共有と避難の話
アイリス(一葉) 2013.03.07 [11:25]
村周りを見てくる時にあたしが気にしたのは、妖魔の影と防衛戦になった時の状況想定だった。
成果はまずまずと言った所だろうか。あれこれ書き込んだ地形図を手に、日が暮れる前に村へ戻ろう。
* * * * *
食事の雰囲気はあまりよろしくなかった。
とはいえ、別におかしな話でもないのであたしはそれを取り繕ったりはしなかった。
妖魔が多く見られ、冒険者やら従士やらが滞在する事態になっているのだから、そりゃー気にもするだろう。
村人にとってみれば、余計な気遣いよりあたしたちが切羽詰っているように見せない方が余程安心の種になる。
食事後、あたしが皆に見てきた事を伝えようかと思っていた矢先、従士たちが先に声を掛けてきた。
避難について、大筋の取りまとめが終わったそうだ。
内容は概ね想像通りで、手荷物は最低限、弱い者たちを優先して移動手段に、といった所。
> 「村長から話を回して貰ってはいますが、どうも年寄りは村から離れたがらない様子で――」
> 「まあ、どうしようもないときは俺とボリスで抱えて馬車に放り込むしかないでしょう」
クラエスが声を落としてそう言うのを聞きながら、あたしは内心で舌打ちするのをどうにか表情に出さないように苦労していた。
どこの枯れ木も似たようなモノだ。自分の知っている世界に閉じこもって、そのまま朽ち果てる事を最高の喜びだと信じ込んでやまない。なんとも阿呆らしい。そして、それを唾棄しつつもどこかで理解しているあたし自身ですらも。
「やむを得ないっしょ。なあに、目の前に危険が迫れば案外自分から逃げるよ。きっとね」
無表情に努めながら、あたしはそれだけ言い捨てた。
> 「で、実際のところどうするか、ですけど」
> 「どうにかして襲撃を、というか村がもたないような状況を伝えていただかねばなりません。
> 全員が避難して、しかも即座に追撃で皆殺し、
> というような惨状を避けるには少なくとも1刻の時間が必要です。
>「どうしても時間が足りなきゃ俺たちのどっちかが後尾に立ちますが――」
> 「まあそのあたりはともかくとして」
> 「合図は決めておかないと、なわけですよ」
「そーねえ。関係なくない話だから、あたしから少しいいかな。
さっきまで村の周りを見てきたけど、良い話と悪い話が一つずつあるよ。
良い話は、ひとまず妖魔の痕跡は村のすぐ近くには無かったって事。
そんで悪い話は、この村での防衛戦になったら、どうあがいてもこっちが不利って事。
とにかく、平坦で何もないんだ。どっから攻めるも自由。何かを用意するのもちょっと不都合。
つまるとこ、戦いになったらこっちの出方も総力戦ぐらいしか思い付かないね」
はは、総力戦。
10人にも足らないあたしたちと、役にもたたない村人で、だ。
「だから尻尾を巻くなら何にしろイニシアチブ取らないとダメかな。
村の周りに警備立てとけばいいって話にはならないと思う。1刻は絶望的だね。
そうなると、音か狼煙か。いっそのこと森に火でも付けちゃえば早いかもねー。
ミル、バウゼン、なんかいい魔法ないかな?」
取っ掛かりも思いつかず、いくらか投げやりにあたしは魔法使い二人に話を振った。
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PL@一葉より:
翌朝の探索行については、とりあえず後で言及するとして、
まずはそれまでに見てきた事の共有と避難についての見解だけ投げておきます。
合図ですが、いい案思い付きませんでした(>_<;
とりあえずアイリスが見てきた限り、村の周りで時間稼ぎは多分無理です。
平坦な地形に出る前のポイントに警備を置くと言う手もありますが、
北東もカバーしようとなると人手がどうしても足りません。
なので、なんとか我々が先に敵を見つけるのが前提になってしまいそうですが、
その場合一歩間違えてすれ違いでもしたら村の被害はあうあう^q^
何か思いついたら別途投下しますね。