだねぇ、ふふふふふっ」

あんまりにも可愛い妹――アウロラの頭を、くしゅくしゅっと撫でながら。

「ほんと、皆のお陰でうまくいったよね。
 みんな、お疲れ様、ありがとうっ!」

――乾杯っ!



  * * *  * * *  * * *  * * *  * * *



オランへの帰り道、あたしはまずジャオユンの見つけた粘土板と格闘して過ごした。
あたしの解読が間違ってなければ、一番大事な書庫の場所が記されている――んだけど、
バックヤード......なんてあっただろうか?
もしかすると、あの埋もれた先にあったのかもしれない。



過去の魔術師達に関する資料の中に、葦の意匠についての情報はないか。
推測される研究分野や、あるいは持ち帰った土と建材から、具体的な場所を絞り込むことはできないか。

地震による崩壊を起こす程度の地盤ならば、上から掘り起こす事も不可能ではないのではないか。
そうするに見合う価値のある書庫が、きっと世界のどこかの土の下に埋まっている。
この遺跡については、今後も継続的な調査を検討する価値があると考える――。



冷える指先を温めながら、あたしの簡単な所見と共に報告書をまとめ上げた頃。
それを持ち帰る場所、オラン魔術師ギルドの高塔が行く手に姿を現した。


あたしは久々に見るその姿に、胸を張って声をかけた。


「たっだいまーーーーーーーーーーーーっ!」



=========================================
PL:
報酬分配とか残っておりますが、
一先ず、〆日記として書いてみましたっ>w<

皆様、本当にお疲れ様でした&ありがとうございました!
(こちら、いろいろドタバタしちゃう事が多かった......反省っ(、、)


■ギルドへの報告でしたいこと(期限過ぎてるので、一応の希望で...)
・遺跡の情報をまとめた報告書を渡します。
・断られなければ、持ち帰った土砂他を包んだものも渡します。
・持ち帰った書物が、ギルド保管の場合。読みたい時には読んでもいいですか?的な許可を希望します。


■「参考資料」設定
これはシナリオ設定に合ってないよ!とかありましたら修正しますので、ご指摘いただければ!
(下巻もどこかにあるといいなっ(''* )
(これはギルドに売ると思うので......学院に行けば読める、かな?)

─────────────────────
◆『オリヴィエ図譜 <上>』
古代王国期に記された大判の博物誌。題名は著者である博物学者の名から。
主に植物や薬草の知識に関して、色付きの繊細な図版と共に記述されている。
上下巻のうちの一冊。こちらは主にアレクラスト東部で見られるものについてを収録。

表紙は厚い革で鮮やかな新緑色。金の箔押しで穂を意匠化した縁飾りが描かれている。
(下巻は鮮やかな空色で、同じく金の穂が描かれている。)
─────────────────────