会談

GM(Lain) 2011.09.17 [00:17]

 待つことしばし、村長であるという老人が一行のもとへ現れた。
 皺の刻まれた顔には疲労の色が浮かんでいるが、足取りはしっかりとしたものだ。

「ヘルナーともうします。
 方々、暗い中、遠路をよく来てくださいました。ありがとうございます」

 彼はまず名乗って礼を述べ、

「ミスルトゥのマルドル様はどちらにおられますか」

 己に面会を求めたマルドルの名を呼んだ。

※ ※ ※

 挨拶を交わし、立ち話もなんですから、と一行は村長の家へ案内された。

 暖めなおしたスープと堅いパン、といういささか質素なものではあるが、食事が供される。
 衛兵たちは食事もそこそこにあてがわれた寝床へ潜り込み、寝入ってしまった。

 旅慣れた冒険者ですら拭いきれない疲労を感じる道中だったのだ。
 若いとはいえ強行軍、それも闇夜とあっては無理からぬことだろう。

 改めて向き合った村長は、子爵からの書状のとおり、冒険者たちに協力を惜しまぬ心算のようだ。

> 「この先どうするかを決めるため、さまざまな質問をさせていただこうと思う。
>  くどくどとした内容になるかもしれぬ、先にその無礼をお詫びしたい」

 マルドルの言葉にも、そんな無礼などと、と逆に恐縮した様子である。

> 「報せを伝えてくれた者は、現在、子爵殿の館で養生している。
>  今はひどく怯えているそうだが、大事は無いとのこと。
>  早晩元気を取り戻し、村へ戻ってこよう」

 まずは送り出した村人の無事を知らされて安堵したか、幾分表情が和らぐ。
 そうですか無事でしたか、いやよかった、と大きく息をついた。

> 「彼が報せてくれたことで、こちらで把握しているのは、
>  『家畜が襲われ、村人にも負傷者が出た』
>  『妖魔の数は約10』
>  『妖魔たちは家畜を奪い、北西の森へ去った』
>  と言うことだが、それで良いだろうか。
>  より詳しい状況が分かれば、話してもらえるとありがたい」

「はい、間違いありません。
 詳しい状況、ですか――実は、」

 家畜が騒ぐのを聞きつけ、弓矢を携えて柵の外へ出た猟師の親子がおりまして、と彼は言う。

 熊や狼の類であれば、松明をかざして矢を射掛けてやればそれだけで大方は逃げてしまう。
 妖魔でも数が少なければ、さほどの大事にはならない。
 妖魔は妖魔で命が惜しいゆえ、激しい抵抗を受けると知れば諦めることのほうが多いのだ。

 だが不幸にして妖魔はこれまでにない数で村を襲った。

 村の中でも、怪我をした猟師の悲鳴と家畜の鳴き声、そして太鼓の音が聞こえた、という。

「父親は大怪我を負って臥せっております。
 話のできるような状態では、残念ながら――。
 息子ならばあるいは、いますこし詳しい話をお聞かせできるかもしれませんが」

 食器を片付けていた妻に、外にいる誰かに声をかけてヨーセフの倅を呼びに遣らせてくれ、と伝える。
 妻は頷き、片付けを一段落させると扉を開けて遠慮のない声で夫の指示を繰り返した。

> 「妖魔の襲撃は、初めてのことか。
>  今まで妖魔に襲われたり、目撃されたことはあるか」

「まったくない、ということはありませんが、ここ数年は平穏なものでした。
 村が襲われたことはありませんし、妖魔を見たというのも村を離れて狩りをする猟師が遠目に見た、という程度でして」

> 「目撃された妖魔の中には、大型種(ホブゴブリン)や
>  上位種(ロード、シャーマン)がいる、と言う話だが、本当だろうか。
>  本当だとすれば、その数は分かるだろうか。
>  あるいは、それ以外の妖魔や怪物の目撃はあるか?」

「ゴブリンどもよりも大柄な妖魔がいた、とは聞いております。
 とはいえ、私が見たわけではありませんし、見た者も暗い中、慌ててもおりましょうから、確かなことはなんとも。
 私が聞いたところでは、妖魔どもは闇雲に暴れるでもなく襲ってきたという話です。
 誰かに率いられていたのかもしれません。
 他の妖魔や怪物がいたという話は聞いておりません」

> 「先ほど、村を見張ってた妖魔は西の森に去った。
>  家畜を襲った妖魔も北西方向へ消えたと言うが、
>  そちらに妖魔が身を隠せそうな洞窟などはあるだろうか。
>  あるとすれば、村からどれくらいの距離で、どのような形状だろうか」

「そういった洞窟などは存じません。
 土砂崩れやなにかで新たにできた、ということもあるかもしれませんが、あるとしてもそう近くはないでしょう」

> 「仮に篭城するとして、村に5日間分の蓄えはあるだろうか。
>  防柵の備えは、繰り返されるだろう妖魔の襲撃に耐えられると思うか」

「蓄えは十分にあります。
 必要とあらば一月二月は篭もることもできましょう。
 防柵は・・・・・・手を入れるようにはしておりますが、取り付かれたときに支えきれるかどうか。
 実際にご覧いただいたほうがよいかもしれません」

> 「あと、我々には野伏の技を持つものがおらぬ。
>  それにこの辺りの地形に明るくない。
>  森の中に入って調査をしたり、罠を張ったりする際
>  狩人か、あるいはこの近辺の地形に詳しいものの協力を得たく思うが、
>  どうだろうか?」

「なるほど、道理です。
 昼間、村からあまり離れなければさほど問題はありますまい」

 誰がいいかな、ヨーセフ・・・・・・は無理だからあそこの倅か。
 問われた妻は、あんたあの子も怪我してたろ、と答える。

 そうだったな、と返した村長の表情は苦い。

「ご案内できそうな者はおりますが、生憎昨日の一件で怪我をしておりまして・・・・・・」

※ ※ ※

 扉の外が騒がしくなる。

 突然、ノックも声もなしに扉が開けられた。
 ばん、と大きな音が響く。

 奴らまた来たのか、と色めきたつ村長に、息も整わない村人が戸口から叫んだ。

「長ァ、ヨーセフが、ヨーセフの奴が」

「・・・・・・助かったよォ」

 村長は大きく息を吐き、どさりと椅子に腰を落とした。

「――あなた方のお仲間、ですかな」

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■GMから

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 お待たせしました村長との会見レスです。
 抜けなどありましたらご指摘ください!

 なお、現状ここにいるのはガラフとクーフェリアスを除いた希望者のみです。