司書の仕事

GM(Lain) 2012.07.08 [23:32]

> 「ああ、よっぽどの物好きか、なんぞ関連して企てとるくらいかな
>  専門部署はあるには違いないが......はて、このグラーニン氏は、そこに属してたかな?」

 占星術――天文を扱う研究室は、学院にいくつか存在する。

 ミルがそういった場所に出入りしていたのであれば、グラーニンを見かけたことはあるかもしれない。
 とはいえ、ミルは冒険者魔術師であって、多くの時間を学院の研究室や書庫で過ごす魔術師との接点は多くない。

 確かにいた、そこで見かけた――そこまでは思い出せても、そこで彼が何をしていたかまで思い出すことはできないだろう。

>  グラーニンが誰かと会ってたとこって、見たことある?」

「いいえ、私自身は彼と面識があるわけではありませんから」

 普段は人と会わず、書物の山と格闘することがライナスの仕事である。
 長い会話を交わすことすら久しぶり、という彼の生活ぶりでは無理からぬところだろう。

> 「ライナス、禁書には何か天文的な記述は?
>  禁書の内容、ちょぃとでも覚えとる?」

「内容まで詳しくは知りませんが、目録を見る限りでは天文関連の記述はなかったような――
 ああ、一応、学院に戻った折についでに確認しましょう」

 目録を見ればおおよその主題は確認できますから、とライナスは頷く。

> 「魔術師ギルドに戻って準備するならさ、さっきの杖の件少し調べといてくれないか?」

「私の周囲に訊いてみる程度ならできますが――」

 それ以上あちこちに尋ねて回るとなると時間が足りない、とライナスは言う。

 そもそもライナスの周囲とは同じ部署の魔術師たちで、つまりは揃って仕事場に引き籠る仲間のことだ。

 そういうことですからあまり期待しないでください、申し訳なさそうな表情のライナスはそう続けた。

> 「後で使い魔についてはレクチャーして頂けるとありがたいです。
>  多少の知識はあるのですが、仔細については生憎と専門外なのものでして。」

「そのあたりは道々お伝えすればよろしいですか」

 言ってから、ああそういえばあなたも第3階梯と伺いましたが、とミルに話を振る。

「私よりも、実践しておられる彼女のほうが適任かもしれませんね」

> 「・・・ん?禁書が触媒になる、と言う事は。
>  万一、儀式が行われてしまった場合はその禁書も失われるのでしょうか?」

「いいえ、そのようなことはありません――儀式に使用されたとしても、失われることはありません」

 まあそれはそれで問題かもしれませんね、とライナスは複雑な表情だ。
 一度ならず二度三度と儀式に使用される可能性も考えねばならない。

>  道中、人相書きを提示しての聞き込みとかくらいは問題ありませんよね?

「ええ勿論――でなければ追跡もままなりません」

 この点では明快な答えが返ってくる。
 そのあたりの加減を知っている、ということも冒険者に依頼する一因ではあるのだろう。

※ ※ ※

 ミルの尾行の腕前は、結果として用を為さなかった。

 学院に先行させた迅鉄――ミルの使い魔がライナスの姿を確認したのは、ミルが変装を終えてミノタウロス亭を出る直前のことだ。
 ミノタウロス亭から学院まで、最短距離を早足に歩けばちょうど、といった時間だった。

 特定の誰かに化けるには時間がかかる――顔の造作を化粧で似せ、表情を作り替え、服も普段のものとは別のものを用意せねばならない。
 大急ぎで学院へ向かい、禁書の内容についてなにか確認するならば整理2課だろうと当たりをつけてそちらへ向かう。

 果たして、ライナスはちょうど書庫の禁書整理に割り当てられた区画から出てくるところだった。
 羊皮紙の束とペン、インク壺を手に持ち、急ぎ足だ。

 通路の陰に隠れてライナスをやり過ごし、後を追う。

 向かう先は学院の資料室――図書室。

 司書に目礼すると(さすがに顔馴染みであるらしい)、勝手知ったるといった様子で書架の奥へと入ってゆく。

 地誌のある一画で足を止め、棚から数冊の本を抜き出して書見台に置いた。

 ページを繰り、手を止めてはなにかを手にした羊皮紙に書き写している。
 一冊、また一冊と内容を確かめ、必要な部分を書き写し、時折書架を移動する。

 歴史に関する書物を集めた書架。
 建築に関する書物の書架。
 遺跡調査の文献をまとめた書架。

 書架の間を飛び回るように移動するライナスは、活き活きとして楽しげですらあった。

 およそ半刻ののち、占星術の棚へ向かおうとしたライナスが足を止め、窓の方を見やる。
 日が傾き始めたことを知ったのだろう、残念といった風情で息をつき、手許の羊皮紙に目を通す。

 確認はすぐに終わったようだ――資料をもとの棚へ戻したライナスは、入ってきたときと同じように、早足で資料室を出ていく。

 入口近くにいた司書に、なにかを思いついたように声をかけ――その司書が怪訝そうな顔をするのを見て、いやいいんだ、とばかりに手を振って、そのまま資料室を出て行った。

 なにがしかの情報をこれから集めるにせよ、急ぎ出立するにせよ、ライナスの報告を受ける約束の時間まではそう余裕がない。

 彼もこれから急いで着替えてミノタウロス亭に戻ってちょうど、といったところだろう。
 その場で同じく報告を受けるのであれば、そろそろ戻る頃合いであるように思えた。

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■GMから

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 質疑応答とミルによる尾行の結果であります。
 レファレンス業務なう。


>いあさん
 変装はちゃちゃっとできるようなものではなく、顔かたちを変えようと思えばそれなりに時間がかかる、という認識です。
 使い魔をコントロールできる距離:1km以内、早足とか小走りだと10分強といったところでしょうか。
 どういい加減にやってもそのくらいの時間はかかってしまいますよね。

 さておき、ライナスの行動に(少なくとも見て解る程度の)不審な点はありません。
 学院へ戻り、職場に寄って、図書室で様々な資料をチェックしていたようです。

 なお、占星術/天文系の研究室に顔を出した折にグラーニンを見たことはあります(記憶術)。
 具体的にどのような立場にいたか、何をテーマにしていたか、などは知りません。

>ハインツさん
 杖の件ですが、ライナスの周囲に訊く程度のことしかできない(そのくらいしか時間の余裕がない)とのことです。


>みなさま
■質疑について
 質問、きちんと拾えておりますでしょうか!
 抜けがあればご指摘ぷりーずでーす!

■情報収集について
 繰り返しになりますが、GMが問うているのは「情報と時間はトレードオフなので、どうバランスさせるか決めてください」ということです。
 つまり、基本的に両方を取ることはできません(両方取れるならそもそもどっちを取るかを決断しろと訊く意味がないのです)。

 行程に支障を来たさないような情報収集では、今後になにか影響を及ぼすような情報は得られません。
 同様に、情報収集によって出た行程の遅れをあとで影響が出ないレベルまで取り返すことは(なにか他のコストを払わない限り)不可能です。
 たとえば金を積む(必要経費ではなく自腹です)、たとえば強行軍によるペナルティを甘受する、などなどです。
 このことはメタで保証いたします。

 そのあたりを踏まえて情報収集のプランを立ててくださいませ。

■というわけで
 情報収集か出発か、の選択について、そろそろ宣言をお願いいたします。

■買い物など
 ミルを除く各人は、以下の装備を購入可能です。

 ・通常品質通常材質の武器防具
 ・装備品類
 ・魔晶石(点数制限なし、ひとり3個まで)

 ミルは準備に充てるはずの時間を尾行に使ってるので買い物はできません(参照)。