早食い競争

ラッシュ(夏季ごおり) 2011.09.20 [00:00]

〉「あー、うまかった。ごちそうさま。あ、皿は最後に食い終わったやつが全部持っていくことな」

(んぐっ。)

 ごっくん。

「え、てめぇ、勝手にルール決めんじゃねーよっ!」

 そして、さも当然のように皿を置いて行くな。

(こんなことなら、がっつくんじゃなかったぜ・・。)

 傭兵という職業柄、食える時にたらふく食うというのが習慣になっている。

戦場では食事なんかとっている暇がなかったりするし、敗戦にでもなればそれこそ食べるものすらなくなったりする。

実際、それに近い状況がつい最近まであったわけだが・・・。

「・・・苦手なものまで入れるんじゃなかったぜ・・・。」

 皿に残ったニンジンを恨めしそうに見てしまう。

食えないワケじゃないが、どうにも好きになれない味なのだ。

根野菜は栄養価が高く腹もちもいい。無理にでも食べておけ、というのが隊のルールだった。

「水を貰えるか?」

コップを受け取ると、残った料理を一気に水で流し込む。

背後でリュエンの声がした。

〉「んじゃ先に寝るわ。明日からお互い頑張ろうや。おやすみ」

 こいつは突っ走るタイプだな。

なんとなくそう思った。

「ごちそうさま。」

 そう言って、やっと空になった皿を積み重ねた。

「そういうわけで、俺も、寝るわ。皿洗いは任せた。」

 こういうコトは逃げるが勝ちだ。

早食いも傭兵には必要なスキルの一つだぜ。