ローナムの地
アイリス(一葉) 2013.02.13 [23:07]
> 「だからこそ、この身に代えても守り通す
> 「だからと言って、仲間も見捨てるようなことはしない。目の前で仲間が倒れるのはもう見たくはない」
> 「全員生きて還る!俺が考えてるのはそれだけだ」
セクトールの横顔は、悟りきった隠者のように迷いがない訳でもなく、空に浮かんだ雲のようにふらふらと定まらない訳でもなく、ひたむきに真摯に見えた。そこがむしろ、あたしには自分としっかりと向き合っていると感じられる魅力的な顔だった。
彼にみたいに素直になれないあたしにはちょっと眩しくて、あたしは茶化すようにけらけら笑って頷いた。
「おう、期待してるぜー」
* * * * *
ローナムへの道中は特に苦労はなかった。
そもそも道がある時点で楽な訳で、そこに致命的な暑さも寒さも加わらず、妖魔や山賊などの危険とも出会わないときて、更に行き先が分かっているのだから憂いは何もない。
ただ、これだけ条件が揃うと逆に暖かい食事が恋しくなるのだから、人間という生き物は誠に欲深い。
普段は腰に巻いているマントで体を包み体温を落とさないように注意しながらではあったが、色彩豊かな森や山の風景を楽しむ余裕さえありながら旅路は進んだ。つづら折の山道で高低差がある場合、てっぺんから見下ろす風景は中々面白みがある。次の風景画の構図にできないかと、何度か指で風景を切り取って記憶しておく。
ローナムまでは二週間の道のりだった。
時間だけはたっぷりあったので、あたしは道すがら手頃な木の枝を探し、野営や食事の時間、果てには平坦な道なら歩きながらダガーでそれらの形を整えておく事にする。材質は強度より軽めの木を選び、長さは皆それぞれの背丈に合わせて微調整し、表面を削って滑らかにしていき、最終的に六本の木の杖を作成した。
山道に慣れている場合はともかく、慣れていない場合は体力の消耗がとても大きい。消耗するだけ足を痛めて傾斜を踏み外すなど危険も増える。だけど杖が一本あるだけで疲労の溜まり具合は大きく軽減されるし、足元も安定する。場合によっては火種にもできるし、捨てるのも簡単なので。便利なんだよコレ。
* * * * *
さて、ローナムはフリクセルの言通り比較的大きな町だった。
騎士団が常駐しているだけある。恐らく蛇の街道とフラナリー街道の分岐点として物流上も何かと都合がいいんだろう。
ある程度融通が必要な準備は、ここでしておかないといけなそうとだけ、気にしておく。
フリクセルから紹介された騎士エリクセンとは、代官の邸宅で会う事ができた。
貴族サマのお屋敷よりは随分と馴染みやすいけれど、あたしからしてはまだまだ落ち着かない環境である。
> 「遠いところをよく参られた」
> 「オランからの冒険者には幾度も世話になっている。
> この度も貴公らの助力を得ることができるのは喜ばしい限りだ」
> 「さて、方々、ひとまず荷を下ろして一息入れてこられては如何か。
> 色々と話すべきこともあろうが、旅装のままで立ち話、というようなものでもあるまい」
「アイリス・リトルトンです。オランはフリクセル様から、エリクセン様を訪ねるようにと言われて参りました」
厳ついオッサンではあったけど、話せる手合いのようでほっとする。
皆に合わせるようにあたしも名前を名乗り、しばしの間言葉に甘えてくつろがせてもらった。
* * * * *
休憩の後、再びお仕事の話である。
エリクソンは実直な男らしい、すぐに地図を広げて直接的な話を始めた。
あたしたちの探索場所は、エフライム川を渡った先、シリルを越えてラデク周辺、との事。
また、あたしたち以外にも雇われ冒険者がいるらしい。私たちだけで広大な山々を調べるなんて無理だからね。納得できる話。
拠点はラデクを推奨。特段異論はない。宿や食料などの手配、それと地図ももらえたので上々。
そしてエリクセンは、部屋にいた二人の従士をあたしたちに紹介した。
お願いしていた伝令要員だろう。ボリスとクラエス。名前をしっかりと覚えておく。
二人はエリクセンに命じられて、一礼して部屋を出て行った。
あたしは二人が退出する前にへらっと笑って手を軽く振っておいた。なに、話しやすそうなヤツがいると思って親しみを持ってもらえれば上出来上出来。
> 「私からはこのくらいだ。
> 出立は明朝としたいが、貴公らに不都合はおありかな?
> 無論、話すべきことや用意すべきものがあれば可能な限り承ろう。
> なければ明日からは山道だ。部屋を用意させたゆえ、せめて今日はゆるりと休まれたがよかろう」
「えーと、お心遣い病み入ります、エリクセン様。明朝の出発、あたしは異存ありません。
それに備えて、早速ですが教えて頂きたい事があるんですがー」
そう言ってあたしは質問を切り出した。
「我々がオランからここに到着するまでの二週間、何か目立った動きがあればお伺いしたく」
「例年、妖魔が目撃されやすい地点があれば押さえておきたいのですが、ありますでしょうか」
「また、今年目撃された妖魔の位置や風体などを、可能な限り教えて頂きたいのですが」
「我々以外にも冒険者をお雇いだそうなので、そのあたりについてもいくつか。
彼らと我々は協力関係にあって競争関係にはないと考えてよろしいでしょうか。
協力関係を築けるのであれば、彼らの風貌と人数、複数であれば組数、担当地域、そして情報交換を行ってよい旨のお墨付きと、我々が彼らにとって信頼に値すると証明できる何かが欲しいのですが」
現場的な状況――例えば妖魔の出現場所などは、ここで大局的な情報を仕入れ、シリルとラデクで実際的な情報を仕入れ、互いをすり合わせて考えた方がより正確だろう。
川、橋、森、山の様子や規模などはここで確認しても直接確認しても大差ないと考え、省く。
ああそれにしても、カチンコチンの態度は肩が凝る......
* * * * *
エリクセンとの話を終え退出する際に、ふと思いついたのでエリクセンに聞いてみた。
「あー、エリクセン様。ボリスさんとクラエスさんと、今日中にキチンと挨拶する事ってできますか?
いやあ、しばらく旅を共にする訳ですから、仲よくしておきたいなあって」
へらっとわざと軽そうに笑って言う。
まさか、どれくらいの練度の兵か、緊張しない場で話して引き出しておきたい、なんて言えるはずもねえし。
あと、休む前に皆に作った杖の事を伝えておく。
「明日から山道って事で、少しでも歩くのが楽になるよう杖を作ったよ。
特に野外活動に慣れてない場合、長々と歩くと大分楽になると思う。良かったら使ってねー」
さあ、明日からまた旅路を往かねばならない。せめて今日はゆっくり存分に惰眠を貪るぞ!
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PL@一葉より:
思い付いたらやっておこうという方針!
■行動補足
◆ローナムへの道中、徒歩の補助用の杖を自然の素材でパーティ分(六本)作ります。
と言っても1m強程度の長さの枝を見繕って、持ち手などを削って整えるだけです。プライスレス万歳。
※フレーバーみたいなものです。役立てばラッキー。作成自体NGであれば修正します。
◆エリクセンさんに質問を投げかけます。以下、要点をまとめておきます。
・オランからローナムへの移動中(二週間中)に目立った問題は発生していませんか?
・例年の妖魔情報を聞きたいです(オランでより詳細が聞けると踏んで)。
・今年の妖魔情報を聞きたいです(オランでより詳細が聞けると踏んで)。
・雇ったという他の冒険者について、出会ったら協力して良いですか? 良い場合は身元証明の一筆とか欲しいです。
また雇った冒険者の数や名前など、お互いを認識する為の情報が欲しいです。
◆伝令要員の二人と出発前に挨拶し直したいと提案します。
■今後について
明朝出発問題ありません。ローナムで使える時間があるなら、従士さん達と交流しておきたいです。
買い物はテントを最後まで悩みましたが、エリーズさんが持っているのであてにさせて頂きます!w
また次の進行でラデクまで行く可能性を考慮して、アイリスは道中以下の事を可能な限り能動的に注意します。
・妖魔ないし怪しい姿を目撃しないか。
・道の整備状況。
・川の大きさや流れなどの規模。橋の作り。
・森の深さ。
・山の険しさ。
・シリル(ないしラデク)の人口などの規模。
・シリルで時間があれば、例年と今年の妖魔出現状況の聞き込み。
・シリルに雇われ冒険者たちがいれば、接触と情報交換。
以上です(・ω・)