湖畔の夕暮れ

GM(Lain) 2012.07.25 [03:07]

> 「俺は今、この景色を見て神殿跡の方に気持ちが傾いてるんだが・・・
> 「俺も神殿のほうが怪しいと思う
>  それから ライナス、ウチも湖に張る
> 「はい、神殿へ行きましょう」

 ライナスは皆の意見を聞き、黙って頷いた。
 彼の持つ知識は豊富ではあるが、知識と、それをもとに決断する能力はまた別のものだ。

 後者は特に場数が――踏んだ修羅場の数が、大きく影響する。

 だからこそセーロフは奪還の任を冒険者魔術師であるミルに振ったのだろう。
 いや、無論、それがただひとつの理由ということはないのだろうが。

※ ※ ※

 マークの見立てでは――そしておそらく誰の見立てでも――今夜のうちに天候が大崩れすることはなさそうだ。
 日の入り前1刻のこの時間、西の空にちらほらと雲が見える程度。快晴だ。
 急に雲が出たり、あるいは雨が降ったりなどということはまずあるまい。

 それはつまり、満月がよく見えるであろうということでもあるのだが。

※ ※ ※

 ミルはエストンの稜線へ近付いてゆく夕陽を見、やがて月が昇るであろう東のかたを見る。

 傾いたとはいえいまだ日は明るく、星の姿は見えない。

 あの神殿の跡からは、月と星はどのように見えるか。
 記憶を頼りに、ミルはその配置を頭の中でなぞる。

 東は湖。
 ドームの抜けた伽藍。
 放棄されて100年ほどが経とうかという神殿。
 おそらく壁にも相応の損傷はあるだろう。

 月の光も神殿の内部に差し込むかもしれない。

 そこまで考えて――何かが心に引っ掛かった。

 満月の晩。
 行われるであろう儀式。

 自分がなにかを見落としているような、そんな違和感が――。

※ ※ ※

 神殿跡から歩いて小半刻程度の距離。

 周囲より高く、視界を遮るものがなく、見通しのいい場所。

 それでいて猫がいたとしてもさほどの違和感がない、となれば――。
 候補はひとつしかない。

 マークが指したのは、修道院だった。
 正確には、その会堂の屋根である。

 ミード湖の岸辺に近いあたり、つまり神殿跡の近辺は地形そのものが平坦で、離れた遺跡を見通せるほどの丘などは見当たらない。

 となれば人造物、建物。その屋根。

 農村の暮らしと縁の浅からぬ猫――穀物を食い荒らす鼠を捕らえる猫であれば、少なくともマーファの修道院で見つかったとしてもそう邪険にされはしないだろう、とも思える。

 苦肉の策、と言うべきであるのかどうか。

 いずれにせよ、迅鉄と名づけられたその猫は歓迎することだろう。
 昼の日差しでほどよく温まった屋根が自分を迎えてくれるとなれば、猫としては喜ばない理由がないというものだ。

※ ※ ※

 一向は神殿跡へと近付いてゆく。

 神殿跡へ、そして修道院へ近付くにつれ、日は徐々に低く、日差しは徐々に弱くなってゆく。
 ねぐらへ帰る前の賑わいであるのかどうか、修道院と、そして神殿跡の周囲を烏たちが飛び回り、さかんに鳴き交わしていた。

 修道院の近辺で迅鉄を放すならば、彼は喜んでまっすぐに修道院へと向かうことだろう。
 屋根に上るのにもさしたる苦労はない筈だ。

 修道院の傍らを通り過ぎ、神殿跡へ向かおうとする一行に、おそらく修道士であるのだろう、質素な神官衣を着たふたりの神官が声をかけた。
 手には水桶を持っている――井戸で水を汲んだ帰りででもあるのだろうか。

「ああ旅のお方、どちらへ行かれますか」

「村はあちら、街道沿いをもう少し湖の方へ行ったところです。
 そちらは禁域でございますゆえ、当院の院長の裁可なくばお通りいただけないのですよ」

 禁域、と示されたのは、まさに神殿のある細い半島だ。

 細くくびれた半島の中ほどの部分は葦が生い茂り、ちょっとした湿地帯のようになっている。
 その向こうの先端部、もともとは島であったのかもしれないその部分に、半ば崩壊しつついまだ威厳を保った姿を見せる神殿が、傾いた日にうす緋く照らされている。

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■GMから

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 諸々あって現時刻は日の入り四半刻前、としましょうか。
 修道院のそばを通る際に、ふたり組みの修道士に呼び止められました。

 神殿跡方面は禁域なので立ち入りには修道院長の許可が必要ですよ、と言っております。

 どのように対応するか決めてくださいませ

 次回進行は26日夜27日夜あたりを想定しておりまーす。


>いあさん
 何か見落としているような、と書いておりますが、具体的に、これまで出た情報の何かを見落としている、というのがあるわけではありません(ぇー

 まあ、出目良かったのでちょっとGM的にそれらしい描写をしてみたくなっただけだったりします。

 迅鉄の監視地点については、脳内で地形等を再検討した結果、修道院の屋根が最適という結論に達しました。
 修道士に見つかってもマーファ修道院ですし、いきなり首根っこ掴まれて放り出されるとかはないだろうとPC的にも予測できます。
 なお、迅鉄的にはほどよくあったかくてきもちいい高い場所、ということでわりと歓迎の意向のようです。