その結末

GM(Lain) 2011.11.02 [01:08]

 村人たちの壊走はしばらくの間続いた。

 閂のかけられた街道の北門でさらに一騒動が生じはしたが、ここでも怪我人は軽傷者が数人出た程度で、大事には至らなかった。
 焦る村人たちが我先にと橋を渡り始めた頃合で誰かが衛兵と冒険者の声に気付く。

 妖魔が逃げ出したとの報に、騒乱は呆気なく沈静化した。

 ほどなく人々は家に戻り、あるいはことの顛末を見届けようと広場へ、そして防柵の近辺へと集まってくる。
 防柵に近づく村人は、衛兵たちが危険です戻ってくださいと追い払った。
 さらに敢えて危険に近付こうという蛮勇の持ち主はおらず(なにせ先ほどオーガーの姿と破壊力を目の当たりにしたばかりなのだ)、やがて村はざわつきながらも一定の静穏を取り戻した。

※ ※ ※

 村の北西、広い範囲にわたった戦場から、どうにか逃げ出したのは妖魔どもの半分に満たぬ数に過ぎない。

 数多くの妖魔どもが眠ったまま捕らえられ、あるいは気を失って引き立てられ、またあるいは死体として回収された。

 村人に引き渡すにせよ冒険者たちが始末をつけるにせよ、彼らを待ち受ける運命はひとつしかない。
 殺して生き延びるか、殺されて喰われるか――人間と妖魔の関係は行き着くところそのようなものだ。

 まして言葉も通じぬとあっては引き出せる情報もなく、ゆえに早々に殺すほかはない。

※ ※ ※

 もう一方の戦場、すなわち南門では、オーガーが最後まで抵抗を続けた。
 巨躯とそれに見劣りせぬ膂力をもって暴れるオーガーは危険な存在ではあるが、数に勝り、また知能に勝る戦い慣れた人間の集団に勝てるものではない。

 やがて彼もまた打ち倒され、止めを刺された。

 南門の外には、2匹のゴブリンが転がっている――いずれも狩人が仕留めたものだ。
 クルトは、ヨーセフでもああはできなかっただろうとイアンの腕前を讃えた。

※ ※ ※

 怪我人の治療を終え、血腥い後始末を終え、川の水で武器を洗う頃には、うっすらと東の空が茜色に染まり始める。

 やがて陽が昇り、凄惨な戦場のすがたを露わにしてみせることだろう。

 妖魔側の損害はオーガーのほか、ホブゴブリン1、ゴブリン7、コボルド4。
 襲来した妖魔のうち、6割以上がここで討ち果たされたことになる。

 ことにオーガーが倒されたことは、群れの戦力にとって大きな打撃となるだろう。

 他方、村の損害は、門が破壊されたことのほか、軽傷者が数名生じたのみ。
 冒険者と衛兵まで含めてみても、ボリスの負傷が妖魔の与えた損害らしい損害としては唯一のものだ。

 攻防戦は、人間たちの、鮮やかではなくとも明らかな勝利に終わったと言ってよい。

※ ※ ※

 3日後の夜になって、騎士の率いる一団が村に到着した。

 騎士はエリクセンと名乗り、冒険者たちから詳細な戦況を聞いた。
 妖魔どもの戦力の大きさと統率に驚き、それに比した損害の少なさにふたたび驚く。

「明朝から山狩りを行おう。
 こういったことに些か心得のある兵を連れてきている」

 彼はそう結論した。

「村の防衛はまさしく貴公らの勲功、妖魔どもも過半を討ち果たされてはもはや我らに抗する術もなかろう。
 討伐の功を我らのみが得るは騎士道に悖る」

 望むならば同道し、ともに妖魔を刈り取るというのはどうか、と提案する。

「もっとも」

 彼は続ける。

「貴公らの言うような知恵のある妖魔であれば、雲を霞と逃げ去っているだろうが」

※ ※ ※

 はたしてエリクセンの予測は正しかった。

 冒険者たちが同行するのであれば、もぬけのからとなった宿営地――巣、というよりはそのような様相であった――を目にすることになるだろう。

 小さな洞窟とその周囲の森を利用して作られたそこは、妖魔どもにとっても住み心地のよい場所とは思えず、ゆえに定住地を持たない小集団か、でなければ版図の拡張を狙っての仮住まいと推測された。

 騎士団はそれ以上の追跡を断念した――ひとまずは撃退し、当面の安全を確保したことでよしとする、という判断を下したのだ。
 実際のところ本格的な追跡には準備が足りず、時間としても3日間の差は急峻なエストンの山中に逃げ込むに充分すぎる時間であった。

「同じ規模に戻るには、少なくとも数ヶ月を要するだろう」

 村に戻ったあとで、エリクセンはそう語る。

「別の同族集団を吸収できれば、の話だ。
 しばらくはそれも難しかろう」

 戦力の過半を喪失することにはそういった意味もある。

「それもこれも貴公らの功績というわけだ」

 そう言って彼はは笑う。
 陰のない笑みだった。

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■GMから

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 ダイジェストというご意見が大勢でしたのでそのように進めさせていただいております。

 冒険者たちは無事オーガーを打ち倒し、戦闘に勝利しました。
 村人に重傷者は出ておらず、壊されたのは門だけという戦況です。

 本文中でも述べたとおり、勝利と申し上げて差し支えないかと存じます。

 時間については撤収予定日の前日経由で最終日まで飛ばしました。
 途中なにかやりたいこと・話したいことなどあれば遠慮なく差し挟んでください。

 ここまで描写した大筋に反しない限り、だいたいどんなことでもおkです。

 また、戦闘の描写等を付け加えたい場合、このカテゴリでもそれぞれの戦線のカテゴリでも都合のよい方にレスしていただいて構いません。


>みなさま

 このあと1レスか2レスを挟んでアンセルムへ帰還→報酬貰ってシナリオ〆&解放という進行予定です。

 ひとまず明日夜にまた進行はしますが、戦闘というわけでもありませんし、まあ順番の前後などは特に気にせずに好きなように絡んでやってください。

 では、もうあと数日となりますが、最後までお楽しみくださいませ!