後始末
GM(Lain) 2012.06.13 [00:46]
マークの放った矢は呪術師を捉えられなかった。
半拍遅れて、かつんと立木に当たる音が響く。
呪術師の詠唱が終わりに近づいたそのとき。
二度目の【眠りの雲】の呪文が、先に完成した。
ふたたび現れ、一瞬で消え去るほの白い霧。
魔法の眠りに足を掴まれた呪術師は、そのまま眠りの泥沼へ引き込まれた。
慎重に近づいたバルカが、その頭を一撃する。
呪術師は低い呻き声を上げ、ひとつ痙攣して動かなくなった。
死んでこそいないが、当分起きてはこられまい。
※ ※ ※
あとに残るものは、単純で手間のかかる、愉快とは到底言えない作業だが、危険なものではない。
そこここに散らばる妖魔どもを昏倒させ、あるいは動けぬようにして止めを刺す。
ほとんどの妖魔が、声すら上げずに死んでいった。
ぎりぎりで目を覚ますものもないではないが、圧倒的に不利な状況から逃げ出せよう筈もない。
冒険者たちは、傷ひとつ負うことはないだろう。
死骸は浅く土を掘って埋めるだけにせよ、処理には相応の時間がかかる。
いまこの場で始末をつけるのであれば、村へ戻るのは夜も更けた頃になるだろう。
といって放置もできないとなれば、残る方法は川に流すくらいのことだろうか。
いずれにしても、当面の敵は片付いたということに変わりはない。
ひととおりの始末をつけて、冒険者たちは村へ、カルナへ戻ることになるだろう。
※ ※ ※
夜ではあるが、村はかがり火があちこちに焚かれて明るく照らされている。
見張りにはジゼルと狩人連が立っており、街道、そしてテナ川上流の森の方へ眼を光らせている。
最初に冒険者たちを認めたのはジゼルだった。
破顔し、大きく手を振る。
村の門を開け、冒険者たちの到着を待ったことは――持ち場を離れて迎えに出なかったことは、彼女の心情を考えれば上出来と言ってよいかもしれない。
日暮れまで戻ってこなかった冒険者たちが無事に戻ってきたことに、彼女は深く安堵した様子だ。
「――お帰りなさい」
どう声をかけるべきか逡巡して、出てきた言葉がそれだった。
ご無事で、と続けた台詞が途中で止まる。
服についた返り血が原因だった。
ひとしきり慌て、事情を聞かされ、顔を赤くして俯く。
「でも、ご無事で、よかった」
ようやく顔を上げたその表情は、橋を渡った折に見せたものと同じ、素の笑顔だった。
※ ※ ※
村へ連行された妖魔の呪術師は、到着後しばらく経ってからようやく目を覚ました。
ルーイがなにかを訊こうとすれば、不貞腐れたように笑い、血の混じった唾を吐きかける。
少なくとも、素直に何かを喋ろうという気はなさそうだ。
口を割らせるには手間も時間もかかることだろう。
冒険者たちが手間と時間を厭わなければ、それは呪術師にとっての不幸以外のなにかではないのだが。
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■GMから
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ゴブシャさんは素で瀕死であります。
というわけで、前もっての宣言のとおり、TKOと相成りました!
>みなさま
ひとまず戦後処理として、ゴブシャ以外は殺るの確定、という雰囲気でしたのでさくっとやりました。
本格的な埋葬は時間的にまず無理ですので、いい加減に埋めるか川に流すか放置するか、といったところです。
どれを選んでいただいてもゲーム的にはほぼ影響がありませんのでお好きに処理してくださいませ。
ゴブシャについては、村へ連行する扱いとしました。
連行後意識を取り戻しますが、素直に吐く気はなさそうです。
GMとして確認したいのは、
・ある程度やってみて吐きそうになければ殺す
・手段を選ばず徹底して聞き出す
のどちらの方向でいくかということです。
後者であれば相応にえげつないことになるでしょう。
前者であれば情報を得られないまま始末することになる可能性が残ります。
なお、依頼は現時点までで得られた情報で達成できている、と考えていただいて構いません。
要は、PCとして妖魔にどのような態度で臨むかの確認、といったところですね。
始末のつけかたが決まったら先に進めることにいたします。
※追記:人目や世間体については特に気にしていただかなくて結構です。
人目については、村長宅の納屋あたりを使えることにしましょう。
世間体的にも、ゴブリンは基本的に人類の敵でありますので、痛めつけることそれ自体を楽しむとかそういうレベルまでいかないとなかなか白眼視してもらえません。