ローナムへ
GM(Lain) 2012.05.13 [00:47]
> 「...何にせよ、まずはローナムですね。」
> 「それじゃ、早速ローナムへ。に私も一票です。
では、と頷きつつ、フリクセルは使用人に目配せをする。
差し出されたトレイの上には銀貨の入った小袋と、そして一通の書状。
『この書状を持つ者のローナムまでの旅程について、宿泊および酒食等、必要な便宜を図るよう。所要の費用はアンセルム子爵家宛請求されたい』
書状には、署名とともにそのように記してある。
小袋は前金、というところだろう――中には報酬の2割に相当する額、300ガメルが入っている。
「お持ちください。
ああ、ローナムへは、今日から半月のうちに冒険者が着く予定である旨を伝えてありますので、どうかそのように」
蛇の街道の半ほどにあるローナムへは、オランから2週間ほどの道程だ。
今すぐとは言わぬまでも、明日には発たねば間に合わなくなるだろう。
※ ※ ※
バルカの細々とした問いにも、フリクセルは特に気を悪くする様子はない。
丁寧な口調で質問に答えてゆく。
ローナムで待つ騎士の名――エリクセン、というそうだ――を伝え、エストンの山中、街道を外れた場所では徒歩での移動が最も効率がよいであろうと答え、矢や保存食についてはエリクセンに手配を命じてある、と請け合った。
「近隣の領主への気兼ねはありません」
気兼ねせねばならないほど、人がおりませんのでね。
最後にそう付け加える。
点々と小村がある程度の山の中であるゆえ、面の支配というよりは、その点と、点同士を結ぶ線を押さえている、ということなのだろう。
※ ※ ※
旅支度を整え、必要と思われるものを買い込み、あるいは補修し、というようなことをしていれば、午後の半日はあっという間に過ぎてしまうことだろう。
思いのほか慌しい時間の合間を縫って、バルカは知己の騎士に会うことができた。
名目はエストン方面の情勢について、ちょっとした情報交換、といったところだ。
期待どおりと言うべきかどうか、彼、ヴィーゲルトは、それなりの情報を得ていたようだ。
エストンの山中で妖魔の活動が近年になく活発化していること。
アンセルム子爵ほか、近辺を領する地方貴族たちが対応に苦慮していること。
王国としてもそれらの状況、対応を注視していること。
プリシスが王国の盾であるとすれば、蛇の街道は盾を支える王国の腕、その血管だ。
ヴィーゲルトはそう言った。
夜も更けた頃、再会を約してふたりは別れた。
お互いの職業柄、これが最後であるかもしれないとは思っていても口には出さない。
騎士と冒険者の友誼とは、そういったものである。
※ ※ ※
森は雨のほうが美しく見える、と言ったのは誰だったか。
ローナムへの行程、その前半はしばしば雨が降った。
とはいえ、足止めされるほどの雨ではない。
雨具代わりにマントでも羽織ってしまえば、さほど気にする必要もない。
新緑の森を抜け、つづら折の山道を歩き、予定通り2週間の旅を終え、一行はローナムに到着する。
代官の邸宅で三人を迎えた騎士は、エリクセンと名乗った。
「遠いところをよく参られた」
旅の労をねぎらい、一行を見回して、マークの顔に目を留めた。
「先日随分と助けられた貴公に、また助力を頼めるとはな」
厳つい顔をほころばせる。
「あれから一月経つか経たぬかだ、王都へ戻ってすぐまた依頼を請けられたか」
いっそ住むならば歓迎しよう、と言って笑った。
「ともあれ皆、ひとまず荷を下ろして一息入れてこられては如何か。
色々と質問もあろうが、旅装のままで立ち話、というようなものでもあるまい」
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■GMから
書いてたら長くなったのでひとまずここまでで!
実質進んでない気もしますが気のせいです気のせい。
のこりは日曜夜に投下しますですー。