依頼者はお偉いさん?

ミル(いあ) 2012.07.05 [22:11]


かたん
ころころころ
こてん

「いたっ」

早朝、トラップ技術を流用して作った目覚ましシステムで、ウチは目を開けた
さんさんと光がそそぐ、気持ちのええ朝
ぼちぼち市場の喧噪も終わり、平和で何事もない毎日が戻ってきた、と思うとった

「ジョージはーん、おはよーさーん」

をがりがりかきながら、一階の酒場へ降りていく

ん、何?
ウチに書簡とな
どらどら......

『本日正午、201号室へ出頭されたい――フェリックス・セーロフ』

「ぶっ!! げほっ、げほっ」 

朝の一服が肺であばれてむせかえる
セーロフて......あのセーロフのおっさんか?

えらいぶっきらぼうな文面が怖すぎる
201号室店......内務局監察室......
ヤバい、心当たりがありすぎる

こないだ酔っぱらって出した答案のせいか?
それとも、シーフギルドへの出入りがついにお咎めを食ろうことになるんか?

内務局監察室といえば、身内もんをシメて回っとる機関や

ウチみたいに賊と兼業なんかやっとると、学院としてもあんましいい顔はされへんやろ
せやかて、バックれるわけにもいかへんしなぁ......

観念して出頭することにしたウチは、せめて印象を良くしようとーブで体を包み、髪を整え、戸棚から引っ張り出した杖なんかも持って、魔術らしく身繕いをしてから、重い足取りで出かけた



「楽にしたまえ」

「や、無理っす」

開口一番、無理難題を言葉に出したセーロフのおっちゃんに、ウチは脊髄反射で答えた

やば、つい口が......
正直すぎる反応をするウチをどう思うたかはわからへんやったが、おっちゃんは淡々と続けた

「君のことでなにか話をしようというわけではない、モフェット魔術師。

聞けば君は日頃冒険者として活動し、魔術の実践をしているとか。
 実に結構なことだ」

「いや、その、まあ......恐縮です」

褒められとる気がせぇへんのは、場所が場所やからか?

セーロフはんが持つ漆黒の目には、なまなかにごまかしの利かん迫力がある
ええい、もっと説教なりなんなりあったほうがよっぽど楽や!

「君のその腕と経験を見込んで依頼したいことがある。

「へ?」

予想外の言葉に、またしても反射的に答えてもうた
せやかて、んな場所でこんな口調で、まさか依頼なんて思わへんもん

「我々の仕事は承知しているね?
 学院とすべての魔術師の名誉のために、我々は活動している。
 魔術師によって為された非違は魔術師によって糺されるべきなのだ」

「うーん、まあ、そうなんか、なぁ?......ああいや、その通りです、導師!」

ウチかて魔術師のはしくれ、基本的には同意や
せやかて、魔術師がやらかした失態やら、古代の魔術師が残した迷惑なんかを解決するのんが、冒険者でもある

もちろん、ウチかてそういう団体の意志」に属しとるって自覚もあるし、魔術師団体としてのスタンスもわかる
ありていに言ってしまえば、身内の恥はさらしたくない、てとこやんなぁ

「君も知っての通り、古代王国期の滅亡とともに失われた魔術の中には、甚だ危険なものが数多く含まれている。

 我々が制御しえないような魔力が当たり前のように用いられ、現代においては到底許されないような研究も頻繁に行われていた――我々は、かような魔術が心無い者の手に渡ることをよしとしない」

「そうおすなぁ、ウチもずいぶんと怖い思いしたこともありますんで、そのへんの危険はわかります
 それを悪用した奴と対決したこともあるし」

ああ、過去の危機体験は背筋が凍る

「本題に入ろう。
 学院に所属する魔術師が、禁書を持ち出した。
 君は彼を追い、禁書を奪還してもらいたい。
 追跡と奪還にあたっては、その魔術師の生死を問わない。
 とはいえ一人では危険もあろうから、口の堅い冒険者を同行させるよう。
 報酬は諸経費を別として全体で5000ガメル。
 また、禁書の管理のため、整理2課の担当員がひとり同行する。
 詳しくは彼から説明を受けるように。
 細部については君に一任する」

ふむ、禁書、ねぇ
持ち出しをするなんて、馬鹿な真似するもんもおるんやなぁ

おっちゃんに続いて言葉を継いだのは、やせっこけた魔術師やった

「ライナス・デューイです。
 どうかよろしくお願いします」

「あ、ミル・モフェットですー」

ウチがターゲットではなく、しかも5000という報酬提示でようやっといつもの調子に戻ったウチは、表情を変えて握手した
それは、セーロフのおっちゃんの鉄面皮に比べて、はるかに柔らかいしゃべり方のせいかも知れへん
よかった、同行者はまともっぽい

ふむ、見たとこ典型的な魔術師か
紋章か、んやろう?
あ、噂に聞いたことある
整理2課のやつや
禁書専門のとこ

 「場所を変えましょう、モフェットさん。
   馴染みの冒険者の店があれば、そこで、というのはいかがです」

「ああ、ええですよ」

頷いて、セーロフのおっちゃんに対して、ぴっ、と指を額に当てた

「や、んじゃを仲間を見繕って請け負います
 なるたけ、口の堅い仲間を、ですね」

そんなことを告げると、おっちゃんはまた口を開いた

「ああ、モフェット魔術師」

ええい、まだなんかあるんか?

「学院は君の忠誠と能力に期待している。
 くれぐれも、よろしく頼むよ」

「うぐ......あ、ああそりゃもう!
 ウチの生き甲斐は学院に捧げとりますさかいはははは」

きっついなぁ
このプレッシャーのかけかた、やっぱこんな嫌われ部門におると、そういう口調になるもんなんか

「えー、こほん
 問題ありません、セーロフ導師、完璧かつ完全に、解決してみせますよって」

自らハードル上げること言ったが仕方ない
ただでさえ素行不良なウチのことや
今度こそ別件で挙げられるかもしれへん
実のところ、ウチの忠誠というのは3割学院、3割シーフギルド、4割が自分自身という案配
ええとこ見せとかんと


「息が詰まりますね」

「ああいう場所は苦手です」

「ええまったく!」

話が解る依頼人さんや
酒でもおごりたい

「冒険者の店で人を集めてから説明したほうがいいですか。
それとも、まずはあなたに一通り説明しましょうか。」

せやなぁ
依頼の性格上、秘匿せんにゃならん情報もあるやろし
ただ、ライナスはセーロフのおっちゃんよか融通も利きそうや

「んー、んじゃ、魔術師以外に持ち出しがヤバい情報があればあらかじめ
 そうでなければ、早速仲間を集めましょうや
 酒はいけるクチですか?
 ウチのねぐらにしとる宿がありますんで、そっちで詰めましょう」

ウチはミノ邸に足を向けつつ、道中で話を聞くことにした

「あ、セーロフさんはチのことなんか言うとりました?」



「ジョージはーん、お茶と酒......ええい、お茶もいっちょ!」

ミノ邸についてョージはんに声をかけ、冒険の密談がしたいと申し出てくれはったので、ライナスはんと共に入室

「ここなら、秘密は守れますよ」

ウチは先刻ジョージはんに出してもろたお茶入れとグラスを4つほど持ち込んだ

「まぁ、落ち着きましょ」

しばらくして入ってきたのは、おお、セクトやんか
他にもすでに3人おる
ジョージのおっちゃんか
なら、口は堅いな

「ひさしぶりやなぁ」

残念ながら酒の入ってないグラスを全員の手元に滑らせる

「わたしはライナス・デューイ、賢者の学院の禁書を扱う部署に所属する者です。
 皆さん、どうかよろしく」

「マイリー神官のセクトールです。」

ウチもセクトにく挨拶を済ませ、話の続きを聞く

を広げる。どうやら街道の地図のようだ

ざっくりと依頼の内容が整理されてる
ジョージのおっちゃんの手配か?

「学院所属の魔術師がひとり、禁書を持ち出しました。
皆さんにお願いしたいのは、その禁書の奪還です。
持ち出した魔術師の名はレオニード・グラーニン。
第3階梯の魔術師で、占星術と儀式魔術を研究する賢者でもありました」

彼は昨日禁書を持ち出したあと、オラン市の北門から市外へ出たようです。
今日の昼前までに判明したところでは、そのまま蛇の街道を北上したらしい、とのことで――」

ふむふむ、と犯人像を想像する
第三階級......そこそこ重要人物やん

地図を広げてみると、いくつかの街道がある


側道にあたる、プレヴァール街道です。

 蛇の街道の途中、シュトレクという宿場町から東側に分かれ、グラナートで合流しています。
 グラナートへの所要日数は本街道・側道とも大差ありません――歩いて10日強、といったところです。
 ただ歩いては追いつくにも苦労があろうと思われますので、馬を使えるよう、学院に手配をして貰いました。
馬であればおおよそ1週間、といったところでしょう」

「結果として本街道側でグラーニンと禁書が押さえられた場合、報酬は半額支払う、とのことです」

「禁書って言うくらいなんだから、そう安々と閲覧できるものじゃないのか?」

「禁書についてですが、区分としてはそう厳重に秘されているものではなく――」

へ? セーロフのおっちゃんの口ぶりやと、えらいこと大事っぽかったが

「魔神召喚の魔術書なのですが、内容としてはさほど危険でも目新しくもないものです。

それなりの規模の魔術儀式が必要で、これは単独で執り行えるようなものではありません。
また、魔術書自体が儀式の触媒として必要なのです」

うは、そら禁書にもなるなぁ
セクトと顔を見合わせる

「それに、」

グラーニンは儀式魔術の研究者でもありました。
なにか見込みがあってのことである可能性もなしと断言できるものではありません」

敵は魔術師か
四人がかりくらい欲しいなあ

「報酬は4人で5000。

ほか、移動や宿泊に要する経費は学院持ち、という条件です」

お引き受けいただけますか?」

その言葉に、セクトが頷いた
ええなぁ、職業自由万歳

「その依頼、引き受けましょう。だがその前に幾つか聞きたいことがあります。まず―――

一つ目は、ライナスのここ最近の状況です。例えば愛想悪くなったとか、新調した杖を持っていたとか
2つ目はその禁書から何が呼び出されるか?
3つ目はもしグラーニンに使い魔がいれば、その特徴を教えてくれないか?」


○PLより

他の冒険者に知られたくない情報が、ライナス(およびセーロフ)になければ、早速冒険者集めに
ライナスさんの方から秘匿情報があれば、まずそれをミノ邸への道中で聞き出します

セージ技能として、以下のロールを

1.セーロフの評判

2.ライナスの表倍

3.禁書持ち出しに関するうわさ話


1.2d6 Dice:2D6[1,5]=6+5=11

2.2d6 Dice:2D6[3,5]=8+5=13

3.d6 Dice:2D6[2,3]=5+5=10


セーロフには大見得を切ります
なにぶん普段の生活態度が悪いので、目をつけられてるかも、とPCは戦々恐々としています

それでは皆様、こちらも何かとお世話になると思いますが、よろしくお願いします!