騎士との対話
GM(Lain) 2013.02.16 [23:10]
手を振ったアイリスに、ふたりの従士のうちのひとり――クラエスと紹介された方――が気付いた。片眉を上げ、わかるかわからないか程度に手を挙げて応える。
ボリスがそれに気付いてわずかに表情を動かしたが、結局そのまま退出した。
エリクセンは反応しなかった――どうやら、ボリスの陰になって見えなかったらしい。
むしろ、クラエスが見えない位置で挨拶を返した、ということのようだ。
※ ※ ※
説明を終えた後に呈された疑問に、エリクセンはひとつずつ答えてゆく。
疑問は可能な限り解消しておくべし、という考え方に、主従とも違いはないようだ。
> 前にも此処らへんあたりで妖魔の繁殖が何処らへんであったかを聞きたい。
> 「例年、妖魔が目撃されやすい地点があれば押さえておきたいのですが、ありますでしょうか」
「人の目の届きにくい場所であれば、あれらはいくらでも棲み付きうる。
雨風を凌げる洞窟などがあればそこは拠点となろうし、そのような場所がなくとも人里の近くに現れることはある。
目撃されやすい場所といえば、概ね村か街道の傍だ――そこに妖魔どもが多い、というよりもむしろそこに人が多いゆえに目撃されることも多くなるのであろうがな」
> シリルからラデクまでの間で妖魔に強襲されたことがあったか
「強襲、というのがどのようなことを指すのか解りかねるが、3年ほど前に旅商人が襲われて殺されたことがある。
荷馬がその場で解体されていたことから、山賊ではなく妖魔の類と判断した。
その後も、襲われかけて荷物を放り出して逃げた、という種類の話は年に一度か二度は出る」
> 「我々がオランからここに到着するまでの二週間、何か目立った動きがあればお伺いしたく」
「フラナリー街道の奥、ディマス付近で派遣した冒険者と妖魔の小競り合いがあった。
だが、遭遇した中に上位種は確認されていない。
数を減らしはしたが、枝葉、手足ということだ――あれらを止めるには幹、頭を刈らねばならぬ」
妖魔はエストンの山中であればどこにでも出る。
どこにでも棲み付きうる。
そして、少々叩いてもすぐにまた増える――きりがない。
ゆえに数を減らしたとて、率いる者を叩かねばすぐにまた群れは大きなものとなる。
そういった意味では、状況は変わっていない――エリクセンは暗にそう言っている。
> 「また、今年目撃された妖魔の位置や風体などを、可能な限り教えて頂きたいのですが」
「位置はおおよそ村の近辺、街道沿いといったところだが――詳しく、ということであればラデクでそのあたりを聞けるよう、協力を依頼しておこう。
風体までは何ともな。見るのは村の者で、たとえば彼らに妖魔とその上位種の区別がつくかといえば――」
妖魔は妖魔で一括り、近くで目の当たりにするというよりも遠目に見て一散に逃げ出すという遭遇がほとんどであれば尚更だ。
なにぶん遠くであれば、大きさも定かにはならない。恐怖心が見たものをより大きなものとして記憶させ、巨人が出たという話にすらなっている、という。
「目撃の報そのもの、つまり『そこに何かがいる』ということ自体は当てにしてよいだろう。
だが、種類まで正確に把握できているか、という話になれば、どこまで信じたものかすら定かではない」
無論村人たちは協力的で(己の安全と生活がかかっているのだから当然だが)、見たこと聞いたことは全て話してはくれる。
騎士相手に虚言を吐くようなことはまず考えられないと言ってよい。
だが、それが現実と照らし合わせて正確か否か、というのはまた別の話だ。
「――かく言う私も、貴公らの歳の頃に、斥候に出て敵を見誤ったことがある」
損害こそ無かったがひどく叱責されたものだ、とどこか懐かしげにエリクセンは語った。
「あれ以来、情報の確度というものに対して随分と慎重な考え方をするようになったものだ」
※ ※ ※
> 「我々以外にも冒険者をお雇いだそうなので、そのあたりについてもいくつか。
> 彼らと我々は協力関係にあって競争関係にはないと考えてよろしいでしょうか。
> 協力関係を築けるのであれば、彼らの風貌と人数、複数であれば組数、担当地域、そして情報交換を行ってよい旨のお墨付きと、我々が彼らにとって信頼に値すると証明できる何かが欲しいのですが」
> 「エリクセンはん、冒険者が先行しとるってぇ話やけど、何組くらい行ってはります?
> あとは特徴とか
> 場合によっては、合流なり互いの救援なりできるかもやし、伝令でつなぎつけたいから、他の人たちが向こうた村の名前がわかると助かります
> あとは、まあこういっちゃなんやけど、その人らが困ってた場合、援助した場合の報酬と、ウチらが困ってた場合の、送り報酬などなどなど」
「無論、冒険者相互で協力することについてはこちらから頼みたいほどだ。
実際問題として、拠点とする村の距離、連絡伝達の手間はあろうから、情報交換も含めてなにかと困難はあろうが。
報酬については、子爵が約束した報酬は援助を要したか否かに関わらず支払われるとお考えいただこう。
援助した場合については、つまり妖魔と刃を交えたことになろうから、その成果に応じて報酬を積み増す、という話になっていた筈だが、これでは不十分とお考えかな?」
実際のところ、討伐の実績に応じて積み増すという話はその成果が解りやすいゆえに俎上にのぼったという面がある。
他の調査部隊への援助については、細々したところまで事前に決めては却って足枷になりかねない、という部分があろう。
「難しく考える必要はない――要は、働きに応じて支払う、ということだ。
さきにも言ったが、我々は冒険者にはいろいろと世話になっている。
報酬を渋ったせいで悪評でも立てば、向後協力を得ることも難しくなろう。
我々にとっては、それこそ大きな損害なのだ」
ゆえにその点は信頼していただいて構わない、とエリクセンは笑った。
「派遣した冒険者は10人、3人が2組と4人が1組の計3組になる。
ラデクの先、ディマスとカルナという村へ、3人と4人をそれぞれ派遣した。
その後ディマスで小競り合いがあったゆえ、3人をさらにディマスへ送っている。
風体――冒険者風、ということでは不足かな。
近在の遺跡があるわけでもないゆえ、冒険者が好んでフラナリー街道を通る、ということは多くないのだ。
村に滞在しているとあれば、まずこちらで募った冒険者に間違いはなかろう。
情報の交換、必要であれば互助、これらについてはまったく問題はない。
信頼の証は――」
言葉を切り、一振りの短刀を取り出して机の上へ置く。
鞘に紋章が入っている。
「こちらをお持ち頂こう。
これで不足ということはなかろうが、いかがかな?」
一旦言葉を切って続ける。
「それからもうひとり。
冒険者の募集に応じてくれた者があるそうだ――そうだ、というのは、今日準備をして明日ここへ来る予定になっているからなのだが。
よろしければ貴公らに同道させ、ラデクでの捜索に当たって貰うこととしたい。
ルーンマスターだと聞いているが、貴公らに不都合はおありかな?」
※ ※ ※
> 「あの、公衆浴場とかありますか?」
「残念ながらそういったものはない――が、湯浴みをお望みであれば邸内に用意させよう」
女性がおられるのに旅の埃を落とすことを気付かぬとは、我ながら気の利かぬことだ。
騎士はそう言って笑った。
> 「あー、エリクセン様。ボリスさんとクラエスさんと、今日中にキチンと挨拶する事ってできますか?
> いやあ、しばらく旅を共にする訳ですから、仲よくしておきたいなあって」
「――なるほど」
エリクセンは顔に笑みを浮かべて使用人を呼んだ。
何事か耳打ちし、ややあって戻ってきた使用人が提げているのは酒瓶だ。
さほど強いものではないが、よい品であるらしい。
「挨拶には手土産が必要ではないかと思うのだが。
――ああ、度を過ごすなと私が言っていたと、そう伝えていただきたい。
彼らふたりであれば言うまでもないことだろうが」
続けて彼は邸内の、ふたりの従士にあてがわれた部屋の場所をアイリスに告げた。
「訪ねるも呼び出すも、ご随意にされたがよかろう」
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■GMから
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ラデクまで移動しようと思ってましたがえらいことになってしまいました(量的に)
皆様積極的な書き込みありがとうございます!
というわけで、各種ご質問のレスを入れておきますね!
・冒険者関連の情報追加
・一行にひとりルンマスが加わる予定のようです
・妖魔関連の情報追加
・ご挨拶について
このくらいでしょうか。
拾い落としたものなどありましたらご指摘くださいませ!
次の進行でラデクまで移動の予定でおります。
お買い物その他ございましたらお早めにどうぞ!
>一葉さん
杖おっけーでーす!
戦闘には使えない、としておいていただいてよいでしょうか!w
>天候予測について
ひとまず、近々天候が大崩れしそうな様子はありません。
しばらくは穏やかな天気が続きそうです。