ローナムにて
GM(Lain) 2012.05.13 [19:07]
四半刻ほどの後、一行は邸内の一室に集まった。
三人とエリクセンのほか、男女ひとりずつ、計ふたりの従士が呼ばれている。
「状況調査を行って貰う場所についてだが」
前置きなく、単刀直入に本題を切り出す。
「まずはこれを」
地図を二枚、テーブルの上に広げた。
一枚は先日、セレンソン邸で見たものだ。
「こちらはすでに見ておられよう。
このカルナ近辺からディマスの先あたり、ここが目立って目撃の報の多い場所だ。
貴公らの来着を待ってのち、とも考えたが――」
ディマスにはつい3日前、斥候を出した、と告げる。
「貴公ら冒険者ほど山中での行動に慣れているわけではないが、今は何よりも早く情報が欲しい。
村への襲撃は今のところ無いが、いつ襲ってくるとも知れぬ」
そのようなわけで、と言いながら、彼はもう一枚の地図を示した。
「貴公らに担当して貰うのはここ、ということになる」
中心にカルナと書かれた印が打ってある。
「目撃の報告には特徴がある。
ほぼすべてが街道の北西側、言い換えればエストンの主稜に近い側でのことだ。
こちら側に何かある、と考えてよかろう」
「ほか、妖魔どもが塒にしそうな場所、つまりは洞窟だが、そういったものについての情報も得ている。
近辺、といってもだいぶ範囲が広いが、カルナ近辺には6箇所ばかりあるようだ。
大きさその他、詳細については解らない――どれが当たりか、というのはやはり調べてみなければ解らぬようだ」
まあそもそもディマスの側に当たりがある可能性もあるのだが、とエリクセンは笑う。
「細々とした部分について私が口を挟む道理ではないが、まずはカルナを拠点に動かれるがよかろうと思う。
詳しい情報が必要であれば、カルナで協力を得られるよう手配する。
カルナまではここから徒歩で6日、ディマスまでは更に1日半。
聞けば魔術師殿は乗騎があるとか。馬を使えば今すこし早く着くことはできよう。
お望みとあらばのこりのお二人の分もお貸しできるが、いかがされる?」
「糧秣その他の消耗品については後ほど手に渡るようにしよう。
ああ、糧秣の秣の方は道中で手に入れられるよう、書状を用意する。
それから、」
ふたりの従士を振り返り、
「ここローナム、そしてディマスとの連絡要員としてこのふたりを貴公らに同道させたい。
なにかあればディマスなりローナムなりへ走らせてほしいのだ。
男のほうはクラエス、女性はジゼル」
目顔で促すと、ふたりは一歩進み出て冒険者たちに挨拶をした。
「ふたりとも一通りの訓練は受けているゆえ、己の身を守ることはできよう。
馬もそれなりに乗りこなす。クラエスは妖魔と矛を交えた経験もある。
急報や伝令の要があれば、遠慮なく使って貰いたい」
ではお前たちは出る支度を整えるよう、とエリクセンは従士ふたりに命じ、ふたりは一礼して退出した。
扉が閉まるのを見送り、やや声を落としてエリクセンが続ける。
「彼らの前ではあのように申し上げたが、いまだ彼らのみで妖魔どもの矢面に立たせるには些か心もとない。
戦い慣れた貴公らと異なり、臨機に動くほどの経験もまだ無いのだ――申し訳ないが、その点はお含み置きいただけないだろうか」
※ ※ ※
翌朝、空はよく晴れている。
一晩柔らかいベッドで休んでここまでの旅の疲れを癒した一行は、ここからさらに険しい山道へと向かうことになるだろう。
昨日慌ただしく紹介されたふたりは今、軽騎兵の軍装に身を包み、弓矢と槍を携えている。
「ジゼルです。
よろしくお願いいたします」
兜を被るときに邪魔にならぬようにとの配慮であろう、亜麻色の髪をうなじまでの長さで切り揃えた女性の従士が一礼して挨拶した。
成人したばかりであるのか、まだ若い。ルーイと同年輩、といったところか。
身体つきはさすがに引き締まっているものの、ともすれば幼くも見える顔立ちだ。
濃褐色の瞳に、小さからぬ緊張の色がある。
「クラエスです。
どうかよろしくお願いします」
いまひとり、やや年嵩の――といっても二・三歳といったところだ――従士も同じように一礼する。
鍛えれば鍛えただけ伸びる年頃ゆえか、こちらも鍛えられた身体つきだ。
煉瓦色の髪に群青の瞳。緊張よりも、どこか懐かしげに冒険者たちを見やっている。
「王都からと伺いました――マルドルさんやガラフさん達はお元気ですか」
聞けば、以前おなじ戦場で戦ったことがあるのだという。
「戻られた折には、あのときの皆は元気でやっている、とお伝えください。
ボリスと俺はあれがきっかけで従士になりました、と」
市門を出た先、ゆるゆると続く上り坂の街道を、初夏の朝の太陽が照らしている。
この先に妖魔どもが出るとは、どうにも想像しがたいほどの平和な情景だった。
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■GMから
>みなさま
お待たせいたしました進行でありまするー。
女子分が足りないとのご指摘を受けまして新兵(女子)を同行させることと相成りました。
やさしくしてあげてね!
・同行させる従士については基本的に戦闘させないでください
・できればカルナに置いといて必要なときに伝令に使ってください
というのがエリクセンからのお願いです。
従士ふたりもそのように言われていますが、その場で説得して戦列に加わらせることは不可能ではないでしょう。
さて、
・冒険者が担当する村近辺の地図
・と、洞窟やなんかのポイント
を新たに提示いたします。
新たに提示した地図のA―Fがそれっぽい洞窟、とのことです。
ほか、
・食糧その他の受け渡し
・まぐさの手配
・カルナで協力を得るための口添え
などなどはすでに済んでいるものとしていただいて構いません。
なお、くどくなりそうなのでエリクセンの口から説明させるのは省きましたが、
・川についてはこれを利用した移動は非常に困難
です。
山脈内部を流れる急峻な渓谷だから、というのがその理由です。
切り出した木材を筏に組んで流したりはしますが、人間でも専門家が必要なレベルですね。
妖魔レベルでは考慮に入れる必要がないと考えていただいて構いません。
エリクセンもその前提で話をしています。
その他、何か質問や買い物などがありましたらここでどうぞ。
次の進行でカルナまで進める予定でおります。
なお、ローナムを出発したあとは装備品などの買い足しは困難、武器等は補充不可能になりますのでご注意くださいませー。