星月夜。

ガラフ(テッピン) 2011.06.12 [21:45]

銘酒をセリトとカーツが発見し、さて次の行き先は...などと話をしていた矢先、

変化が現れた。

 

最初は指先がぼんやりと光り出す。次第に輝きは強まり、

身体の回りに古代語らしき文字が浮かび上がり、魔方陣を形成していく。

どうやら強制送還の時が来たようだ。

 

>「どうもタイムリミットみたいだね...お互いの魔法陣が干渉しないように気をつけて。

> 何が起こるかわからないから」

 

魔術師であり古代語に対する見識の深いトロンの言に従い、その場でじっとする。

輝きが一際激しくなり、魔方陣が完成する。

そして突如襲われる浮遊感―――。

 

***********************************

 

>「帰って来た、ね」

 

>「戻ってこれたみたいだね」

 

気がつくと、我々は遺跡入り口の魔方陣の上に立っていた。

つい先程まで、生きるか死ぬかの探索をしていた事が、俄かに信じられない。

今頃になって、身体の節々が痛み出し、激しい疲労感に襲われ、倒れそうになる。

緊張の糸が切れ、気力で抑えていた疲労や負傷が一気に吹き出たのだ。

 

>「何はともあれ、コンラートさんの所に行こうか...流石に疲れたよ」

 

トロンの尤もな意見に、賛同の意を示した。 

 

「賛成じゃ。早くこの重い鎧を脱ぎ捨てて楽になりたいわい...」

 

************************************

 

>「今夜はこちらにお泊りですか」

 

出迎えたコンラートの問い掛けに否応もなく即答する。

 

>「はい、お邪魔します。戦利品も色々ありますよ」

 

「是非お願いしたい。動きたくても残念ながら身体がこれ以上動いてくれんでな...」

 

>「さて、とりあえずは軽く汚れを落としてから食事かな...」

 

「食事か。それはワシも望む所だが、黒魔犬の肉だけは勘弁させて頂く。

 あれは趣味でないのでな...好きな者のみで味わうがよかろう」

 

トロンさえもがヘルハウンドの肉を食べる、と言い出したので、この青年への

評価を内心書き換えつつ、つい後ずさりしてしまう自分であった。

 

「スマンがワシは外の空気を吸いに行かせて頂く。一人で出るが、心配する事は

 ない。久しぶりに星の動きでも占いたくての...」

 

************************************

 

星空がいつもに増して美しい。

死線を潜り抜け、生きているという実感を強く感じているせいだろうか。

 

今回、古代語魔術を操る強大な不死者と戦った。

必死だったせいもあるが、今までの様に抑えきれない憤怒と激情には駆られなかった。

その時考えていたのは、二度と仲間を死なせまい、という想い。

憎しみを叩きつけるのではなく、生きる力をぶつける事―――。

 

護身用に携帯してきた銀の手斧を翳す。

月の光を受けたそれは、柔らかい光を湛えている。

 

<土は、土へ>

 

下位古代語で刻まれた言葉。

今までの自分は、後悔と自責の念を不死者にぶつける事で、

自分の無力を正当化しようとしていたのかも知れない。

しかしそれは単なる転嫁、逃避に過ぎない。

自らを死地へ誘い、何時かは身を滅ぼす事になるだろう。

無論、自分が生命を賭して追わねばならない奴が居る。

未だ正体が掴めない、紅い瞳の不死者の王...

 

だが、これからは。

新たな仲間を守る為に。

自分が味わった悲しみを再び繰り返さない為に。

そして、星王ラーダの使徒として、死して尚安息を求めて彷徨える魂を救う為に。

自らの力を、使おう。

 

===================================

 

PL:フューネラルアクスと過ごす夜。