星空
カーツェナル(さの) 2011.06.12 [20:54]
腐りかけた箱の中に残されていたのは、
長期保存の効くはずだったであろう食料品のなれの果て。
500年と言う年月にも耐え得る食料など、そうあるものでもない。
後は酒樽や瓶。
「あれ? ・・ねぇセリト、これ見て」
薄れた焼印で『グレングラス』と記された、厳重に封をされている小さな樽。
そして、コルクと蝋で厳重に封を施されており、陶製の瓶に収められている酒瓶。
破れたラベルには、消えかけた文字で『マハトイェスカヤ・スタルカ』。
「あの文献に記されてたお酒なの」
ボクもセリトもお酒は殆ど口にしないので、それに関しては知識がない。
以前、調べ物をしていた時に何の拍子か、ボクの頭の上に落ちて来た羊皮紙の巻物があった。
居合わせたセリトがそれを受け止め、なんだろうと二人で調べたんだっけ。
その羊皮紙に記されていたのが、『グレングラス』と『マハトイェスカヤ・スタルカ』。
かつては名のあった、でも今はもう存在しない銘柄・・だったかな。
いつもなら、お酒の銘柄なんて興味も湧かなくてそのままだったけれど。
意外な所で役に立ったなの。
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その時。
指先が、ぼんやりとした光りだした。
> 明確な輪郭を持ち始め、手や足、身体の末端に近い空中に魔法文字を浮かび上がらせてゆく。
> ゆらゆらと動き、明滅を繰り返しながら、それらは徐々に光を増してゆく。
異変を感じたのか、ベルさんもトロンさんの肩に留まり、周りを不安そうに見ている。
> 直後、急速に光を増した魔法文字の羅列が、各々の周囲に魔法陣を織り上げた。
また、あの感覚。
あれ、あんまり好きじゃないなの。
何が起こっているのか、まだ理解出来ないからだとは思うけれど・・
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――気が付くと、遺跡入口の魔法陣の上に居た。
皆、一緒。
「帰って来た、ね」
緊張の糸が切れたのか、疲労感が押し寄せて来る。
でも・・無事帰って来た。
外に出ると、日が暮れていたなの。
小屋へ顔を出せば、コンラートさん迎えてくれた。
食事をし、遺跡の中の事を話をしながら、夜は少しずつ深まっていく。
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星空を見上げて、ぼんやりと物思いに耽る。
転送の魔法陣。
複雑な術式を施された魔術灯。
創造主の命のみを忠実に行使する石や骨の従者。
そして、500年間ずっとあの場所に留まり続けたあのコ。
魔力を具現化して自然に在らざる物を作りだす・・・
どうして、あのコのような存在が生み出されたのか。
精霊の力だけでは解明出来ないなの・・
色んな方向から考えなきゃ。
父様がそうであったように。
ボクにも、魔力を具現化する力はあるかしら。
自然なる力と、自然ならざる力。
その二つを上手く制御出来るかしら。
――ううん。
きっと、出来る。
ボクは父様と母様の娘。
出来ない訳なんかない。
それに。
その力は、皆を守ってくれる力になるなの。
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PL:だんじょんお疲れ様でした!(゚w 。)
セリトとダイス目同じなので一緒に調べてた事にした(
二人とも酒飲まないから無理矢理ですw