ひとつのおわり

マルドル(LINTS) 2011.11.07 [10:27]

>「貴公ならば、攻撃を続行させるかね?」

エリクセン殿の問いかけに、ふむ、と考える。

その判断が出来るか、出来ぬか。
出来たとして、実行できるか、出来ぬか。

自分は一介の戦士、もっぱら使われる立場だ。
指揮官の視点には、疎いと言わざるを得ない。

「オーガーの力を過信しそうではあるな」

だからこそ、難しいと答える。

「ただ、使われる身として言えば――
 そういう判断の出来る指揮官の元で働きたいと、思うな」

さすがに、ゴブリン王は却下だが。

私の進言の提案に、騎士殿の口は重い。
流れ者の身には見えぬ、金の問題やしがらみがあると想像に難くない。

「無理にとは言わぬ。
 私も子爵殿に無理を押したいとは思わぬ」

「その代わり、また我々の手を借りたい時は、喜んではせ参じよう」




旅立ちの前夜。村人は祝宴を挙げてくれた。

ようやく、心置きなく酒を飲める。
なぜ、誰も死なぬ道を選びたいかと言えば
「美味い酒を飲みたいからさ」と答えるが、
実際、こうやって大きな喜びの中に身を置き
その中で飲み続けると、静かな充実感で心が温かくなる。

途中、アルフレドと酌を交わした。
堅物の彼は、やはりこのような騒ぎは苦手らしい。

「彼らを、無事に家族の元へ戻す手伝いができて良かったよ」

衛兵達の、はしゃぎながら飲む姿を少し離れた場所で眺めながら
アルフレドへそうつぶやく。

「あんたは、本当に良い隊長さんだ。
 ――死ななくて良かった」

あの夜、自分に何かあったらと頭を下げられて、
虚勢を張ったことを思い出す。

「全く、女にあんなこと言わせるんじゃないよ」
でも、そういう実直なところは嫌いじゃなかったさ。

――――と、ガラフの歌声が聞こえた。

「ちょ、何歌ってんだよあいつ!」

まさか、自分と妖魔王の戦いが題材になるとは!
「勘弁してくれよ、見たわけじゃないだろうに」
人の歌を散々歌ってきたが、自分が歌われるとこんなに恥ずかしいものはない。
かと言ってあの場へ乱入するのは無粋の極み。
どうすることも出来ん。

「もう...知らん!」

こんな時に、酔えない体質はつらいな。
そう思いつつ、エールを一気にあおった。




村を経つ日。
村人と騎士団の見送られて我々は戻る。

エリクセン殿は村へ逗留し、警護と復興の職を担う。

>「再び会うことがあるかどうか解らないが――いや、貴公らと会うとなれば領内でなにかあったということに他なるまい。
> ここは会わずに済むことを願うべきなのだが、敢えてこう言わせて貰おう。
> またお会いしよう、どうかそれまでつつがなく過ごされるように」

騎士殿の言葉に、深く頷いて答える。

「村長殿、世話になった。奥方様にも伝えておいて欲しい。
 心づくしの料理は、どれもとても美味かった、とな。
 ――――ありがとう」

そして騎士の敬礼と言う、身に余る見送りを受けて村を旅立った。
朝日の中で剣と鎧が輝き、一服の絵のようなそれは
晴れがましくも誇らしい光景だった。




帰り道は至極のんびりしたもので、
緊迫した往路とはまるで別物だった。

数日ぶりにまみえる子爵殿へことの仔細を報告し、
我々の仕事はここで完了した。

「これをお返ししよう。お陰で妖魔王から身を守ることができたよ」
子爵殿から借り受けた大盾を返却する。

報酬は上乗せして払われ、
しかも高品質の武具を扱える職人への紹介状も用意してくれた。

「ありがたいが、あいにく元手が足りそうにないんだ...」

この機会に辞退をせねばならぬのは心苦しいが、
現実は曲げられぬ。致し方ない。

「子爵殿の気持ちだけ、ありがたくお受け取りしよう」

私の不躾な提案にも快く返答をしてくれた。
もっとも、全てが叶うわけではないことも承知している。
エリクセン殿の言うとおり、やりたいことと出来ることは別物だ。

「子爵殿の手を煩わせる提案をして申し訳ない。
 真摯な対応に重ね重ねの感謝を」

そう言って、私は頭を下げた。


 >「さて、お願いした件はこれで落着しました。
 > もしよろしければ、食事など用意させましょう。
 > いただいた報告は報告として、村の様子など、少し聞かせていただきたく思うのですが」


「ああ、ありがたくいただこう。
 あの村は、いいところだったよ。子爵殿も一度足を運ばれると良いだろう」

――皆と共に卓を囲む幸せに、感謝を。


PL>
駆け足でしたが、締め日記を投下します!
皆様お疲れ様でしたー

マルドル:1243点
各自に750ガメル

ありがたく頂戴します。
所感は後ほどアップしますね。