錯綜する思考と感傷的な夜。

ガラフ(テッピン) 2011.10.08 [01:25]

>「ありがとう、イアン。
> わざわざ寄り道までしてくれて、調べてくれて。
> あんたのお陰でいろいろ分かったよ、助かった」

マルドルに感謝の言葉を言われただけで、イアンはしどろもどろだ。

>「は、え」

>「あー、いえっ、」

人間の男なら仕方ない反応だ。
マルドルと組む中で、同様の反応を見せる者を何人か見てきた。
種族こそ違うが、同じ男として同情を禁じ得ない。

「それにしてもマルドルよ...」

罪深き相棒に向けて、つい一言物申したくなった。

「お主は自分の持つ魅力の正しい使い方を、
 今一度学んだ方がよいと思うぞ?
 行く先々で不必要に男共を悶絶させたり興奮させるのも如何なものか、
 と思うのだが...人間や妖精にはこれといった発情期が無い故、
 尚の事女性側が自重した方がよいと思うのだがな...」

どうせ聞き流されると承知しつつも、楽しくなってきた。
こうしたやり取りが出来る内は、まだまだ気持ちに余裕がある証拠なのだ...

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作戦会議では、ラッシュが異論を挟んできた。

>「その点については、同意しかねるんだが・・・。
> 俺たちは、奴らのねぐらを発見したわけじゃない。
> 単に、村の西のほうに集団で退却する足跡を発見しただけだ。」

確かに其処は仮定で述べた所なので否定はしない。

>「あんたの意見は分からないではないが・・・。」

>「あんたが言った通り、奴らに戦術と戦略の心得があるならば、
> 前回と同じように攻めてくるとはとても思えねぇ。
> そんな相手に、守りに徹するのは危険じゃねェか?」

「ラッシュ氏よ、攻められる前に攻めんとする貴殿の考えは否定せんし、
 ワシも可能ならそうしたいと考えておる。しかし、闇雲に攻めるのは
 より危険ではないかな?」

>「あらかじめ罠を用意しておき、そこに誘導し敵を分断する。
> そうでもしないと、数で劣るこちらが不利になる。」

「貴殿の言う通り。理想は分断しての各個撃破。それが戦術の基本じゃ」

>「だからこそ、確実に敵を誘導するために、奴らの拠点を把握する必要が
> あるんじゃないか?」

ラッシュの言い分はよく分かる。分かるのだが...

「そこも貴殿の言う通りじゃ。じゃが、その拠点を突き止める為の有効な
 手段を我々が有していない現状について、いま少し認識を持って
 頂きたいですな。貴殿はイアン氏やクルト氏に危険を承知で追跡行に
 同行させるおつもりか?
 それに我々が塒を血眼になって探している隙をついて村を急襲されたら?

 繰り返すが我々の任務の第一義は『防衛』じゃ。
 貴殿の意見は尤もだと思うし、出来る事ならそうしたいが、現時点では
 おいそれと首を縦に振る事は出来ませんぞ」

議論が白熱しそうになった時。それまで聞くだけだったマルドルが、
ゆるりと話に加わってきた。

>「しかし、アジトの急襲か...面白そうだな」

まるでこれから遊びに行くみたいな言い方だ。

>「ガラフの言うとおり、野伏の技を持たぬ我々では
> 敵の本拠地へ徒に飛び込むようなもんだが、
> 『攻撃は最大の防御』とも言うしな。
> ただ、今はまだなんとも言えぬのが本音だよ。
> ガラフの意見に近しいと述べておこう」

これまたマルドルらしい。意外とこうした言い方が上手いのだ、彼女は。

>「そしてガラフの言う敵がアジトを変えてくるかどうかだが、
> ラッシュの言うとおり、確証がない。
> もし南方から襲ってきても、ねぐらは同じで
> 単に攻撃場所を移動しただけかもしれん」

「それについては否定はせん。
 あくまで先方が最低限の戦略・戦術を心得ていると仮定した上での
 推論に過ぎんからの」

>「どっちにしても、門外で動くのは明日の朝だ。
> しかし、この夜の時間を無駄にする理由も無い」

>「今はまだ推測だらけだが、ただひとつ、分かっていることがある。
> ――『妖魔は、必ず村に来る』。
> 人間を刺激すれば、自分達が殺されるかもしれぬのに、な。
> それだけ切羽詰った事情があるんだろう」

>「敵は真っ先に、家畜を連れてったんだよなあ。
> 要するに食いもんを欲している。
> この前連れ帰った家畜、ぼちぼち食べつくしてるんじゃないかなあ」

「それは確かだの」

それは簡単に導き出される推測だ。

>「何度も同じ場所――つまり、牧草地近くへ来るとなれば、
> 奴らの目的は家畜だと分かる。
> こちらにも策が講じられよう。
> 場所を変えて現れるとか、より積極的に動き出すとなれば、
> 食料をより強く欲するか、あるいは別の目的も考えられよう」

>「なあ。この夜は奴らの『行動の検証』といかんか?
> 単に守るだけでも待つだけでもない。
> 奴らの好きに動いてもらって、手の内を見せてもらうんだ」

>「これまで通り、家畜狙いの牧草地か、
> あるいは迂回して南側へ現れるか。
> 昨夜のようにただの見張りか、それとも――村を襲ってくるか」

>「あえて、動いてもらう。
> もちろん、村へ危害を加えようとしたら
> 全力で阻止するがな」

>「夜にこちらから確認できずとも、朝を待って足跡を見ればいい。
> それだけ敵の動きが、より明確になるはずだ」

それは至極尤もな意見。
大勢の方針を決めようとしていた自分とラッシュに比べて、
マルドルの意見はごく単純だった。
とにかく今晩はどうするのか、と。
そして詳しい事は敵の出方を見て明日決めようじゃないか、と。
考えようによっては問題の先送りとも取れるが、
判断の材料が決定的に欠ける現状では極めて有効な選択に思われた。

「これは迂闊じゃったな。ワシは『木を見て根を見ず』の状態に
 陥っていた訳か。先走っておったな。失礼した」

自らの非を認め、皆に謝る。頭から水を掛けられた気分だ。
同様の感想を持ったのか、ラッシュがこんな提案をしてきた。

>「夜間の警備については了解した。
> 今後のコトについては、明日の朝、改めて話し合わないか?」

それは断りようのない提案だった。

「承知した。星王はよりよい結論を出す為の熟考を奨励されておる。
 それに今日は一日中よく動いた。疲れを癒して、明日改めて話を詰める
 事にしましょうぞ」

今晩の結果を元に翌朝また話し合うという、ごく常識的な結論で会議は
終わった。

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>「"姿隠し"の魔法が使えりゃ、
> 妖魔の近くまで行って様子を見れたんだがなあ」

相棒のぼやきについつい吹き出してしまう。

「それを悔やむならこれから精霊魔法の修行に励んでくれ。
 ないものねだりは星王が堅く戒める所じゃぞ?
 それに仮に<姿隠し>の魔法を使えた所で、野伏の技術が無ければ
 どうにもなるまいて。それに...」

―――単独潜入なんて無謀な行動は、セリトに任せておけばよい。

と言い掛けて、流石に不謹慎と思い口を噤む。
そう言えば我等が首魁、紅い狼殿は息災だろうか。そこに寄り添う白い兎も。
一緒に居ると騒々しい事限りないが(本人達というよりも騒動に巻き込まれる
という意味で)、一度離れるとどうしてこうも寂しいのだろう。

(そういえば、緑に染めた熊の毛皮を買う、なんて話をしていたな...)

ふと、突然どうでもいい事を思い出してしまい、少し戸惑う。
そう言えば、イアンは狩人だった。
この任務が終わったら、熊の毛皮を用立てて貰うとするかな?
目の前の事とはかけ離れた所に、静かに思考は飛ぶ...

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先の会議を受けて、南方にも警戒を、と呼び掛けた所、アルフレドは
実直な反応を示した。

>「衛兵のうち一人は南側を重点的に見張らせましょう」

「有り難い。杞憂なら問題は無いが、何かあってからは遅いもの。
 宜しく頼みますぞ。
 それと、昼は我々が一つ借りていた呼子だが、夜は北西の門と南の門とで
 分け合った方がよいと思う。そうすれば、容易に襲撃の有無が分かるからの」

と、続けて呼子の使い方についてアルフレドに依頼をしておいた。

さて、マルドルはアルフレドに灯りについて提案する。

>「火は、より多く焚こう。
> 夜の闇は、そうでなくとも人の心に不安を与える。
> 光は、敵に我々の警戒をアピールすると同時に、
> 不安に怯える村の女子供を幾らか安心させてくれよう」

>「なるほど、道理です」

更にマルドルはもう一つ案を考えていた。

>「――そうだ、仮に牧草地や森の近くで、
> 夜、我々冒険者と妖魔が衝突する事態となって。
> 『明かり』の支援は可能だろうか?
> 松明を投げる、あるいは火矢を射掛ける等の行動は、できるだろうか。
> もちろん、距離の問題もあるから無理にとはいわぬが――」

そその提案はアルフレドに少なからぬ刺激を与えたようだ。

>「松明を投げる程度なら、準備しておけばさほど難しくないでしょう。
> 火種は篝火がありますから、防柵に沿っていくつか置いておけば
> 問題ないはずです」

>「もともと松明は手に持って使うものです。
> 地面に落としてどれだけ火が保つものか、
> そもそも明かりがそう遠くまで届くものなのか――」

>「火矢。――火矢ですか」

>「照明に使うものではないので、火矢だけではどうにもなりません。
> 無論、松明を投げるよりははるかに遠くまで届きますが、
> 燃えるものが周囲になければただの――」

>「干草、藁束、薪、そんなものを積み上げておけば、
> そこへ射込むことで明かりが作れます」

あらかじめ燃えそうな物を特定の場所に設置しておき、有事の際は
火矢を打ち込んで灯りとする案がまとまった。

>「なるほど、藁塚か。燃える物をあらかじめ用意しておけば...!」

「見事なものじゃな。マルドルとアルフレド氏が智恵を合わせた結果、
 新たな智恵が生まれた。これぞ星王が説く『直感』と言うものじゃ。
 ワシは今感動しましたぞ!」

見事な二人の連携に嬉しくなり、つい熱く語ってしまった。

>「藁塚はボリスとクラエスに用意させましょう。
> 火矢は私が作って持っておきます」

「有り難い。宜しく頼みますぞ」

>「ただし、時間はそう長く持ちません。
> 小半刻も持つかどうか」

アルフレドは長時間持たない事を心配していたが、

>「いや、充分だ。初手をカバーできれば、後は何とかなる」

そこはマルドルの言う通りだ。

>「北西の門の正面、牧草地との境目にひとつ。
> その手前の耕地から柵沿いの牧草地にかけて4つ、
> というところでどうでしょうか」

「数はそれで十分と思われますな」

多すぎても手間がかかるだけだし、そんな数多くの藁塚へと悠長に矢を
射込んでる余裕などないだろう。

>「柵の近辺は問題ないでしょうが、牧草地との境へ向かうときは
> 見張りをお願いします」

>「ああ、分かった」

「承知致した。しかと、護衛を勤めましょうぞ」

従士長へと、力強く頷き返した。

***********************************

マルドルと北西部の牧草地を重点的に警戒する。

>「――闇が来るな...」

マルドルが話し掛けてきた。

>「何事もなくて良かったが、夜が明けるまで油断できんな...」

「出来ればこれからも何も起きない事を願うがの。先方がうっかり何処からか
 奪ってきた酒を飲みすぎて、朝まで酔いつぶれてくれればと心の底から
 思うよ」

我ながら、何とまあ気の利かぬ冗談を喋っていると従士長殿が挨拶にやってきた。

>「敵影未だ見えず、ですか」

>「ああ...静かだ」

先の自分との会話に流されたか、マルドルが珍しく感傷的な事を言い始めた。

>「私も、このまま何も起こらず5日間が終わればいいと思ってる。
> 妖魔どもは人間の警戒の強さに怯み、諦め、ひっそり退却。
> 私らはこの村でのんびり退屈な時間を過ごす
> ――この無駄飯ぐらいって、村人に陰口を叩かれながら、な。
> そうして、子爵の騎士団と交代して、平和な村を離れる――」

思った以上にマルドルには詩人の才能があるらしい。

「違いない。無駄飯喰らいと呼ばれるのは、護衛の最も理想的な姿じゃ」

相棒の願いを理解し、自然と頬が緩む。

>「何せひとたび戦いが始まれば、血が流れずにはおられん。
> 斬られると痛いしなあ。痛いのは勘弁して欲しいものだ」

>「まったくです」

この二人の言葉には実感が篭っていた。
アルフレドは、傍らの兵士の姿を見つめながら、呟く。

>「彼らにはまだ実戦の――この類の命のやり取りの経験がありません」

>「?」

突然何を、といった表情のマルドル。

>「若く体力に優れた者を集めた、と申しましたが」

>「養う家族やそれに準ずるものがないこと。
> そして、嗣子でないこと」

>「彼らにはあとのふたつの条件を伝えていません」

要するに死んでも後腐れのない、身の軽い若者を集めたという事。
実直なアルフレドには、事実を隠しているという後ろめたさがあるのだろう。

>「もし私が倒れたときは、」

>「どうか、彼らを頼みます」

些か感傷的だが、彼の誠実さと抱える責任の重さが篭った言葉だった。
それを知ってか、マルドルが熱く語り出した。

>「あんたは死なん。あんたが死ぬ前に、まず冒険者が倒れるからさ」

>「でも、我々は勝って、生き残る。必ずな」

>「だから、あんたは死なんのさ。
> というか、そんなヒヨっこをほったらかして死ねる訳ないって」

>「あんたが一番良く分かってるはずだろう?」

不器用だが熱の篭った言葉。まるで言葉に火の精霊が宿っているかのようだ。

「加えて言わせて貰えば、ワシが居る。
 ワシの力が及ぶ限り、誰が傷つこうが必ず癒してみせよう。
 それまでは、誰であろうが倒れさせはせんよ、決してな」

夜の空気に自分も飲まれたか。柄にも無い事を言ってしまった。

>「巡回、よろしく頼む。じき、妖魔どもの時間だ」

照れ隠しか、マルドルは話を適当に切り上げてしまった。
照れる位なら言わなくてもよかろうに。と思いつつ、
改めて心優しき相棒に好感を抱く。

>「いつもああなのですか、彼女は」

「ああ、いつもああじゃよ。
 ワシは彼女が戦乙女の生まれ変わりのように思えてならん」

相棒への賞賛を、本人に聞こえないようにこっそり言う。

>「マルドルさんはああ言われますが」

>「どうにも最悪の事態というのを考えてしまいます」

それはアルフレドの立場からすれば当然の事。
 
「貴殿のように責任ある立場の者は、常に最悪の事態を想定した上で
 行動する。それが望ましい。
 我々冒険者は自ら危険に飛び込むような輩の集まりじゃ、
 マルドルの有り様は立派だが、褒められるものではないし、
 貴殿が真似をする必要はないと思いますぞ」

慰めのつもりでもなく、本当にそう思う。

>「防柵が突破された場合については、なにかお考えですか」

>「無論、1匹2匹であればいかようにも対処はできるでしょうが」

>「少なくとも、村人をまとめて逃がさねばなりません」

「仰る通りですな。12匹の妖魔の群れが如何な手段を用いて防柵を突破する
 のか、その手段が推測出来れば自ずと打つ手は見えてくるのだが...
 油を撒いて火矢を射掛けるか?丸太で突撃してくるか?
 仮に突破したとして、一斉に12匹が突入するだけの隙間は出来ない筈、
 むしろその隙間を通る瞬間に矢を集中させれば容易く数を減らせるか...?」

我ながらよい案が思いついたが、話題が剃れてしまったので軌道修正する。
わざと防柵に脆い箇所を作ってわざと突破させた所を狙い打ちにする案は、
明日提案する事にしよう。

「突破された場合、村人は襲撃方向とは反対側に逃げるのが筋でしょうな。
 安全面からも、散り散りにならずまとまって移動した方が好ましい。
 南に逃げるのであれば街道沿い、北西に逃げるなら牧草地から狩人の
 誘導で森か。村長の家に全員で立て篭もるというのもあるが、
 火責めにされたらまんまと皆殺しにされてしまうだけだしの...
 ワシだけでは考えがまとまらん。これは要検討事項じゃな」

長々と喋って考えがまとまらないのは申し訳なく思う。
しかし、これは個人で決められるものではないのだ。

>「私と衛兵、それにあなたがた冒険者。
> 妖魔どもの阻止と、村人たちの誘導。
> どちらがどちらを担うべきか、あらかじめ決めておくべきかもしれませんね」

「貴殿の言う通りですな。役割はあらかじめ決めておいた方が、
 有事の際に迅速に行動出来ると思われる。
 村人の誘導と護衛は貴殿等従士隊に一任したいとワシは考えておる。
 妖魔の阻止こそ我々に任せて頂きたい」

この点についてはおそらく満場の一致を得られるだろう。 

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PLより:体調崩したり残業続きだったりの亀レスで本当申し訳ありません!
     m(_ _)m
     レスを返すのに半端じゃない時間かかった、LainさんとLINTSさん
     熱いぜえ...
     防柵突破時の対応については翌朝に話をしたいですね!

     >夏季ごおりさん

      本文では喧嘩腰ですが、ガラフの性格(慎重派+神官)を考慮
      してのRPですのでどうかお許しください!(>人<)
      PLとしてはアジト急襲&分断作戦は是非やりたいのです!
      必死に説得してイアンを連れていけないものか...と画策中です!

     >LINTSさん

      マルドル漢過ぎます(笑)色んな所で絡んでますがどうか
      ご容赦を!

     【行動宣言】

      01.アルフレドに呼子を返し、南北の門番で分けて持つように
        依頼します。

      02.マルドルと共に北西の牧草地を中心に警戒態勢を取ります。

      HP22/22 MP23/24 インスピ:未使用