鉄扉の部屋から腐臭漂う部屋まで

セリト(彩月) 2011.06.11 [11:46]

> 「鍵ならもう構造は分かってるから大丈夫なんだけどね。
> セリト、罠の方、頼むよ。
> どうにもやっこさん、この扉を開けっぱなしにしたいみたいでねえ。

> よっぽど中のケモノに襲わせたいんだろうさ。
> どんな物騒なもんがいるのやら」

 

メガーヌの言葉を受けて、扉の前に膝をつくとロックピックを鍵穴に差し入れる

指先の感覚を頼りに、ざっと内部の構造を探ると、明らかに今までの鍵とは違うピンがあった

間違いなくこれが罠に連動するピンだろう、作動しないようにゆっくりと押し上げてピックを固定し

残りの錠前を開けるピンを探るが...鍵の構造的にあるハズのピンの数が合わない

最初に固定したピックの陰になってしまっているのだろうか

 

「...ふむ...罠の方は解除できたが、錠前の方が上手く外れんな、メガーヌ頼む」

 

罠に連動するピックを押さえたまま、膝を上げてメガーヌが作業できるように場所を譲る

果たしてメガーヌに任せた結果、問題なく鍵は開いた

 

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>「げ...嫌な予感がしてたけど、やっぱこいつらか」

 

鍵を外した扉を音を立てぬように細く開き、中を覗き込んだトロンが小さく呻いた

 

>「あれはヘルハウンドっていう異界の生物の一種だよ。動きは早いし体力も結構ある、何よりあいつ獣の癖に火を吹くんだよね...前にそ> れで火傷したことがあるんだ。それにアイツは闇を見通す眼をもっているから、闇も効かない。小細工無しの勝負になるよ。ちなみに火> も効かない。可能であれば火を吹かれる前に速攻で一体は潰したいところだね」

 

...ふむ

トロンの説明を聞きながら、小さく頷く

正直一層二層は天井の光明に頼っているのか、明かりがなくては動けない敵ばかりだったが

三層に来てからは暗視の能力を持つ敵も多い、恐らくこの遺跡の製作者はそういう攻め方も見越していたのだろう

声を潜めて、戦術を立てる...どうも獣のワリに直感に優れているわけでもなく

現時点で扉がすでに開く状態になっている事に気付いていないらしい以上、不意を打てるだろう

トロンの<雷撃>を合図に一気に突入制圧する事を決定して、扉を蹴り開いた

 

>『万能たるマナよ! 雷槍となりて、貫け!』

> ぽすっ。 

>「あれっ?」

 

まずはトロンの<電撃>...と思いきや、魔力の流れが急に乱れ魔術が不発になる

 

>「・・・ま、そういうこともあるさ」

 

気は抜けたが、とりあえずトロンの声を合図に次々とヘルハウンドに向けて走り出す

カーツの魔剣が片方のヘルハウンドの喉元に深々と刺さり、苦鳴をあげて仰け反った所をガラフがトドメを刺したのを横目に

ルーサーンハンマーを振り下ろす、が、浅い

生き物の皮膚とは思えないほど弾力と硬さを兼ね備えた身体は勢いの乗ったルーサーンハンマーの一撃すら

完全とは言えない一撃に終わった

同様にメガーヌの斧もトドメを刺すには至らない

 

体勢を立て直したヘルハウンドも続けざまに全員で殴りつけ、最後にはガラフがトドメを刺した

...むぅ、私の獲物が...

 

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ヘルハウンドを片付け、部屋の探索を行った結果、部屋の奥の壁に並べてあった武器の中から

銀製のハンドアックスと同じく銀製のヘビーフレイルが使用に耐える状態で見つかった

 

ガラフが銀製のハンドアックスの握りや重さを確かめているのを見ながら

私もヘビーフレイルの感触を確かめる

 

一般には扱いづらいと言われているヘビーフレイルではあるが、私にとっては以前から使っている武器だ、難なく手に馴染む

鉄より軽い分はフランジを設けて、打撃力を補っているようだ...決してオランウータンの頬の周りの脂肪の事ではない

 

「ふむ...」

 

一通り、振るい、払い、使い心地を確かめるが、どうも持ち手に近い部分の動きがぎこちない

一度オランに戻ったら手入れが必要だろう

 

新しく手に入れた武器のこびりついた埃を落とすなどの手入れしながら話をしていた結果

腐臭のする部屋の魔物を改めて調査する事になった

先程のトロンが持つ魔剣を持っていた魔物も結局は正体が判らないまま突入する事になったり

正直、今回の探索は力押しにすぎる部分がある

ここらで気分を変えて、きちんと調査をしてから安全な策を立てて攻めていきたいところだが...

 

...ヘルハウンドを解体したいというカーツと、その護衛としてガラフを部屋に残して

腐臭のする部屋へと向かった

 

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「んむ...」

 

皆で首をひねる

結局、誰も謎の魔物の正体が掴めず、さて、どうするか、という話になる

 

皮を剥ぐのに失敗したというカーツもヘルハウンドの肉を一抱え担いできたガラフも合流して

改めて、部屋の魔物に目を向ける

...精霊ではないのは間違いないし、負の生命力も感じられないからして

魔獣や魔法生物あたりなのだろうが...

 

「ま、力押しだな」

 

腐臭というよりは、腐敗ガスに近い匂いからして炎は有効ではないかと

トロンがメガーヌの斧にファイアウェポンをかける

同様に、私とカーツもファイアウェポンに宿る炎を通して精霊へと語りかけ始めた

 

『火の精霊よ、我が導きに従え、炎の矢となりて敵を撃て』

 

先にカーツの火矢が二条に別れて飛ぶ......と思いきや、片方の火矢が突然敵の周りでグルグルと回転するばかりで

一向に魔物を打つ気配がない

続けざまに、私も火矢を放つ...が、あろう事か、私の放った火矢もカーツの不発の矢と一緒になってグルグルと回転を始め

最後には、二つの火矢同士がぶつかり合い、火花を残して消えた

 

「...たーまやー」

 

まぁ、一方は無駄になったが、カーツと私の火矢でもう一方の魔物は燃え上がるように雲散霧消した

続けて、無傷で残っていた魔物にもトロンの魔術の矢が突き刺さる

だが、一撃必殺とは行かなかった、傷を負いながらもトロンに一矢報いんと魔物が格子をすり抜け迫る

だが、そこを待機していたメガーヌの斧が薙ぎ払う

やはり事前の予想通り、火に弱かったらしい魔物は燃え上がるようにして消え去った

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魔物が消え去り、部屋の中に動く気配がなくなったのを確認して

格子戸の下を潜り、部屋に入る

 

試しに格子に手をかけて、もっと通りやすくならないものかと、持ち上げようとしてみたが

完全に壊れてるらしく、ピクリとも動かなかった

正直背中に担いでるテントやらルーサーンハンマーやらのおかげで、大分狭いのだが

 

「さて...何かあるかね、っと...」

 

とは言え、目に付くものは壊れかけた木箱の残骸くらいだが

...中に何かないものか

 

軽く揺すってみて、さらに箱を叩いてみる

 

「...右手でポカポカ、左手でポカポカ、みんな?ポカポカ......デストロォーイッ!」

 

...おっと、リズムよく叩いていたつもりが、つい、力が入って割ってしまったか