隊長の願い

マルドル(LINTS) 2011.10.06 [16:31]

私の突然の申し出に、チルグラは小気味よく即答した。

すぐさま、目の前の小石は光り輝く。
「眩しいものだな」
間近で見る魔法の光に、目を細めた。

  >「ふう、ちょっと疲れた!このぐらいで疲れるなんて、まだまだねぇ。

  >眠りの雲とか、だれか一人のちからを強くするぐらいはまだ今でも気力残ってるはずですわ。

  >この夜にゴブリンがこないといいのだけれど!!」

「そう願うよ」

受け取りながら、チルグラへ笑いかける。
そのまま、

  >「あたくし、今のうちに、寝ておきますわ」

「ああ、ゆっくり休んでくれ」

ありがとう、と彼女を見送った。


夜間の戦闘で、もっとも懸念すべきこと――光源の確保。
ガラフは夜目が効くし、私は熱源を視ることが出来る、
しかし、戦いは二人で出来るもんじゃあない。
幸いライトの光源は二つ。手元に置くことも、敵陣へ投げ込むこともできる。
だが、万が一ということもある。

仲間の視界確保も重要だし、
何より防柵内でも妖魔の行動を把握できねば、
衛兵達の行動にも影響する。

明かりの支援はできぬか。
そんな私の相談に、アルフレドはより有効な方法を示した。

「なるほど、藁塚か。燃える物をあらかじめ用意しておけば...!」

これなら敵が出没しても、即座に対応する地域へ明かりが灯せる。
我々にはチルグラのライトがあるが、
肝心の敵の出没地が真っ暗では、どうしても後手に回りがちだ。

  >「ただし、時間はそう長く持ちません。
  >小半刻も持つかどうか」

「いや、充分だ。初手をカバーできれば、後は何とかなる」

むしろ、このチャンスをきちんと活かさねばなるまい。


その後のアルフレドの対処も素早く、藁塚を置く場所も適切だった。
舌を巻かざるを得ない。

  >「柵の近辺は問題ないでしょうが、牧草地との境へ向かうときは見張りをお願いします」

「ああ、分かった」

アルフレドに従い、牧草地での藁塚の設置は、
衛兵らと共に村を出て、作業の間中見張りに立つ。
森の奥深くを見通す――幸い、妖魔どもの気配は無かった。


明かりの準備は整った。

村の中は寝静まり、動くのは見回りの衛兵と私とガラフだけ。
防柵の中から外を望み、ふと見上げれば月が山陰へさしかかろうとしている。

「――闇が来るな...」
ガラフへ、話しかける。
月が没すれば、完全な闇夜だ。
「何事もなくて良かったが、夜が明けるまで油断できんな...」


そこへ、

  >「敵影未だ見えず、ですか」

アルフレドが顔を出す。

「ああ...静かだ」

柵の外は、不気味なほど静まり返っている。
『来ねば来ぬほうがよいのですがね』と小さく笑う彼に、私も頷いた。

「私も、このまま何も起こらず5日間が終わればいいと思ってる。
 妖魔どもは人間の警戒の強さに怯み、諦め、ひっそり退却。
 私らはこの村でのんびり退屈な時間を過ごす
 ――この無駄飯ぐらいって、村人に陰口を叩かれながら、な。
 そうして、子爵の騎士団と交代して、平和な村を離れる――」

私らには肩透かしなことだが、この村にとって一番幸せな解決方法だ。

「何せひとたび戦いが始まれば、血が流れずにはおられん。
 斬られると痛いしなあ。痛いのは勘弁して欲しいものだ」

戦士のくせに何を、と言われそうなことを言って、一人笑った。

ふと、アルフレドの視線を追う。
その先には、見張りの衛兵が一人。
彼は確か、クラエスと言ったか。

  >「彼らにはまだ実戦の――この類の命のやり取りの経験がありません」

「?」

唐突に何を言い出すのか、と尋ねようと思い――口をつぐんだ。

そこにあるのは、一人の戦士の長の願いだった。
未熟な部下達の身を案じ、ひたすら生還を望む。
一人ひとりの部下の後ろにある、彼らの家族の願いでもあるのだと。
そして彼は、全てを一身に背負い、その重圧に耐えているのだと。

アルフレドはよく分かっている。
戦場では、自分の身は自分で守ることが大前提だということを。
初陣だからと、言い訳は通用しない。
自分を守りきれて、初めて他者を守れる。
自分を守ることができねば、死が待っている現実――。


  >「もし私が倒れたときは、」

  >「どうか、彼らを頼みます」


下げた頭を上げ、再びあげたその瞳。
『隊長』の仮面を付け直した彼の背を無言で見つめる。

彼の背負う責任、その重圧にしばし思いをはせ、

「あんたは死なん。あんたが死ぬ前に、まず冒険者が倒れるからさ」

「でも、我々は勝って、生き残る。必ずな」

少し足早に歩き、アルフレドに追いついて。

「だから、あんたは死なんのさ。
 というか、そんなヒヨっこをほったらかして死ねる訳ないって」

軽く拳を握り、すり抜け様アルフレドの肩をポンと叩いた。

「あんたが一番良く分かってるはずだろう?」

振り向きもせず、拳を開いて高く掲げ、ひらひら振った。
あんたの気持ちだけ、受け取っとくぜ、と。言葉にせず伝えた。

「巡回、よろしく頼む。じき、妖魔どもの時間だ」



PL>
アルフレドさんフラグ立てないでえええ((((;゚Д゚)))ガクブル

チルグラライトありがとうございます!
ひとまずマルドルが預かっておきますね。

それにしても、マルドルの振る舞いからどんどん女っ気が抜けていきます|``)
彼女は本当に女性なのでしょうか。もしかすると男の娘ぐはっ(殴