戦略談義

ラッシュ(夏季ごおり) 2011.10.01 [03:26]

〉「修理が早めに終わって良かった。
 不安材料は少しでも早く無くすに限るものな」
 
 起きてきたマルドルに声をかける。

「疲れはとれたか?」
 
 とりあえず、何事もなく柵の補修が済んだのは良かった。
防御柵があるなら、飛び道具を用意しておけば良かったな、などと考えても、いまさらだが。
 
〉「調査は、妖魔が出没したあたりを重点的にみた方がいいだろうな」
 
「足跡を追えれば、巣も分かるだろうしな。」
 
明るいうちならば、あるいは急襲できるかもしれない。問題は敵の数だが。

〉「狩人親子を襲った妖魔がそっち方面へ退却したということは、
 その奥に敵さんのアジトがあると考えて自然だろう」
 
「ああ、だろうな。」
 
 この村を襲う特別な理由がないのであれば、わざわざ数日かけて攻め込んだりはしない。
せいぜい数時間で移動できる範囲だろう。
半日かけて攻めたのでは、万一の場合、帰還することもできず、ほとんど特攻となる。
しっかりしたリーダー格がいたようだし、いくらなんでもそのような戦術はとらないだろう。
 複数の部隊が波状攻撃をかける、というのが奴らの戦術のようだが、すでに何度も村を襲っているとなれば、長期にわたって連絡を取り合わないはずはない。
必ず、作戦本部なり拠点なりがどこかにあるはずだ。
 
〉「あと、全員が村へ行くのは警備が手薄になる。
〉 私は村の警備に残ろう」
 
「妖魔どもが、警戒されているにもかかわらず、昼間から攻めてくるとは思えないがな・・・。」
 
 何度も襲撃をして警戒されているのが明白なのだから、確率が高いのは奇襲だろう。
暗闇を見通せるのだから、夜動いたほうが、奴らには都合がいいはずだ。
 
「士従長と衛兵たちに任せてもいいんじゃないか?」
 
 いくら守りが手薄になるといっても、村人たちを避難させることくらいはできるだろう。
人間の村を占拠する価値は妖魔にはないだろうから、襲撃目的はおそらく家畜や作物だろう。
むこうにしてみれば、人間なんて食料の護衛役でしかなく、人間をいかにそれらから引き離すか、がキモなワケだ。
 
「すべてを守るには、村は広大すぎる。
 どのみち、俺たちだけでは守りきれやしないさ。
 だからこそ、奴らの拠点を探し出し、そこを叩く必要がある。そうじゃないか?」
 
 俺たちがこの村に着いたことで、村人たちはある程度落ち着いたはずだ。
昼間は村人たちに警備を任せ、俺たちは夜間の警備に徹する、 というのも一つの手だ。
村人たちに笛か何かを持たせて、異常があれば合図をさせる。
そうすれば、俺たちがすぐに駆けつける、くらいでいいんじゃないか。
 そう提案した。
 
「足跡がごちゃごちゃしないうちに、早いところ調べておかないと拠点を見つけられなくなってしまう。
 俺は、守っているだけってのが、苦手でね。」
 
 猟師の親子が襲撃された場所がすでに奴らのテリトリーならば、戦闘の可能性もある。
なかったとしても、こちらが動いたことを見せつけることで、向こうも守りを意識せざるを得なくなる。
その程度で襲撃をあきらめてくれるとは到底思えないが、昼間に動くことは抑制できるかもしれない。
 
「そういえば聞き逃していたんだが・・・。
 最初、この村が襲撃されてのは昼間だったのか?」
 
 いまさら、どうでもいいような情報ではあるけれど。
確認するだけはしてみたのだった。