遠足は出掛ける前が一番楽しいって言うよね

アイリス(一葉) 2013.02.10 [20:49]

> 「いやっ!
>  こっちのにする!」
> 「そうか?
>  さすがに払いはいいんだがなあ、そうかこっちにしてくれるか」
> 「あんまいじめんといてやぁ、ジョージはん
>  ウチゃ、ただでさえ目ぇつけられてんだから」

 監察室、でことさら大きく反応したのは白い羽飾りをした気の強そうなヒト。
 あんなヒトでも参るような場所なのか監察室。
 おやっさんのにやにや笑いが気になる。......気になる。

> 「マイリー神官のセクトールだ。よろしくなお二人さん」

 うん。この人は顔怖いけど多分話せる人。あたしの中の何かがそう言ってる。
 大体見た目通り性格まで怖い人なんて、白いカラスぐらいに出会ったためしがないモンだし。

> 「やあ、ウチはミルや、魔術師と盗賊やっとる
>  よろしゅうなぁ」

 どことなく砕けたように聞こえるあたしが知らない訛りは、世界が広い事を教えてくれる。
 茶虎の猫――ミルの使い魔かな――があたしの手を舐めた。
 ざらっとして湿った感触が、むき出しの人差し指を撫でてくすぐったい。

「よろしくー。役立つかは分からないけど、あたしもできることはやらせてもらうよ。
 ところでミル、監察室になんかヤな思い出でも?」

 いや、良い思い出があるとは思えないけれども。聞きながら、口元が自然とにやにやと緩む。
 野次馬は人生の娯楽だよね。低俗? でもその方が人間らしいってもんじゃない?


 * * * * *


 バーラーはフリクセルの体調をおもんぱかって手を貸そうとした。
 いい人だ。貴族サマなんぞは別世界の住人だと思っている自分とは、きっと何かが根本から違う。
 正直、羨ましくもある。

「優しいね、バーラー」

 だから、あたしはバーラーに向けてボソっと小さくつぶやいた。


 さて、フリクセルは矢継ぎ早の質問にも嫌な顔の一つも見せずに答えてくれた。
 ありがたい事この上ない。大体衝突は認識のズレから生じるとあたしは思ってる。
 だから、もちろん限度はあるけど、聞ける事は聞いて話せる事は話しておくべきだろう。

 宿、糧食などの手配の旨をしたためた書状をもらう際に軽く頭を下げておく。
 まあこれを受け取るのはあたしの役目ではないと思うから、他の皆に任せよう。

 フリクセルの話を聞きながら、自分の中で状況をまとめておく。

 期日は一週間。上々かな。「何もなかった」を成果として認めてくれるという前提のあるなしはこちらの精神的余裕にも関わる。無理せず焦らず、手を抜く訳じゃないけど仮に時間いっぱいで「何もなかった」事を確かめても仕事は仕事だ。あたしたちの仕事はあくまでも「巣の捜索」なのだから。
 エストン山脈の主稜に近い側......山の自然洞穴なんかを利用した拠点でも作っている可能性? ともあれ、詳しくはフリクセルの言うようにローナムの騎士サマに聞いた方がいいだろう。
 数に関しては、しゃーまんだのろーどだの仰々しい名前の輩が出た上で10ないし20。であれば、これを更に越える事は現実問題まずないだろう。もしあったら運が悪いとしか言えない。
 フラナリー街道沿いの治安に関しても概ね想像通り。要は互いの領域が干渉しあっている境い目だという事だ。今までの話を鑑みてもフラナリー街道沿いに戦略目標としての要素は見当たらないから、蛮族の行動がヤツらの本能に従うレベル(つまり略奪やらなにやら)で話が付きそうだし、そうだとしたら裏に胡散臭い何かがあるようなビックリ箱な展開にもならないはず。人間側の常備兵力が薄い――つまり防衛拠点としての用を成していない、あるいは構築優先度が低いという事実もそれを裏付けると思っていいだろう。
 あとは、妖魔と出会った時の判断もこちら次第という事。ただ村々への避難を促すように、とも付け加えて。

> 「するってぇと、現地についたら、まずは村々の場所と待避ルートの作成せんとあかんかな?」

 ミルがそう言ってちらとこっちを見た。気がした。......見たよね?

「そーねえ、やっぱり、まずは地図かな。地図がないと難しいよ。
 あ、フリクセル様。その場合の村民たちの避難の受け皿は、どのあたりが候補でしょうか?」

 避難民の受け入れっつーのも楽な物じゃない。余裕のない小さな町ぐらいだと必要物資は簡単に飽和する。
 人から見れば細かいかもしれないけど、任される以上はしっかりと考えておかないと寝覚めが悪い。


 さて、そしてパパっと今後の可能行動を検討すると、だ。

 現地で正確な地図と目撃地点などの情報を集め、調査地点に目星を付けてから優先順位を決めて期限内で回れるようにプランニングし、実際に妖魔と出会ったら彼我の戦力差を考慮して殲滅、追跡、撤退を選択。同時に念の為村々間での避難、撤退案も作っておいた方がよさそうか。柔軟に動かせる情報伝達の手段があるといいけど、馬の一頭二頭ぐらいはいるっしょ。

 そんなトコロか。あたしはそんなコトをつらつらと考えつつ言葉をまとめた。

「あたしからは最後ですが、状況によっては"即時報告"と"追跡調査"を天秤に掛けられなくなる事もあり得ると考えますので、その場合に備えて可能であれば専任の伝令要員、それも早馬を一人は逗留先の拠点に用意頂けると安心かなあと。もちろん我々自身からも要員は割けますが、その、あまり人手を分けるのも好ましくないと思うので」

 さあて、こんなもんかな! 何にしろ、あたしはあたしにできる事をちゃっちゃとやるだけだ。


> 「事情についてはおおむねお解りいただけましたか。
>  そのような状況ですので、何かと準備もありましょうが、明日には発って頂かねばなりません」
> 「おし、んじゃ明朝あたり出発かな?」

「オーケーミル。やっぱり朝一だよねぇ。
 それでは吉報をお待ち下さい。なあに、なんとかなります。きっと。あはは」

 後半はフリクセルに。気楽に気負わずに、があたしの信条。


 * * * * *


「ねえエリーズ。ほぶとかしゃーまんとかろーどとかおーがって強いの?
 あ、ヴェンなら『知らないが倒せるに決まってるぜ!』とか言いそう!」

 ちょっと気になったんで、折りを見て物知りそうなエリーズに聞いてみた。
 誰か知っていればいいなーぐらいの気持ちで。


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PL@一葉より:
 主にPLの考えている事をPCが考えている体で皆様に共有しておく為の文章。
 ......何度も読んで頂くのも大変だと思うので、要約しますね。

■アイリスの考えている事まとめ
 ★最優先目的は「フラナリー街道沿い(主にエストン山脈の主稜)の妖魔趨勢の調査」。
  あくまでも最優先は趨勢の調査であり、退治がオプションである事はもちろん
  「このあたりにはいない」といった報告だけでも十分責務は全うした事になるはず。
   ※積極的な退治を否定する訳ではなく、最優先は生きて情報を持ち帰る事であるという認識。
 ★二次目的として「可及的速やかに解決すべき事案(即時の襲撃の見込みなど)」が見られた場合、
  可能な手段をすべて用いてこれの解決を試みる。
  解決が我々の手でできない場合、付近人族人命の救助(避難支援)を優先。
 ★次の手は、現地での詳細情報収集と、調査プラン(及び緊急時の対応プラン)の策定。

 以上ですです。

■今後について 
 ・フリクセンさんの屋敷での用事は終わりで、ミルさんに賛成で「明朝に出発」に一票です。
  反対票がなければサクっと進めてもらって構いませんです。
 ・買い物などはありません。糧食などもキチンともらえそうなので。

■ダイス
 上位の妖魔なんて知りません^q^

 20:39:16 一葉@アイリス ≫ しゃーまん 2d6 <Dice:2D6[3,2]=5>
 20:39:21 一葉@アイリス ≫ ろーど 2d6 <Dice:2D6[2,5]=7>

【追記】
 妖魔の云々を聞くのは時系列的に先のヴェンさんに合わせてタイミングをぼやかしました。
 内容前後して既に確認されていた方にはご迷惑をお掛けしますが!