時に埋もれたもの

パティ(Cocoa) 2012.01.02 [03:45]


ここの守護者って、例のブローチをつけてても襲って来たけど、
一体どうやってここの本読んでたんだろう?
合言葉の類とか、あるいは歪んだドアを開ける機構とつながってるのか――、
今あたしにわかるのは、さっきの広間よりよっぽど守るべきモノがあったって事だけだ。

「んしょっ......とぉ」

ここに並んでいるのは辞書や博物誌類といった、知識の集合体ばかりのようだ。
書物のずっしりとした重さに、その膨大な量が感じられる。

保存状態は上々で、二階、三階と広間の惨状に比べるとまさに雲泥の差。
ああ、書庫ってのは、やっぱりこうじゃなくちゃねぇ。

「......ほぁー、スゴイなぁ......」

オランの学院にもこういう大きめの書物はあるけど、よっぽど踏み込んだ研究でもしない限りは、
今のあたしにはあまり触れる機会が無い部類のものだ。
一枚、また一枚と捲るごとに興味深い項目がみっしりと現れ、軽い目眩すら覚える。
これほどになると、写本の量も少ないだろう――ここのがオリジナルで、一冊きりしかなくても驚かない。


うん、持てるだけの量を全部、持ち帰りたい!
皆どれぐらい持てるだろう――あたしとアウロラは一冊ずつが精一杯だろうか?

なによりまずは博物誌がいいだろう。
今も共通する知識はもちろんのこと、今は変化してしまった昔の自然に関する記述があるかもしれない。
それに、あたしの推測が正しければ、ここのひと達は自然の知識を主に欲していただろうし、内容の貴重さにも期待できる。

この、表紙に穂が描かれた新緑色の本と、色違いの空色のと。
それからあとは――。



  * * *  * * *  * * *  * * *  * * *



顔を上げたその時、異変を感じた。
指先がぼんやり光って、そのうちに馴染みのある魔法文字が手足に浮かび上がる。

「わわわわっ、もうなのっ?!」

ああ、これからって時にっ!

「どうしよっ、どうしよっ」

ジャオユンにも同じように魔法の光が現れているようだ。
あっちの部屋の皆にも出てるんだろうか、大丈夫だろうか?

他に持っていけそうなものは――。
立ち上がり、部屋の中を見回すものの、手頃なものは特に見つからない。

その間にも光は徐々に強くなっていく。
時間がない!

「ま、待ってってばあぁっ」

あたしは慌てて、足元に積んでいた一冊の本に手を伸ばす。
光のなかに、抱きかかえるように思いっきり飛び込んで――。



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PL:
続いて、歪んだ鉄扉の部屋探索→転送までです。(''
(あともうちょっとだけ続くんじゃ)

獲得した「参考資料」について、色々と設定しても良いとの事だったので、
そんな感じで思ったように記述しています。

詳しくは〆日記のほうでまとめますねっ。