短慮の報い、そして死線。

ガラフ(テッピン) 2011.06.03 [10:07]

成果を携える事適わず、若干空しい気持ちを抱えながら皆と合流する。

まあ、話を聞けば各自それなりに空しい気持ちを抱えてはいたようだが...

 

***********************************

 

魔剣を手にしている怪物の正体は、トロンにも分からなかったという。

正体の掴めない者に対し戦いを挑むのは正直怖い。

しかし、

 

>「じゃあカーツとガラフさんに防護の魔法をかけて、あとは物量で押し潰す方向で行こうか」

 

トロンの意見は尤もに思われた。

時間が差し迫っている以上、躊躇している時間の余裕はない。

そしてトロンの言う通り、魔術師、精霊使い、盗賊、神官と多彩な能力を持つ我々なら、

どんな不測の事態にもすぐに対応出来るだろう。

 

「うむ。そうしましょう。ただ、あらゆる可能性を考慮する必要はある...その事を、重々

 忘れぬようにしましょうぞ。星王は、果断は奨励されるが短慮は好まれないでな...」

 

自分に言い含めるつもりで、口に出した。拭えない不安を振り切りたくて。

 

************************************

 

しかし今回はその果断が最悪な形で裏目に出た。

トロンの<防護>の呪文を得て、部屋に入り込んだ途端、聞こえてきたのは

最近俄かに聞きなれ始めた上位古代語による呪文の詠唱だった!

声の主は骨従者を従え、魔剣を揺らめかせて複雑な印を切っている。 

 

>「――負の生命の精霊!」

 

>「――っ!? 雷撃の魔法だ! 身を低く、気をしっかり張って!」

 

「なんじゃと?不死者が古代語魔術を!?」

 

あまりの展開に思考が追いつかない。

そして放たれる紫色の電光!

電光は骨従者を穿ち、庇おうとしたメガーヌを巻き込み、カーツェナルに直撃し、

トロンまで貫いた!!

そして骨従者は主に身体を半分削られながらも、カーツェナルに止めを刺さんとその歩みを

止めない。

<癒し>を掛けねばカーツェナルが危ない!

 

―――偉大にして賢明なる星王ラーダよ、彼の者の傷を癒したまえ―――

 

咄嗟に唱えた祈りは、しかし効果を表さなかった。

動揺して集中が乱れたか!?

 

>「ほうらカーツ、ぼやぼやすんじゃないよ!

> 骨が狙ってるだろう!」

 

メガーヌが身体を焦がしながらも骨従者を粉砕し、カーツェナルを守る。

トロンも強い意思で自分を保ちつつ、呪文を完成させた。辺りが闇で覆われる。

<闇>だ。

この機を逃さず、見事な連携でセリトが動いた。

闇の精霊を召喚し、不死者に叩きつける。

古代語魔術を封じる為に、精神を削る作戦に出たようだ。

 

>「闇の精霊よ、我が導きに従え!」

 

不死者の身体が大きくのけぞる。効果は十分あったようだ。

だが不死者は活動を停止する事なく新たな呪文の詠唱を開始する。

その切っ先には、自分がいた。

カーツェナルが標的にならなかったのは幸いだ。

元々負傷を癒していなかった彼女は今の電撃で既に虫の息だ。

自分に、<癒し>を何回も掛ける気力は残っていない。

なら、答えはひとつだ。

 

「構わん!貴様の呪文位、わが身で受け止めてくれるわ!!」

 

頭をよぎる過去の記憶。

目の前で次々と斃れていく仲間。光る赤い目。嘲笑―――

 

「二度とは繰り返さん!カーツはけして死なせん!ラーダよワシに力を!!」

 

紫電に身を焦がしながらも、<癒し>の詠唱を開始する。

カーツェナルを救いたい、その一心でラーダに祈りを捧げる。

傷がみるみる内に塞がっていき、顔色に生気が戻る。

ラーダは、今度は願いを聞き届けてくれたようだ。

 

>「ガァァラフ!

> その程度で泣いたらドワーフがすたるよッ!」

 

『泣きはしませんよ!男がこれ位で泣いてたまりますか!

 姐さんとカーツが踏ん張ってるのに、ここで倒れたら男が廃るってもんです!!』

 

メガーヌの叱咤激励にドワーフ語で返答する。

どうやら自分もまだまだ行けるらしい!

 

>「っくぅ...! このぉぉぉぉっ!」

 

メガーヌが不死者の剣を叩き落とそうとし、トロンが体当たりをしかけて

動きを封じようとするが上手くいかない。

しかし回避に気取られ動きは鈍る。

そこへカーツェナルの精霊魔法が放たれた。

 

>『闇よ、暗きに住まう精霊よ』

 
>『恐怖をも司る漆黒の存在よ。 舞え、穿て、彼の者の精神を!』

 

二度目の闇の精霊の直撃を受け、今度こそ不死者が活動を停止する。

ゆっくりと崩れ落ちる。カラン、と剣が地面を蹴る音が響く。

それが死闘の終わりを告げる音だった...

 

===================================

 

PLより:今までの補足描写その3。投稿遅くなり大変すみませんでした!