旅程のはじめ
GM(Lain) 2012.07.14 [19:34]
> 「お気になさらず。あまり気が急いても宜しくないですしね。」
> 「OKわかった、だからまずは呼吸整えろ」
声をかけられて深呼吸をしたライナスは、慣れないことはするものじゃありませんね、とばつの悪そうな表情だ。
> 「あはは、ほらまあ、そう咳かんと」
ミルが差し出した水割りワインを有難そうに飲み、
「――助かりました」
ようやく一息ついた態でそう礼を言った。
> 「こっちに預けられる荷物は預けてしまって下さい。
> これでもこんな稼業やってるんで、我々の方が体力はあるはずですから。」
マークの提案に、ではすみませんが、といくつかの荷物を預けた。
中身は日用のもので、特に扱いに気を配る必要はないという。
※ ※ ※
> 「俺はこいつに乗らせてもらう」
「お客さん、お目が高い。
そいつはなかなかいい馬ですぜ」
少々気が荒いが、まあ冒険者さんなら大丈夫でしょう、と厩の親父は請け合った。
確かに、まあ、我の強そうな顔立ちではある。
※ ※ ※
> 「最終的な目的地が街道を外れていても、
> そこに近づく最後の最後までは街道を使う、使わざるをえないですかね。」
「ええ、おそらくは」
あまり荒地を行かれては私もついて行けませんし、そうでないことを祈りますよ、と苦笑いの態だ。
> 「ああ、そうだ。聞き忘れがありまして。」
「はい?」
マークの質問には、ではここ限りということで、と書名を口にする。
「『召喚術叢録 IV?II』です。
内容は――まあ、題名のとおり、なのですが、叢録という名のとおり、叢書のうちの1冊でして。
魔神の召喚のうち、儀式魔術による召喚を扱ったものです。
叢録全体がまず召喚する対象で大まかに区分けされ、その大区分を召喚の手法で細分する、という体系を取っています。
IVが魔神を、IIが手法としての儀式魔術を表しています」
「装丁は――革彫刻、カービングで円を基調にした幾何学模様の装飾の施された革表紙の大判本です」
大きさはこのくらい、と、肘から指先あたりまでの長さを手で示す。
「魔法陣などの図版が載っていると、どうしても大型になるようで」
おそらく見ればそれと解ると思います、とライナスは続けた。
> 「絶好の隠れ家になりそうな場所だな。ってか何か昔の罠とか巨人とかいそうな雰囲気だな」
「冒険者さんとしては興味のあるところでしょうね」
むしろその態度に興味がある、といった風情でライナスは答えた。
> 「人相書きも二枚欲しいな
> 宿に着いたら写しをとるか」
「そのあたりは皆さんの都合のよいようにやってください」
ことが済んだら写しも含めて学院へ戻さねばなりませんが、と付け加えることも忘れない。
> 「なあ、この面子なら最悪全滅ってことはないやろけど、途中の宿場で、帰還せぇへんやったら応援を呼ぶようつなぎをつけとかへん?
> 生き残りの面子の撤退場所決めて、期限切って連絡なかったら魔術師ギルドからそこに応援が行くようにさ」
「なるほど、たしかに最悪の事態への備えは必要かもしれません。
であれば、学院よりもグラナートのほうが近いでしょう」
本街道を追う監察室の手の魔術師は、グラーニンが通った形跡がなければグラナートまでで追跡を一旦止める手筈になっているのだという。
「ですから、その場合、グラナートへ報せが行くよう手配するほうが、応援が現地に早く入ることができるでしょう」
※ ※ ※
その夜、宿の食堂で、食事の片付けられたテーブルに、ライナスは地図を広げた。
「これが、プレヴァール街道北方の地図です」
これがプレヴァール街道、これが蛇の街道、と地図に指を走らせながら説明する。
「ラサークはここ。ミード湖の湖畔に位置します。
半農半漁の、そう大きくはない村のようです。
道中に少々お話した遺跡ですが、」
ラサークの近辺に指で円を描いた。
「この近辺に遺跡といいますか、そういったものが4つ確認されています。
オラン王国創設期の砦跡がひとつ、古代王国期の監視哨がひとつ、やはり古代王国期の魔法生物補修施設がひとつ、新王国期初期の神殿跡がひとつ」
詳しいところでは、と言いながら、羊皮紙の束から幾枚かを取って地図の上へ広げた。
「走り書きなので読みづらいかもしれませんが」
筆跡はライナスの言うようにやや崩れているが、もとが几帳面なのだろう、さほど読みづらいメモではない。
※ ※ ※
・オラン王国創設期の砦跡
古代王国期の遺跡の跡に作られ、もともと半地下構造。エストン山脈が事実上の国境となってから使用されておらず、朽ち果てている。
現在は地上部がほぼ完全に崩壊し、地下に遺構のみが存在するらしい。
・古代王国期の監視哨
ミード平原から石材を切削・搬出する奴隷階級の監視のために魔術師が常駐していたと思われる施設。襲撃に備えた地下構造。
小規模であり、遺跡としては既に枯れている
・古代王国期の魔法生物補修施設
ミード平原から石材を切削・搬出する魔法生物を補修していたと思われる施設。
蛮族の襲撃に備えた地下構造。規模は大きいが、賢者の学院が大規模な調査を行い、魔法装置の全てを持ち去っており、遺跡としては完全に枯れている。
・新王国初期の神殿跡
新王国初期に開かれたマーファ修道院の跡。
100年ほど前の地震で伽藍のドーム屋根をはじめとする主要部が崩壊した。
修道院は現在、やや離れた位置に再建されている。
※ ※ ※
「――こんなところです」
説明を一通り終えたライナスが言う。
「グラーニンが儀式魔術を、と考えているのであれば、ですが、」
前置きして、彼は言葉を続ける。
「儀式魔術はどこででもすぐにできるというものではありません。
しかるべき場を整えることから儀式は始まります。
目的に沿って、魔力を集積させやすい場所と環境。
彼の目的が判然としない以上、安易な断定は危険でしょうが――」
儀式とはまた往々にして時間のかかるものでもある。
「準備の間、局外者に見咎められないこと。
邪魔が入りにくいこと。
禁書を持ち出していることから考えても、これらの事情も考慮されることになるでしょう」
で、あれば――。
「遺跡であるとか、古い砦や神殿の遺構というのは、筋の悪くない候補たりえます」
「無論、道中で確認しつつ追うことは重要ではありますが、」
ひとまず、グラーニンの目的地をラサークと仮定するのが妥当ではないか。
ライナスはそう話を締め括った――締め括ろうとした。
ふと、開け放された窓から外を見やる。
上弦をほんのわずか過ぎた月が、ちょうど上ってきたところだった。
「ラサークまで5日か、6日か――着くころには満月ですね」
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■GMから
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プレヴァール街道に関する詳細情報です。
ついでにラサーク近辺の遺跡情報も。
>みなさま
抜けとか拾い忘れとかありませんでしょうか!
・地図の新しいのが出ました
・ラサーク近辺の遺跡の情報が出ました
・禁書のタイトルと外観が判明しました。
事前情報のとおり魔神召喚の魔術書で、だいたいA3版の大きさの革装丁本です。
というわけで質問などありましたらどうぞー。
次回の進行は16日または17日あたりを予定しております。
>いあさん、ハインツさん
馬の毛色とかは適宜決めてあげてくださいw
よほどのアレさ加減(ピンクとか蛍光色とか)じゃなければそれでおkですん。