その経緯
GM(Lain) 2012.07.06 [20:48]
> 「このグラーニンが禁書盗難の犯人と特定出来た理由、
> それをまだ聞いていませんでしたね。
> どうもこの感じですと盗難から発覚までが
> 随分と短時間で済んだように見受けられますが。」
ああごもっともです、とライナスは頷いた。
「経緯から説明した方が良さそうですね。
区分としてそう危険度の高いものと見なされていないとはいえ禁書ですから、管理はそれなりに厳重です。
持ち出すには煩雑な手続きを経る必要があり、まあ、彼はそこを逆用したといいますか」
ご内聞に願いますよ、と前置きして続ける。
「ここ一月ほど、グラーニンはほぼ毎日、件の禁書を借り出していました。
煩雑な手続きというのは書類から始まって、まあ書類を書かねばならないのは禁書に限らないわけですが――」
研究室の上役の名前で出された依頼状、研究内容の申請、それに禁書の内容を書き写したり他人に伝えたりすることを防ぐための【制約】の呪文。
そこまでしてようやく手にできるのが禁書なのだ、とライナスは言う。
そして、そこまでしても当日のうちに返却せねばならない、と。
「煩雑なのです。
それは実は、借りる側だけでなく、管理する側にとっても同じことでして」
書類の提出は形骸化し、上役の名であっても実際には決裁を得ていない、などというのは日常茶飯事。
研究内容の申請も同様だ。
「そしてお互いに慣れてしまえばどうなるか、ということです」
昨日グラーニンは正規の手続きを経て借り出した禁書を、昼前に一旦返却した。
その際に【制約】の呪文は解かれている。
「返却からしばらく経ってふたたび訪れたグラーニンは、件の禁書をもういちど見直したい、と言ったそうです。
論文を見直していたらどうしても気になってしまって、最後の確認をしたい。
今日中に必ず返すから、返却の確認だけ外しておいてくれないか、と」
本当ならば一旦返却された以上は最初から手続きをやり直さねばならない。
だがその手続きはどうしようもなく煩雑で、グラーニンにこれまで怪しいところはなく、当然ながら身許も確かなもので――。
「返却した時間を書き換えれば、書類上は、正規の手続で貸したまま、ということになるわけです。
その司書はグラーニンの提案に乗りました。結果が、現状ということです」
グラーニンはそのまま姿を消し、おかしいと思った司書もすぐには報告を上げられなかった。
騙されたとはいえ手続きを端折ったのはまぎれもない事実であったから。
「今日付けで彼、その司書は職を解かれました」
ライナスの表情には同情の色がある。
「――そのような経緯なのです」
※ ※ ※
マークの推測にライナスは意見を述べなかった。
だが、取り立てて論駁することもない。
表情を見れば、少なくとも、その推測に興味を覚えていることは読み取れるだろう。
今はまだ状況が掴みきれておらず、ゆえにここで何かを話すべきではないと、そのようなことを考えているのかもしれない。
※ ※ ※
> 「そうそう。出発するにあたっての準備ですが。
> 出来れば一見で魔術師とはわからない服装に
> お着替え願う事は出来ますでしょうか。」
「たしかにこの格好では少々目立つでしょうからね」
マークの提案に、ライナスは納得したようだ。
紋章もそれが身許を証するものとなるのは学院の中や関係先での話。
そういうことならば、とあっさりとブローチを外し、しまい込む。
> 「魔術を使用するのに発動体が必要なのは承知していますが、
> それももう少し目立たないものがあると。出来れば、ですが。」
「ああ杖も、ですね。
いや、そういうことであれば置いていきましょう。
私はどの道魔術を行使できませんから、まあ、これは学院の正魔術師であるという証拠のようなものです」
馬に乗っての長旅ですし、持たないほうが身軽でいいかもしれませんね、と続けた。
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■GMから
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ぷちれすなう。
禁書が持ち出された経緯についてのご説明です。
利用者管理者どちらにとっても煩雑な手続を逆用して管理者自ら手続を端折るように仕向けた、ということのようですね。
だいたいおめえそんな複雑怪奇なセキュリティガイドランとかコンプライアンス基準とか作っても結局運用すんのはめんどくさがりの生身の人間なんだよ!
いえ、なんでもないです。
手続ってだいじですよね!
>悪根さん
変装についてはOK出ました。
杖はどうせ使えないし置いてくわ、って言ってます。