短慮の報い、そして死線。
ガラフ(テッピン) 2011.06.03 [10:07]
成果を携える事適わず、若干空しい気持ちを抱えながら皆と合流する。
まあ、話を聞けば各自それなりに空しい気持ちを抱えてはいたようだが...
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魔剣を手にしている怪物の正体は、トロンにも分からなかったという。
正体の掴めない者に対し戦いを挑むのは正直怖い。
しかし、
>「じゃあカーツとガラフさんに防護の魔法をかけて、あとは物量で押し潰す方向で行こうか」
トロンの意見は尤もに思われた。
時間が差し迫っている以上、躊躇している時間の余裕はない。
そしてトロンの言う通り、魔術師、精霊使い、盗賊、神官と多彩な能力を持つ我々なら、
どんな不測の事態にもすぐに対応出来るだろう。
「うむ。そうしましょう。ただ、あらゆる可能性を考慮する必要はある...その事を、重々
忘れぬようにしましょうぞ。星王は、果断は奨励されるが短慮は好まれないでな...」
自分に言い含めるつもりで、口に出した。拭えない不安を振り切りたくて。
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しかし今回はその果断が最悪な形で裏目に出た。
トロンの<防護>の呪文を得て、部屋に入り込んだ途端、聞こえてきたのは
最近俄かに聞きなれ始めた上位古代語による呪文の詠唱だった!
声の主は骨従者を従え、魔剣を揺らめかせて複雑な印を切っている。
>「――負の生命の精霊!」
>「――っ!? 雷撃の魔法だ! 身を低く、気をしっかり張って!」
「なんじゃと?不死者が古代語魔術を!?」
あまりの展開に思考が追いつかない。
そして放たれる紫色の電光!
電光は骨従者を穿ち、庇おうとしたメガーヌを巻き込み、カーツェナルに直撃し、
トロンまで貫いた!!
そして骨従者は主に身体を半分削られながらも、カーツェナルに止めを刺さんとその歩みを
止めない。
<癒し>を掛けねばカーツェナルが危ない!
―――偉大にして賢明なる星王ラーダよ、彼の者の傷を癒したまえ―――
咄嗟に唱えた祈りは、しかし効果を表さなかった。
動揺して集中が乱れたか!?
>「ほうらカーツ、ぼやぼやすんじゃないよ!
> 骨が狙ってるだろう!」
メガーヌが身体を焦がしながらも骨従者を粉砕し、カーツェナルを守る。
トロンも強い意思で自分を保ちつつ、呪文を完成させた。辺りが闇で覆われる。
<闇>だ。
この機を逃さず、見事な連携でセリトが動いた。
闇の精霊を召喚し、不死者に叩きつける。
古代語魔術を封じる為に、精神を削る作戦に出たようだ。
>「闇の精霊よ、我が導きに従え!」
不死者の身体が大きくのけぞる。効果は十分あったようだ。
だが不死者は活動を停止する事なく新たな呪文の詠唱を開始する。
その切っ先には、自分がいた。
カーツェナルが標的にならなかったのは幸いだ。
元々負傷を癒していなかった彼女は今の電撃で既に虫の息だ。
自分に、<癒し>を何回も掛ける気力は残っていない。
なら、答えはひとつだ。
「構わん!貴様の呪文位、わが身で受け止めてくれるわ!!」
頭をよぎる過去の記憶。
目の前で次々と斃れていく仲間。光る赤い目。嘲笑―――
「二度とは繰り返さん!カーツはけして死なせん!ラーダよワシに力を!!」
紫電に身を焦がしながらも、<癒し>の詠唱を開始する。
カーツェナルを救いたい、その一心でラーダに祈りを捧げる。
傷がみるみる内に塞がっていき、顔色に生気が戻る。
ラーダは、今度は願いを聞き届けてくれたようだ。
>「ガァァラフ!
> その程度で泣いたらドワーフがすたるよッ!」
『泣きはしませんよ!男がこれ位で泣いてたまりますか!
姐さんとカーツが踏ん張ってるのに、ここで倒れたら男が廃るってもんです!!』
メガーヌの叱咤激励にドワーフ語で返答する。
どうやら自分もまだまだ行けるらしい!
>「っくぅ...! このぉぉぉぉっ!」
メガーヌが不死者の剣を叩き落とそうとし、トロンが体当たりをしかけて
動きを封じようとするが上手くいかない。
しかし回避に気取られ動きは鈍る。
そこへカーツェナルの精霊魔法が放たれた。
>『闇よ、暗きに住まう精霊よ』
>『恐怖をも司る漆黒の存在よ。 舞え、穿て、彼の者の精神を!』
二度目の闇の精霊の直撃を受け、今度こそ不死者が活動を停止する。
ゆっくりと崩れ落ちる。カラン、と剣が地面を蹴る音が響く。
それが死闘の終わりを告げる音だった...
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PLより:今までの補足描写その3。投稿遅くなり大変すみませんでした!