妖魔の棲処
GM(Lain) 2012.05.23 [18:15]
> 「3日後の朝までに一度も戻らなかったら、エリクセンさんに伝えて。
> オレたちがヘマしたって」
クラエスは生真面目な顔で頷いた。
当然の――そう、当然の措置だ。
敵が、妖魔がいる場所での偵察。
無論失敗することもある。
逃げ帰れればまだしも、最悪の場合は。
それを想定しないわけにはいかない。
だからこそ、少しでも失敗の目を減らすために、冒険者を雇ったのだ。
であれば、これはいわば前提の話である。
だが――。
「いっ・・・・・・」
ジゼルは。
「嫌、です」
拒絶した。
「嫌です、そんな。
戻ってこられないような失敗なんて。嫌」
わかっている。
理解はしている。
だが納得できない――したくない。
そんな表情だった。
「そんな報告なんて、」
一度は引っ込めた手で、ルーイの両手を握った――というよりは、掴んだ。
「嫌です。
約束してください、戻ってくるって」
そのままの姿勢でルーイの目を正面から見据え、そう口にする。
クラエスが、礼儀正しく視線を逸らした。
※ ※ ※
「彼女ね、優秀なんですけど、優しすぎるって言うかなんていうか」
ひととおりのことが収まったあとで、クラエスはルーイに話しかけた。
「あれでわかってはいますし、いざとなれば腹を括れます。
そういう奴です。でも、」
そういうふうに割り切れる自分をあんまり好いてないみたいで。
複雑ですね。
兄が年頃の妹について語るような口調だった。
「まあ、本当になにかあったら俺が蹴っ飛ばしてでもなんとかさせますから安心してください」
人の悪そうな笑顔で言い、
「でも、俺からもお願いしますよ。
無事戻ってきてください」
最後は生真面目な表情に戻って、そう続けた。
※ ※ ※
たどり着いた洞窟の周辺。
3人はそれぞれに、妖魔どもの痕跡を見出すべく調査を始めた。
洞窟の手前やその付近、地面を仔細に調べれば、そこにはいくつもの足跡が残されていることがわかる。
加えて、野営の跡。
火を焚いた跡、鳥や魚、獣の骨、木の葉と草で作られた寝床らしきもの。
寝床の数は2つ。
荒れ具合から察するに、最後に使われた時期は数日前といったところだろう。
1週間は経っていない筈だ。
焚火の跡には、どうやら斧で切り、割って使ったものらしい薪が炭になって残っている。
切り口がささくれているところを見るに、さほど切れ味のよい得物ではあるまい。
大雑把に砂をかけて火を始末しているあたりはいかにも妖魔のやりようだ。
まだわずかに肉の残った骨は悪臭を発し、虫がたかっている。
妖魔が食べる量を考えれば、2匹が一日ここで過ごしたとするには多すぎる。
足跡をさらに調べれば、いくつかのことがわかるだろう。
まず、足跡は妖魔、ゴブリンのものであろうと推測できる。
数は少々複雑だ。
北西へ往復している足跡が2つ。
北東から南東にかけて、5箇所へ、計10の足跡が往復している。
5箇所へ進む5組の足跡はおおよそどれも同じ2体のもののように見えるが、完全に同定することはできない――日が経ってしまっていることもあり、曖昧な部分が大きいためだ。
もとより、種が同じであれば当然のように足跡は似てくる。
人間が2匹のゴブリンを見分けることは、2人の人間を見分けることよりもよほど難しい。
足跡についても同じことが言える――よほどの条件に恵まれなければ、個体の識別は困難なものだ。
今や住むもののない洞窟とその周囲の検分をひとまず終えて腰を上げれば、太陽がだいぶ高く上っていることに今更ながら気付くことだろう。
時刻は日の出からおよそ1刻、といったところだ。
調査に使える時間は無限ではない――そろそろ、次に何をすべきか決めるべき頃合だろう。
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■GMから
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女子力を上げる作業。
いや、メインは洞窟近辺の情報ですよ!ほんとですよ!(力説
>みなさま
洞窟近辺から得られた情報については上述の通りです。
時間の管理が面倒なので「移動+基本的な調査」で1刻という流れ。
北西への足跡はおおむね、A地点の洞窟の方向と一致します。
足跡から追加情報を得つつA地点へ移動するのであれば警戒移動(時間倍付け)、ざっくり跡だけ追いつつ移動であれば通常移動扱いです。
ほか、北東から南東にかけての足跡を追ったり、追加で情報を得ようとするのであればさらに時間が必要でしょう。
時間をかけるのであればだいたい半刻単位、ということになります。
――というあたりで次の行動方針をどうぞ!
・移動する場合は移動先と移動方法
・移動せず、情報をさらに収集する場合は何を目的にどのあたりを重点として調べるか
このへんを宣言してくださいませー。