星月夜。
ガラフ(テッピン) 2011.06.12 [21:45]
銘酒をセリトとカーツが発見し、さて次の行き先は...などと話をしていた矢先、
変化が現れた。
最初は指先がぼんやりと光り出す。次第に輝きは強まり、
身体の回りに古代語らしき文字が浮かび上がり、魔方陣を形成していく。
どうやら強制送還の時が来たようだ。
>「どうもタイムリミットみたいだね...お互いの魔法陣が干渉しないように気をつけて。
> 何が起こるかわからないから」
魔術師であり古代語に対する見識の深いトロンの言に従い、その場でじっとする。
輝きが一際激しくなり、魔方陣が完成する。
そして突如襲われる浮遊感―――。
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>「帰って来た、ね」
>「戻ってこれたみたいだね」
気がつくと、我々は遺跡入り口の魔方陣の上に立っていた。
つい先程まで、生きるか死ぬかの探索をしていた事が、俄かに信じられない。
今頃になって、身体の節々が痛み出し、激しい疲労感に襲われ、倒れそうになる。
緊張の糸が切れ、気力で抑えていた疲労や負傷が一気に吹き出たのだ。
>「何はともあれ、コンラートさんの所に行こうか...流石に疲れたよ」
トロンの尤もな意見に、賛同の意を示した。
「賛成じゃ。早くこの重い鎧を脱ぎ捨てて楽になりたいわい...」
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>「今夜はこちらにお泊りですか」
出迎えたコンラートの問い掛けに否応もなく即答する。
>「はい、お邪魔します。戦利品も色々ありますよ」
「是非お願いしたい。動きたくても残念ながら身体がこれ以上動いてくれんでな...」
>「さて、とりあえずは軽く汚れを落としてから食事かな...」
「食事か。それはワシも望む所だが、黒魔犬の肉だけは勘弁させて頂く。
あれは趣味でないのでな...好きな者のみで味わうがよかろう」
トロンさえもがヘルハウンドの肉を食べる、と言い出したので、この青年への
評価を内心書き換えつつ、つい後ずさりしてしまう自分であった。
「スマンがワシは外の空気を吸いに行かせて頂く。一人で出るが、心配する事は
ない。久しぶりに星の動きでも占いたくての...」
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星空がいつもに増して美しい。
死線を潜り抜け、生きているという実感を強く感じているせいだろうか。
今回、古代語魔術を操る強大な不死者と戦った。
必死だったせいもあるが、今までの様に抑えきれない憤怒と激情には駆られなかった。
その時考えていたのは、二度と仲間を死なせまい、という想い。
憎しみを叩きつけるのではなく、生きる力をぶつける事―――。
護身用に携帯してきた銀の手斧を翳す。
月の光を受けたそれは、柔らかい光を湛えている。
<土は、土へ>
下位古代語で刻まれた言葉。
今までの自分は、後悔と自責の念を不死者にぶつける事で、
自分の無力を正当化しようとしていたのかも知れない。
しかしそれは単なる転嫁、逃避に過ぎない。
自らを死地へ誘い、何時かは身を滅ぼす事になるだろう。
無論、自分が生命を賭して追わねばならない奴が居る。
未だ正体が掴めない、紅い瞳の不死者の王...
だが、これからは。
新たな仲間を守る為に。
自分が味わった悲しみを再び繰り返さない為に。
そして、星王ラーダの使徒として、死して尚安息を求めて彷徨える魂を救う為に。
自らの力を、使おう。
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PL:フューネラルアクスと過ごす夜。