出立

GM(Lain) 2012.07.12 [02:31]

 集合場所、と定められたオランの北の市門に、ライナスは時間ぎりぎりになって到着した。
 いや遅くなってすみません、と額に浮いた汗を拭いながら詫びる。

 急ぎ足で、というよりも小走りで学院からここまで来たのだろう。
 ローブからすっきりとした旅装に着替えている。

「そこの、厩、で、馬を、借り、られる、手筈に」

 げほげほと咳き込み、すみませんとまた詫びる。

 少々の時間を待って息を整えたライナスとともに、一行は厩で自分に合った馬を借りることができるだろう。

「半月と少々借りて、ここで返すことになっています」

 それから道中の宿での食事や飼葉も、これは約定どおり学院が、と、馬具を着けて貰いながらライナスが説明した。

「今から出て、日暮れの前後に最初の宿場にどうにか、というところですね」

 馬上の人となったライナスが、いまだ高い太陽に手をかざし、眩しそうな表情でそう言う。

 先も短くはないゆえ、あまり今から馬に無理をさせたくはないところだ。
 しかし、露営よりも宿のほうが疲労を回復させやすいこともまた事実。

 少々ならばいたし方なし、という結論に、一行は落ち着いた。

※ ※ ※

「プレヴァール街道について少々調べましたが」

 市門を出て、街道を北へと馬でゆく。

 そろそろ馬上にも慣れたという頃合で、ライナスが話を切り出した。

「詳しいことは宿で、のほうがよいでしょうから、概略だけ」

 シュトレクからグラナートに至るまで、分岐らしい分岐はひとつだけ。
 街道の名にもなった宿場町、プレヴァールから西へ出ているのだという。

「幸い、衛士のいる町だそうですから、街道を外れていればすぐに解るでしょう」

 そのほかは、村落を除けば周囲は森や湿原が広がっている。

「旅慣れている者であってもなかなか踏み込まないそうです」

 グラーニンについての情報が正しければ、彼はそういった場所へひとりで入れるような能力の持ち主ではない。

「ですから、わたしたちは基本的に、プレヴァール街道を北上すればよいことになるでしょう」

 一旦言葉を切り、そして続ける。

「マークさんの仰るように、儀式そのものが目的であるとすれば――大事なのはその場、ということになりますね。
 ですが、街道の近辺には遺跡の類はほとんどありません。唯一の例外が、街道の北端近く、ラサークという町です。
 古代王国の遺跡のほか、王国創立期の砦の跡、それに新王国期初期のものらしい廃修道院が残されているようです」

 このあたりはのちほど詳しくご説明しましょう、とライナスは言った。

 日はまだ高い。
 魔術師を相手の追跡行であるから、緊張感が消えることはないだろう。

 だが、天気は、そんな人間の都合など文字通りどこ吹く風。
 夏のはじまりの青空に、小さな白い雲がいくつも浮かんでいる。

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■GMから

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 ひとまず、急行する旨の決定を受けてのレスでありまーす。
 もう少し詳しい情報はのちほど宿場でご提供いたします!

 なお、買い物などがある場合は、このカテゴリへのレスの前に行ってくださいませ