挑む者、備える

GM(Lain) 2011.05.17 [01:31]

 【暗闇】の呪文をかけられた小石が、袋から取り出された。

 魔術灯の生み出す光が小石に当たり、小石の放つ闇が魔術灯を包む。
 一瞬ののち、光と闇はともに消えた。

 残ったのは迷宮の暗がりだ――だが、完全な闇ではない。
 漏れ入る光で、手許と周囲の状況はなんとか確認できる。

 魔術灯を見上げれば、それは天井に埋め込まれた半球形の水晶とわかる。
 水晶の表面には燐光を放つ魔法文字が記されている。
 魔術師が見れば、それは、改変を加えられた【光明】の魔法の術式と解るだろう。

 ちらちらと不安定に光る術式は、しばらく待てば徐々にその光を増す。
 不安定だった燐光が安定しはじめ、さらに光を増し、その光が魔術灯の本体、水晶の中へ導かれ――
 四半刻ほどで、暗がりは再び拭い去られた。

 薄暗がりの中にあっても、精霊使いがその場に働く精霊力を見る目が失われるわけではない。

 カーツは己の友の姿をいくつか見出すだろう。

 トロンが腰に提げたランタンのゆらめく炎の中に、炎の蜥蜴。
 崩れた瓦礫の向こうに見える泥の中に、土の小人。
 水袋や水溜りの中には水の乙女。
 魔術灯の放つ光の中には光の、その光が作り出す影の中には闇の精霊。
 精神の働きを司る精霊たちの姿も見える。

 カーツが呼びかければ、彼らは彼らの力を使って応えてくれるに違いない。

 ふたたび【暗闇】の魔法をかけられた小石が、袋から取り出される。

 光の払われた中で、トロンは【暗闇】の呪文を完成させた――と、少し離れたところにある魔術灯が消える。 あとに残ったのは自然ならざる真の闇、梟や精霊使いの視覚をもってしても見通せない魔法の闇だ。

 ベルが不安そうに羽をゆする感触が、カーツの腕に伝わった。

 メガーヌとガラフの目は、しかし、その闇をも見通す。

 ――かくして準備は整った。

 メガーヌは魔剣を提げ、【暗闇】の呪文のかかった小石を持って石の従者どもの待つ部屋へ。

 セリトとトロンは施錠された部屋へ。

 カーツとガラフは、魔法陣の広間へ。

 3手に別れた冒険者たちが、それぞれの仕事に取りかかった。

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■GMから
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 宣言受領いたしました。
 ひとまずターン2、分割行動する前の描写です。