従士と冒険者

アイリス(一葉) 2013.02.22 [23:22]

 果たして顔を見せたのは、クラウスという従士の方。

 

> 「出る支度してたもんでちょっと散らかって――おっと」
> 「周到ですね、実にいいですねえ」

 

 イタズラに笑うその顔は、いわゆる三枚目の匂いがした。
 あたしのような、漂々とした仮面を被ってのらりくらりと世を渡る手合い。
 そんな印象だった。

 一つ意外な点があったとすれば、クラエスに返事をしたボリスの態度。
 「おーう」という間延びした返答から感じられたのは距離感と親近感。
 エリクセンの手前では体面を保つ真面目さを持っているが、実際には付き合い辛い手合いではなさそうだ。
 騎士サマの従士ってーんだから、どんなモンかと思ったけど、市井と似たり寄ったりという事か。

 巡回警邏などをしているのだろう。旅支度も手慣れた様子がある。
 突然の訪問に対応する余裕がある時点で、支度は一通り終わっていると見える。練度はそれなりにありそう。
 いざという時、パニックになるような失態はしなさそうと目星を付ける。
 へへ、悪いね。手が足りない時は、容赦なく手伝ってもらうよ。

 

> 「ボリス様、クラエス様、わたくしバーラーと申します。よろしくお願いします。」
> 「これ、わたくしが作りましたの・・お口に合いますかどうか・・・」

 

「アイリスです。まあしばらくの間、よろしくって事で!」

 バーラーに続いてへらっと自己紹介をして酒瓶を掲げる。
 ここでの役割は、橋渡しであればいい。

 

> 「オランからってお話でしたが」

 

 床座で気負う事もなくあぐらをかかせてもらい、これも遠慮なく酒を皆に分ける。
 そんな中でボリスが口火を切った。

「そうそう。オラン。何か気になる事でも?」

 

> 「俺らふたりとも、オランの冒険者さんにお世話になったことがあるんですよ」

 

「ああ、なるほどねー。
 ちなみにどこのヒトか分かるかな。あたしたちは『角無しミノタウロス亭』ってトコなんだけど」

 その返答を聞いて、二人の表情が変わった。
 どうやら以前の依頼も、同じルートでミノ亭に回ってきた類なのであろう。

 

> 「マルドルさんやガラフさんはお元気ですか」
> 「ルーイさん、バルカさんやマークさんも」

 

 その名は、聞いた事があるモノもちらほらあったが、残念ながらあたしに面識はなかった。
 だけど先人達が築き上げてきている信頼に関しては言うまでも無さそうであり、これは期待を裏切りたくない所。

「んー、あたしは知り合いいないなあ。皆は知ってる?」

 居合わせたメンツに振ってみる。ここから話が広がればお互いをよく知る取っ掛かりになる。

 

> 「そう言えばさ、ジゼルってまだアレ続いてんの?」
> 「続いてるらしいよ、中身教えてくれねえけど」

 

「なになに、なんすか。面白い話っすか」

 

> 「去年お世話になった冒険者さんとね、仲間の従士が手紙のやり取りしてるんですよ。
>  ルーイさんって魔術師さんなんですけど、ご存知ないですかね。
>  オランに戻ったら、ジゼルが顔見たがってたって伝えてやってください」

 

 ルーイ。魔術師。よし覚えた。
 露骨にニヤニヤしながらあたしは力強く頷いた。

「必ず。へへ、いいですねえ。なんていうか、そーいうの」


 * * * * *


 翌日、一行はローナムを出て、シリルを経てラデクへと進む事となる。

 

> 「バウゼンといいます。どうかよろしく」

 

 合流したルーンマスターはバウゼンと名乗った。
 手垢が付くほどの手練れではなく、まっさらでもない。あたしと似たり寄ったり、という所か。
 つってもルーンマスターはそもあたしみたいなのとは才能が違う。
 
 あたしもヴェーナー様の奇跡を使える身とはいえ、自分自身がイレギュラーである事を理解している。
 あたしの信仰とは、揺るぎなき表現への崇拝とでも言うのだろうか、個の意識というどこまでも不可思議で誰もが真理を知りたがっているモノを、美術という媒体を通して通じ合おうとする行為自体への畏敬だと思っている。万人に共通のモノでありながら誰一人として表現方法を見つけていないそれを、意味を共有する為の文字や価値を共有する為の通貨といった概念のように、神や個の意識といったモノを共有する為の概念として崇めているのだ。うむ、我ながらよく分からない考えである。

 閑話休題。
 ともあれ、ルーンマスターが増えてあたしらが困る事もない。
 できるだけ人懐こそうな笑顔で、挨拶を済ませておいた。

「よろしくバウゼン。あたしはアイリス。弓と野外活動が専門だよ」


 * * * * *


 シリルでも目新しい情報は何もなかった。

 従士たちが立ち寄る村ごとに方々へ顔を出すのに、控え目に同行しておいた。
 いざという時に顔を広めておく為だ。従士二人がいなくても「あの時の」となれば渡りに船である。

 

> 「欲を言えば替え馬が欲しいところではあるんですが」
> 「あるもので何とかするしかねえんだよなあ」

 

「馬はコストがどーしてもねえ。冒険者が基本的に馬なり持たないのも、カネの都合がほとんどだし」

 とりあえずラデクだ。本格的な話はそこからだ。

 

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PL@一葉より:
 買い物などは特にないです。不足分はないと信じる。
 文章で工夫せずに引用を多用したので見辛い感はありますがご容赦下さい。
 パーティの皆に絡む内容が思い付かないです。むずかしい(>_<;

 途中の信仰云々に関しては、明らかに神官でないアイリスがプリースト持っている事の埋め合わせと言うか、
 そういう類のフレーバーなので読み飛ばしてもらえれば......w

■行動補足
 ・従士さんたち
  ⇒何ができるか何をしてほしいかなどを話そうかとも思いましたが、
   二人の気性的に「実務の話」より「世間話」の方が好印象と踏んで控えました。
   そういった話はラデクで実際にしたいと思います。
 ・バウゼンさん
  ⇒挨拶しておきますね。
 ・通った村での行動
  ⇒情報収集は空振りのようなので、従士さんたちと一緒に顔を売っておきます。
   あくまで控えめに。「従士さんと一緒にいた人」レベルで。