視認させんがため

GM(Lain) 2013.03.26 [02:18]

 なにかは解らないが、なにかがいる。
 それは合図を交わし、その最後に南を指した。

 明確な情報はない――だが、おそらく、このままここで夜を明かすべきではないだろう。
 冒険者たちはそう考えた。

 ミルは彼女の使い魔、迅鉄を放つ。

 使い魔の目であればより近くからそれを確認できようし、なによりも『離れた場所に目を持てる』ことは情報の収集において大きな利点となる。
 無論、危険がないではない――たとえば、逆に敵に情報を与えてしまう、というような。

 だが、それを差し引いても、情報の有する力は大きなものだ。
 なにより、依頼本来の目的は情報の収集である。

 ミルに命じられた迅鉄は、大小さまざまな岩の転がる尾根道を猫特有のしなやかな動きで駆け上がり、あっという間に視界から消えた。

※ ※ ※

 四半刻のち。

 あの火の合図をした者どもが下っているのなら、そろそろ野営地は視界から外れる頃合だ。

 尾根道とは言っても、一様な上り下りが続くわけではない。
 小さな峰と谷を繰り返しつつ、全体として上り、また下る、と言った類のものだ。

 ゆえに、タイミングを選べば、互いに見えない位置というのは確実にある。
 問題はむしろ、陰に入る時間で何を為すか、ということに尽きよう。

 冒険者たちは、敢えてこの場所で火を焚くことを選んだ。

 枯れて倒れた潅木を集め、焚きつけを用意し、火口から火を移す。
 薪はあっという間に燃え上がり、大きな炎を作り出した。

 今頃野営をしているであろう彼らの片割れも、それを確認したことだろう。

 そして彼らのほかに、谷を越したその先でも、突如上がった炎を発見したものがいたようだ。

 西側の稜線、その、先ほどの合図よりやや南に下がったあたり。
 今回もまた、ふたつの炎がともる。

 二度の、光の交差。
 その後、光は上下に振られた。一度、そしてまた一度。

 ややあって、先ほどと同じように二度ぐるりと回り、南を指し、光は消える。

 そこまでを確認し、冒険者たちは西へ向けて尾根から外れ、川のほうへと近づいてゆく。

※ ※ ※

 四半刻ほどで接敵ができるわけではない。
 光が見えたあたりまでは大人の足でも数刻はかかる。

 仮にあの光を放ったものどもがすぐに下り始めたにせよ、接触にまで至るには時間が足りなさ過ぎた。

 だが、位置関係を変える、とりわけ彼我の間にある高地を避けることができる、というのは大きな利点だ。

 迅鉄は、与えられた四半刻の終わり頃になって、尾根を下りてくる何者かの姿を認めた。

※ ※ ※

 半刻ほどかけて、3人の冒険者は森までの高度差を下りきった。

 残してきた火は、いまだ燃えているようだ。
 尾根を下ってくる何者かは、おそらく、その燃え跡を見ることになるだろう。

 ここから道へ戻って川を渡り、山道の分岐点へ出るのならばおよそ1刻強。
 直近の河岸まで出るのなら、おそらく半刻程度、といったところだろう。

 尾根を下りてくる何者かがそのまま進んだとして、分岐点までは2刻とすこし。

 時間の猶予は無限ではないが、合図を交わした者どもの目的はいまだ不明のままだ。
 そして、無限ではないにせよ、まだ猶予はある。

 ここで朝を待つべきか、西へ出向いている片割れと合流すべきか、それとも――?

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■GMから

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 今のところ怪物判定の結果がありませんので、とりあえずその部分の情報を抜いて進行です。
 つらつら考えるに、迅鉄は「遠目で見る」という形にならざるを得ず、したがって被発見の可能性は低下するでしょう。
 具体的には、見られたかどうかの判定について、敵側に-2の修正が課されます

 ほか、現在の状況は描写したとおりです。
 また、時間等については次のとおりです。

 ・現在時刻:午後10時半(明かり発見から1時間半)
 ・尾根を下りつつあるなにかがA地点に到達するまで:約4時間半
 ・現在の北東組の位置:G地点
 ・現位置 → A地点 の移動所要時間:2時間半

 というわけで、この先当面の行動について決めてくださいませ。

 〆切は28日24時といたします。