野伏たちの成果

GM(Lain) 2013.03.03 [04:51]

 ヴェンとバウゼンは北東へ向けて、アイリスは村を一回りすべく、それぞれに出発した。

 村の防柵を出て小半刻ほど歩いたあたり、牧草地の中で道が二手に分かれている。

 ふたりが向かうのは北東側だ――北西へはしばらく平坦な道のりが続いたあと、くろぐろと森が見えている。
 その先には尾根が立ち上がり、北へ向かって高くなっているのが見て取れることだろう。

 一目見てわかるのは、この近辺では伏撃も罠を仕掛けることも難しい、ということだろうか。
 正面から戦うのであればいざ知らず、人が隠れ、また罠を隠すにはあまりにも起伏がない。

 敵を止めることも、人が直接止めるのでなければ難しいだろう――阻止に使えそうな地形がそもそも存在しないのだ。

 逆に攻める側として見れば、直接の打撃力と数で押すのであれば好適な地形と言えた。
 正面から戦いたい側にとって都合のよい地形、とも言える――数と力で押したがる妖魔には、有利と言えるだろう。

※ ※ ※

 一旦アイリスと別れ、ヴェンとバウゼンは北東側の道を進む。

 しばらく進めば川に出ることだろう。
 川には粗末な――ほとんど丸木橋と変わらないような――つくりの橋が、かけられている。

 川の上流下流を眺めれば、この橋の近辺だけは多少川床が広く、また傾斜も緩やかであるらしい。
 ゆえに川幅は多少広くなっているものの水深は浅い部分があり、そこであればどうにか渡れる程度の深さであるようだ。

 橋、というよりも、渡渉点、というべきであるのかもしれない。

 渡れなくもない、という程度であって、渡りたいかと問われれば遠慮したい類の場所ではある。
 特に、この季節にあっては。

 川の水は随分と冷たく感じられる。
 長く浸かっていれば体力を奪われ、動けなくなることは疑いようがない――短時間であっても、相応に体温を奪われ、消耗することだろう。

 上流に人家がないからか、水は澄んでいる。
 不審なものが流れてくる様子はないし、水がせき止められているようなことを示唆するもの――たとえば、最近水量が減少していることを示す水の線――もない。

 上流下流を眺めた様子から察するに、ここ以外で川を渡れるのはフラナリー街道の橋くらいで、あとは相当に川を遡らなければ渡渉は難しいと考えてよいだろう。

 また同様に、川になにか手を出すことも困難そうだ――出鱈目に木を切って投げ込み、なかば偶然に河道が塞がれることを期待するのでなければ、急峻な斜面を上り下りしなければならない。

※ ※ ※

 橋を渡って森に入り、あたりを探る――期待した、あるいは危惧した、巨大な足跡は見つからない。

 だがヴェンは別のものを見つけた。
 靴を履いた足の跡である。

 足跡は川原まで往復したものであるらしい。
 それも、山の側へ戻っていったものであるようだ――北向きの足跡が、南向きの足跡の上に被さっている。

 川原まで来たあとどこへ行ったのか、川を渡ったのか否かまでは解らない。
 石の転がる川原では、足跡はどうにも残りづらいものであるからだ。

 足跡のついた時期も詳しくはわからない。
 だが、どう考えても半月以上残るものではないだろう。
 おそらくは5日から10日の間、といったところか。

 耳を済ませてみてもかわった物音は聞こえない。
 そしておそらく、ヴェンたちがいることを察知しているなにかもここにはいない。

 だが、なにかが、いた。
 その痕跡、足跡だけが残されている。

※ ※ ※

 アイリスは村の外周を一回りし、諸々を調べつつ考える。

 防柵は、この類の寒村としてはそれなりに立派なものだ。
 手入れもそこそこにしっかりとされてはいる。
 たとえば、見てそれとわかるほど腐り、劣化した部分というのは見当たらない。

 防柵の外側に小屋の類はないようだ――おそらく、獣や妖魔の類が寄ってくることを恐れてのことだろう。
 家畜の類をいちいち中へ入れ、道具もすべて中から運ぶというのは手間ではあるだろうが、外に置いておいて奪われてしまったでは意味がない。

 村の周囲を見て回れば、外敵がどのように村を攻めるか、ということも概ね予測できることだろう。

 村の周囲の牧草地や畑に入ってしまえば、行動の自由度は格段に上がる。
 どこをどう歩こうと障害になりそうなものはさほどなく、ゆえにどこから攻めるかも概ね自由に決めることができるだろう。

 逆にそれ以前、森や山の中を歩くのであれば、道を使わなければ移動は難しい。
 山の歩き方を知っている猟師や野伏ならばともかく、そういった知識を持つでもなく、しかも頭の出来がよいとは言えない妖魔どもが、それも集団で攻めてこようというのなら困難はなおのことだ。
 そうならぬように移動することもできぬではないだろうが、道を歩くのとは比較にならない時間がかかる。
 であれば、まずは道を通ってくる、と判断してしまって良さそうだ。

 そうなれば自然と、それを阻止しうる場所も定まる。

 伏撃するにせよ罠を仕掛けるにせよ、平坦な地形に入る前、ということになるだろう。

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■GMから

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 短レスその3、偵察編です。

 ・ヴェンが靴の足跡を見つけました。
  聞き耳等に反応するものはありません(1ゾロですしね!)。
  バウゼンの判定をどうするかについては意思表示を確認出来次第、としましょう。

 ・アイリスはだいたい村周辺をチェックできております。
  牧草地や畑に入られるとちょっと分が悪そうです。
  そこまで来た場合、正面衝突か防柵まで下がるか、といったところでしょうか。