戦闘準備

ラッシュ(夏季ごおり) 2011.10.09 [00:19]

「おいでなさった・・・てか。」

 想像していたよりも数が多い。

 手際のいい仲間が、藁塚やら火矢やら、準備をしてくれていたおかげで、なんとなくなりそうだが。

「で、どうする? 柵を越えて来るところを狙い撃ちってのがいいと俺は思うんだが。」

 せっかく修理したのに、一日もたたずに壊されるのは正直癪だが。

「とはいえ、あんたらの魔法の援護がなければ前線は維持できねェ。

 特にあの魔法使いの奥様に奴らを近づけるワケにはいかねぇしな・・・。」

 要するに、柵が壊されるまでに、勝負を決めておけるか否かにかかっているわけだが、なにせ柵の強度はたがが知れている。

最低でも半数にはしておかなくてはならないが、はたしてそれができるかどうか・・・。

逆に、前線が柵の外にあれば、たとえ綻びても、それが大規模でなければ、それを繕う時間は稼げる。

「ガラフ、このパーティの要はあんただ。あんたが決めてくれ。」

 もとより戦士は前線に立つのが仕事だ。

言い方は悪いが、柵に隠れて身の安全を図るのが役目じゃない。

「死ぬつもりはさらさらないが、命を捨てる覚悟はとっくにできている。

 もともと、拾いものだからな。」

 前線が崩壊して、逃げる他なかった――そんな戦いは2度とゴメンだ。

守るべき土地を失い、戦う意義は消滅し、帰るべき場所も見失ったが、それでも命だけは失わずに済んだ。

それでも、そのことに意味があるとすれば――。

「俺は、守っているだけってのが、苦手でね。」

 黙っていれば転がり込んでくるもんじゃねぇからな。勝利ってヤツは。