知識の欠片

GM(Lain) 2011.12.24 [02:51]

 パティは書架を探し、まだ読むに堪える本を検める。

 数冊取り出して見るに、このあたり――さほど損傷のない書架には、自然の事物に関する本が納まっていたようだ。

 植物に関するもの――植生や分布、細かな鑑別の方法、土壌との関係を調査したもの、などなど。
 動物に関するもの――分布、生態、植生との関連を調査したもの、習性を調査した記録、などなど。

 いずれもパティには馴染みのある知識分野であり、少なくとも見る限り、新たな――というよりは失われた――知見に繋がるものはなさそうだ。

 賢者の学院の書庫にでも行けば、このような知識は好きなだけ手に入れることができるだろう。
 ゆえに、今ここにある本の価値は、500年の歳月を経ている、というその一点にあると言える。

 好事家であれば、こういったものに金を出す者もあるかもしれない。

※ ※ ※

 さらにパティは、土砂の崩れ方、そして水の流れた跡から、崩壊の状況を推測しようと試みる。

 もっとも考えられるのは、やはり地震であろう。
 古代王国、その最盛期にあっては、地震すら魔術師たちの制御のもとにあったと言われている。
 その仮説に従うならば、この場所が崩壊したのは王国が滅んでから、ということになるだろう。

 土砂にしても崩壊した瓦礫や書架にしても、一切手を付けられた様子がないことが、その傍証でもある。
 何らかの原因で生きた人間のいなくなったこの場所を、いつの時点でか、大きな地震が襲った――ということになるだろうか。

 その仮説を明かす直接の証拠があるわけではない。
 だが、確度は低くない、と思われた。

※ ※ ※

 ジャオユンはキャビネットを引き開け、中を確かめる。

 いくつかは空であり、いくつかはひどく破損しており、しかしいくつかは無事なものもある。
 無事なものの中に、いっぷう変わったものをジャオユンは発見した。

 銀色の金属質の輝き――手のひらほどの大きさの、銀製の薄板。
 表面には文字が彫り込まれている。
 数は多い――ざっと見たところ、1000を越えるだろう。

 パティがそれを見たならば、彫り込まれた文字は下位古代語と理解できる。
 そして、書いてある内容。

 本のタイトルがあり、著者があり、上梓された日付があり、その本がどのように分類されるかが刻み込まれ、ごく簡単な内容の要約が添えられている。

 ここに刻まれた資料の大半は、おそらく、すでに喪われていることだろう。
 ゆえに、その内容を現在に再現することはできない。

 だがこれらは、彼らが、古代の学者たちが、その膨大な知識をどのように体系付けていたかを、おぼろげながら教えてくれている。

 解析には時間がかかることだろう――だが、それでも、魔術師ギルドがもっとも歓迎する類の戦利品には違いない。

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■GMから

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 パティとジャオユンのターン9を終了しました

◆戦利品

 ・古書
 ・蔵書目録カード

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