後日談:焼けない肉

GM(Lain) 2011.06.13 [21:08]

 食事の席に、コンラートが顔を出した。

 幾皿か、料理を持ってきている。
 食事のかわりに話を聞かせてくれ、ということなのだろう。

 聞けば、たまに来る冒険者に金を払って鹿や鳥を獲ってもらうことがあるのだそうだ。

「割合、食事はいい方だと思いますよ」

 コンラートはそう言って笑った。

「ところで」

 一向に焼けない串の肉を指して言う。

「焼けてませんね。もう少し火に・・・・・・」

 言いながら手を伸ばし、何気なく串を摘もうとして、

「ぅ熱ぃいっ!」

 軽く火傷をしたようだ。

「え、なんですかこれなんなんですか無茶苦茶熱いじゃないですか!」

「は」

 事情を聞かされたコンラートは、呆けたような顔で頷いた。

「ヘルハウンドの。はあ」

 少し赤くなった指先に息を吹きかけながら、思案顔だ。

「たしかに炎では傷つかないと聞きましたが。はあ。
 焼けませんか・・・・・・なるほど。まあ、道理ではありますね」

 串はこれだけ熱いのに、と、まだぶつぶつ呟いている。
 肉はまだ赤い。どう見ても生肉にしか見えない。じっさい、生肉なのだが。

「あの、冷めたら、少しだけでいいんですけど」

 おそるおそる、という風情で口に出す。

「一口、味見させていただけませんか」

 コンラートは調理前と調理後の都合2度、その肉を口にした。

「うーん、硬いですねこれ。スジ肉みたいなかんじです」

 噛みながら言う。

「ああ、でも、赤身でよかったかもしれません。
 これ脂乗ってたらべたべたで余計臭みが出そうですから」

 腿の肉はほぼ赤身で、脂肪はほとんど入っていない。
 ヘルハウンドのごとき魔獣は、長期間飲まず食わずでも生きていけるという話だ。
 だが、食事がなければ脂肪も溜まらないのだろう。

 全くないわけではないのだが、その脂すら、どういった理由か、熱で溶け出してくるということがない。

「臭みは慣れちゃうとそこまで気にならないんですけど。ううん」

 あまりいい味ではないようだ。

 トロンが刻んで香草と香辛料を混ぜた料理は、臭みが取れてそれなりに食べられる味にはなった。
 決して美味というわけではないが、食べられない品でもない。

「話のタネにはなりそうですけど」

 けど、の後を続けなかったのは、コンラートなりの礼儀だったのかもしれない。

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■GMから:
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 後日談として、例の肉の描写であります。
 可もなし不可もなし、努力を考えると割に合わない味、というところでしょうか。


>たいまんさん

 開封した『グレングラス』はもう売り物になりませんが、日常その他で自分で飲んだり仲間に振舞ったりする分には特に問題ありません。
 樽の容量はだいたい1升瓶くらいの大きさを想定してる、とお考えください。
 1升だと2泊すれば空けちゃいそうな気もしますが、まあそのあたりはご随意にどうぞ!

 瓶の大きさとしては『マハトイェスカヤ・スタルカ』も同様です。