罠と心理戦

GM(Lain) 2013.03.30 [01:52]

 夜であれ、猫の目はわずかな光を拾って闇を見通す。
 人の目にはない暗視の能力が、猫の目にはある。

 だがもうひとつ、人の目では起こらないことが、猫の目では起こるのだ。

 わずかな星明りの反射。
 暗がりに光るふたつの目。

 いかに暗視能力を持つ魔物とはいえ、ただそれだけで猫の存在を感知できるわけではない。

 だが、夜目の利く彼らにとって、注意を引くにはそれで充分だった。

 オーガー、そしてダークエルフ。
 彼らの存在を迅鉄が、そして迅鉄の目を通したミルが察知したそのとき。

 ダークエルフがにやりと笑った。
 ミルは、その笑みを、直接目にしたようにも思えるだろう。

 酷薄そうな表情だった。

※ ※ ※

 ミルの叫びはどこまで届いたことだろう。
 静かな森の中であるゆえ、それなりに遠くまでは届いたかもしれない。

 だが、川を挟んで反対側にいる4人のいる場所まではどうか。
 あまり期待できない、というのが実際のところだ。

 3人は足早に歩き出した――時間の猶予はどれだけあるか。
 動き出せるタイミングを待つのに四半刻、尾根から森へ降りるまでに半刻。
 一刻半あった筈の猶予は、いまどれほどか。
 道の分岐点までは一刻半にやや満たない程度。

 巨人たちが村を目指しているのだとすれば、村までのどこかで戦わねばならない。
 見過ごすことは村の壊滅を意味するだろう。

 合流。戦力の再編。
 罠の設置――敵にいくらかでも打撃を与えるための。あるいは、時間を稼ぐための。

 すべきことは多く、人手はみっつしかなく、そして時間は足りない。

 アイリスとバーラーは、道中にいくつかの罠を仕掛けた。

 隠れていない誰かが隠れていると見せかけるための。
 少しでも道を通りづらくさせるための。
 誰かが警戒していると教えるための。

 罠はなにも、無警戒な相手に対してだけ効果を発揮するものではない。
 警戒している敵にこそ有効な罠もある――たとえば、より警戒させることで時間を稼ぐ、というように。

 戦いは多かれ少なかれ、敵との騙し合いである。

 何も考えずにただ進む者は騙されやすい。
 だが、それは、高い思考能力を持つ者が騙されないということを、必ずしも意味しない。

 アイリスが期待するのは、まさにその点であった。

 バーラーが仕掛けたそれは、やや異なる。

 不意討ちの機会、一瞬の隙。
 そういったものを作るための罠。

 単独であればさほど致命的ではなくとも、その一瞬注意が逸れればよい。
 そうやって作り出された隙を、冒険者たちが最大限に活用する。
 そういった種類の罠である。

 種類が異なるとはいえ、いずれも危険な罠であることに変わりはない。

※ ※ ※

 村付近、山道の分岐点には、すでに仲間たち――北西に向かった4人が戻ってきていた。
 合流すれば、より正確で詳細な情報の交換ができることだろう。

 重要なのはそのあとのことだ――山道を下ってくるであろう敵を迎え撃つに、猶予は一刻を切っている。

 ここで迎え撃つべきか、あるいはほかのどこかに戦場を設定すべきか。
 正面から戦うのか、不意を打てることを期待するのか。
 村へ急報すべきか、その時間をも惜しむのか。

 為すべきことは多く、そして時間は残り少ない。
 何をするにせよ、ひとつひとつの決断が戦局を左右しうる――既にしてここは戦場と言えた。

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■GMから

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 このカテゴリに返信できるのは、バーラー、アイリス、ミルの3人です

 時間等については次のとおりです。

 ・現在時刻:午前1時半(明かり発見から4時間半)
 ・尾根を下りつつあるなにかがA地点に到達するまで:約1時間半
 ・現在の北東組の位置:A地点

 ・A地点 → 村 の移動所要時間:15分
 ・A地点 → B地点 の移動所要時間:30分
 ・A地点 → 西側尾根付近の森林線 の移動所要時間:30分

 ほか、現在の状況は描写したとおりです。

 というわけで、この先当面の(具体的には『敵が来るまでの』)行動について決めてくださいませ。
 なお、以前も申し上げましたが、A地点付近(というよりも村周辺の農耕地帯)は伏撃には適しておりません。
 ゲーム的には、カモフラージュ・不意打ち等の判定を認めず、オープンスペースでの戦闘となります。

 〆切は31日24時といたします。どうぞよろしくー!