その事情

GM(Lain) 2011.09.07 [21:10]

> 「話はわかった。俺は請ける」
> 「俺もだ。断る理由はないな。」

 ふたりの即答を聞き、フリクセルは笑みを浮かべて頷く。
 即断したその態度を、好ましいものと見た様子だ。

> 「セレンソン卿、いくつか質問を許されたい。

「私に答えられることであれば、いかようなものでも」

>  口の悪さは、育ちの悪さだと思っていただきたい、すまぬ」

「率直な方ですね、貴女は」

 ふたたび笑みを浮かべたその表情で、それは些細な問題だ、と語っている。

 戻ってきた使用人が、各々の注文した飲み物を給仕する。
 器の触れ合うかすかな音が、部屋に響いた。

※ ※ ※

 口々に応諾の意を示す冒険者たちに、フリクセルは目礼して謝意を表す。

> 「全員の意思が確認できたところで、途中出た質問にお答えいただけますか」
> 「その後は時間をかけずにサクっと出発するつもりだ...ですが、そのつもりでいいんですかね」

「ええ、できうる限りお答えしましょう。
 その後は仰るとおり、急ぎ出立していただきたい。
 食糧と地図の写し、村長への紹介状を用意しました。
 後ほどお渡ししましょう」

※ ※ ※

> 「同行いただける衛視の数と実力は、いかほどになろうか?」

「もっともな疑問です。のちほど従士長を呼びましょう。
 力量のほどは直にお会いいただいた方が解りやすいでしょうから。
 衛兵たちの力量は彼にお尋ねください。数は従士長のほか5名、あわせて6名です」

 アルフレドを呼びなさい。
 使用人のひとりにフリクセルはそう声をかけた。

> 「ハルストレームの村の備えは、どのようになっているのだろうか。
>  柵や武具などの有無、村の侵入路、戦える人間の有無を知りたい」

> 「妖魔がどこから来て、どちらへ去って行ったか分かるだろうか。
>  一方方向から来たか、複数方向から来たかで我々の対処も変わろう」

> 「妖魔が潜むと思われる場所の目星は、把握しておられるか?
>  流れの妖魔であっても、彼らが滞在しやすい山や森の洞穴とか、あるかもしれん」

 次々と出る質問を、フリクセルは嫌がる様子もなく聞いている。

 マルドルの質問が途切れるとフリクセルは振り返り、控えていた使用人に頷く。
 使用人は部屋に作りつけられた棚のひとつから絵図を取り出し、フリクセルに手渡した。

「絵図があります。
 これを見ながらの説明が解りやすいでしょう」

 フリクセルは、円卓に広げられた地図に並べて絵図を置く。

 

hallstrem_map.png「正確さがどの程度のものであるか、いささかの不安は残りますが」

 概略はこれで説明できましょう、と彼は語る。

「まずハルストレームに至る道ですが、エフライム川、続いてイェルム川の河畔を遡ります。
 フラナリー街道に出るまでは、道が整備されておりません。猟師が使う踏み跡のような道となりましょう。
 フラナリー街道から先は、細いながら道があります。小ぶりな荷馬車であれば何とか通れる、という程度のものですが」

 さきに円卓に広げていた地図の上、移動経路を指でなぞりながら子爵は淡々と説明する。

「イェルム川を渡った先が」

 絵図を示し、

「この村、ハルストレームです」

「耕地があり、その外、西側に家畜を放牧するための牧草地。
 まわりは森に囲まれています」

「村の主要部、村人の家がある場所には防柵があります。
 高さは人の背丈よりやや高い程度でしょうか。
 妖魔の襲撃には、十分とは言えないまでも抵抗の役に立つ筈です」

「防柵の出入り口は3箇所です。
 橋のたもと、その西側、南東の街道沿い」

「妖魔の襲撃は、村の北西部に広がる牧草地において行われました。
 家畜が騒ぐのを聞きつけて駆けつけた村民は妖魔どもの攻撃で重傷者を出し、防柵の中へ逃げ込みました。
 妖魔どもは数匹の家畜を捕らえてそのまま北西の森に消えた、とのことです」

「残念ながら、今のところ、妖魔どもが潜む場所は目星すらついておりません。
 ハルストレームでさらに詳しく訊けばあるいは誰か知る者があるかもしれませんが」

「武具や戦える者についてですが、村に兵士はおりません。
 狩人は幾人かいるとは思われますが、それが何人か、実際に戦えるか、といったところまでは解りません。
 今朝方この館を訪れた村人に直接お会いいただければ、襲撃の件や村の戦備について、より詳しく知れましょう」

 まだ気が動転しているようなので、詳しい話を聞きだすにいささか時間はかかるかもしれませんが、と付け加えた。

> 「あと、僭越ながら、金属鎧を貸していただくことは出来るだろうか?」

「金属鎧、ですか」

 フリクセルは使用人を振り返り、女性の身体に合うものはあったかな、と問う。
 ございません、と使用人は答えた。

「申し訳ありませんがお聞きのとおりです。
 従士が用いるものを調整することはできましょうが」

 身体の動きを阻害せぬように鎧を調整するには時間がかかる。
 おそらくそれで半日かそこらは潰れてしまうだろう。

「私は、次の襲撃がいつあるか解らぬ以上、あなた方になるべく早く現地へ赴いていただきたい、とそのように考えておりますが」

 言葉を切り、マルドルに視線を向けて微笑む。

「備えの整わぬままに戦って敗れるようなことがあってはならない、とも思います。
 ゆえに、貴女が望まれるのであれば、喜んで用意をさせましょう」

 ――いかがなさいますか?

 柔和な表情のままに、彼は問い返した。

※ ※ ※

> 「騎士団の行動とは、前回の報告しました
>  古い『砦』のこと・・・とはまた別のことですかしらん?
>  あそこってどうなったのでしょう?」

「覚えておいででしたか。
 ――いや、貴女なら覚えていない筈もありませんね。
 砦へ出向いているわけではありませんが、無関係というわけでもありません。
 砦の件、調査は概ね済んでおりますが、いまだ一件落着とは」

 広く知らせていることではありません、これ以上は。

 どこか済まなさそうな表情で、フリクセルはそう言った。

※ ※ ※

> 「子爵殿、ワシからも質問をさせて頂いて宜しいでしょうか。
>  先の襲撃では、どれ位の数の妖魔が襲ってきたかご存知であれば
>  教えて頂けますかな?

「10ほど、と聞いております」

 これも詳しくお知りになりたければ、伝聞よりも村人にお聞きになるのがよろしいでしょう。
 いかがなさいますか、とフリクセルは問う。

 アンセルムでの準備を優先するのか、ハルストレームへの到着を第一義とするのか。
 それらも含めて、フリクセルは冒険者たちに任せる心算のようだ。

※ ※ ※

 扉がノックされた。

「アルフレド、参りました」

 扉の外から、男の声がそう告げる。

 入りなさい、とフリクセルが応じ、扉が開かれた。

 剣を佩き、革製の鎧を身に付けた男性が部屋に入ってくる。
 年のころは30をいくらか過ぎたくらいだろうか。
 短く刈った黒髪に濃い灰色の瞳。
 従士長と言うだけあって、鍛え込まれた身体つきだ――並の妖魔が相手であれば、そう遅れを取ることはないだろう。

「彼がこの館の従士長、アルフレドです」

 冒険者たちに向けてフリクセルはそう紹介し、従士長は黙したまま一礼した。

「アルフレド、こちらがハルストレーム防衛の任をお請けくださった方々です」

 ひとりずつ紹介し、

「お前はこの方々と協力して事に当たるように。
 同行する衛兵たちにもそのように伝えなさい。
 出発はこの方々の用意が済み次第。刻限は追って伝えます。
 それから、この方々に同行する衛兵たちの力量の程をお伝えしなさい」

 手短に命じた。

 アルフレドは一歩進み出て一礼し、率直な口調で話し始める。

「アルフレドです。
 よろしくお願いいたします」

「同行する者は衛兵のうち、若く体力に優れた者を集めました。
 しかし、もとより街中の治安を守らんがための衛兵です。
 街の外で妖魔と矛を交えた経験のある者はおりません。
 武器は槍と弓を携行する予定でおり、いずれも一通りの訓練はしておりますが、弓は練兵場で的を射たことがあるのみです」

 一旦言葉を切り、傍らのフリクセルに目顔で問う。
 フリクセルは頷いてそれに答えた。

 アルフレドが続ける。

「率直に申し上げて、積極的な攻撃を行える練度ではありません。
 適切な場所に拠って防御を行う任に辛うじて堪える程度です。
 野戦で正面から攻撃に晒されれば、幾許かの時間と生命を引き換えることになりましょう」

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■GMから

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 質問にお答えしたらえらく長くなった件について。
 抜けている質問などありましたら遠慮なくご指摘くださいませ!

>みなさま

◆行動方針について
 別途記事「時間の管理について」とこの下の補足をお読みいただいた上で、以下の事項を決めてください。

・武具の調達や事情聴取を行うか否か

・ハルストレームへの移動方法
 通常移動強行軍か、夜間の移動を行うか否か

 パーティとしての方針が決まりましたらどなたか宣言をどうぞ!


>テッピンさん

>  メタ質問です!鉄製の鎧を着た状態で、センスオーラと
>  インフラビジョンは使えるのでしょうか?

 SNEの見解では使えない、とするようです
 GMも本セッションにおいてはこの見解を支持します。


>みなさま

◆補足1:地図について

 ハルストレームの絵図のうち、茶色の部分が耕地や居住地など、薄い緑が牧草地、濃い緑が山林です。
 また、村を南西から北東に横切る褐色の実線が街道、村を囲うような形の点線が防柵です。
 濃いグレーの部分が門とお考えください。

 防柵の高さは2mほどです。


◆補足2:従士長と衛兵たちについて

 従士:子爵配下の兵士で平民、軍事要員です。
 衛兵:街の雇人で平民、治安要員です。

 従士長は従士を束ねる立場にあります。
 概ね従士の中で年長であり、武技や統率に優れた者が任じられます。

 衛兵は戦闘を主務とするわけではありませんが、万が一のために(今回はまさにその万が一のケースなわけですが)一通りの戦闘に関する教練を受けていることが多いようです。

 データ的には、従士長は「兵士長」、衛兵は「一般兵士」です

 なお衛兵の実力について「攻撃には使えない、防御なら辛うじて」とアルフレドが語っていますが、これは「攻勢作戦には使えない、拠点防衛のように優位地形を確保してそこに篭もれる作戦なら辛うじて」という程度の意味です。
 戦闘オプションとしての防御専念しかできない、というわけではありません。


◆補足3:「大柄な妖魔」について

 前回の書き込みですっかり失念しておりましたが、フリクセルの話に出てきた「大柄な妖魔」についてもセージ技能による怪物判定を行っていただいて差し支えありません
 正体はホブゴブリンです。


◆補足4:鎧などの貸与について

 鎧は17までで任意の必要筋力のものの貸与を受けることができます
 ただし、金属鎧は調整のために1ターンが必要です
 調整中、貸与対象者は調整に拘束されます(他の行動をすることができません)。

 非金属鎧および盾にはこのような制限はありません。


◆補足5:村人からの事情聴取について

 館には急報した村人が逗留しています。
 彼に(子爵から聞いた以上の情報を得るために)話を聞くのであれば、1ターンが必要です